パンツァー『パルジファル』
「あなたがシグルド司令か? 噂は部下たちから聞いている」
「こちらこそ、アウレーリア殿。お会いできて光栄だ」
二人は互いにほほえむと、握手をした。
二人はすぐに真剣な顔になった。
「私がいないあいだ、部下たちが世話になったようだ。重ねて、礼を言う」
「私としても理由があってのことだ。ラ・ステッラ・ドーロの戦力はすばらしい」
二人はこの後会談に入った。
シグルドはこれから帝都バビュロンを攻撃するつもりだった。
そのためには、アウレーリアたちの協力が必要だ。
「我々はこれからついに、帝都バビュロンを攻撃しようと思っている。そこで、アウレーリア殿たちにも協力を願いたいのだ」
「それ相応の見返りが必要だ」
「もちろん、帝国を倒した後で、それはかなえられるだろう」
「ニュンフィアの安堵……それが条件だ」
「ニュンフィアはアルカディア共和国には入らないと?」
「そうではない。アルカディア共和国の州として、ニュンフィアを認めてもらいたい」
「それなら十分飲める話だな」
二人はその後、冷徹に細部にまで交渉した。
それは文書にまとめられて、双方二通ずつ持つことになった。
アウレーリアは満足したようだった。
「それにしても、シグルド殿はよく帝国の現状を知られているな?」
アウレーリアが問う。
アウレーリアだけでなくとも当然の疑問である。
「それは帝国には情報提供者がいるからだ」
「ほう……」
アウレーリアの目が鷲のように光った。
「これは機密なので正体は明かせないが、貴重な情報源となっている」
「その人物……信用できるのか?」
「それは怪しいところだ。実際、その人物は帝国の中枢にいる」
「それは興味深い……」
「通称は『仮面の導師卿』と呼ばれている」
「仮面の導師?」
「名前はあった方がいいだろう? 本名は不明だ」
「そのような人物が……」
「ん?」
その時、ブリッジのディスプレイが光った。
「シグルド司令! 情報提供者からの連絡です」
「わかった。オペレーター、つないでくれ」
「はい!」
シグルドとアウレーリアはディスプレイを注視した。
ディスプレイに仮面をつけた、帝国の軍服を着た人物が映し出される。
「久しいな、仮面の導師卿?」
「あいさつなど無用だ。今、帝国は追いつめられている」
「それは……」
「ふふふ、レジスタンスもやるものだな。帝国ではコンスタンティウス・フォン・ベルンシュタイン大統領自らが出撃するつもりだ」
「大統領が戦場に? これは帝国を潰す最高の機会だな」
「だが、気を付けるといい」
「何かあるのか?」
「『ティターネン』だ」
「それは確か大統領の親衛部隊だったな?」
「そうだ。大統領は追いつめられたとは思っていない。あの男はレジスタンスを迎え撃つ態勢を作り上げている」
「望むところだ。こちらには追い風が吹いている。このまま帝都を落とす」
「ふふふ、それを期待している。私としては今の大統領が消えてもらえばそれでいいのでね」
「君の目的は何だ? 何が欲しいんだ?」
「ちっちっち。それは秘密だよ。ただ、こうして話すのも、もう最後となるだろう」
「君と敵対することはあるのかな?」
「フッ、そうならないように神に祈っていろ。それではさらばだ」
「情報の提供に感謝する」
するとディスプレイの映像が消えた。
「今の情報……確かなのか?」
「ああ、今まで彼の情報はいつも適切だった。嘘はついていない」
「彼は我々を利用しているのではないか?」
「それは事実だ。だが、それはお互い様さ」
「そうか。ならもう言うまい。私は『アンジェラ』に戻る。それでは」
「結構……それでは」
そう言うとアウレーリアはブリッジを出て行った。
俺は研究室を訪れた。
俺はアスカから呼ばれたのだ。
楽しみだった。なぜなら、新型のパンツァーが遂に完成したからだ。
「アスカ! 来たぞ!」
「うふふ、テンマ、うれしそうね?」
「それはそうさ! ようやく、俺専用の新型パンツァーを見れるんだからな! で、それはどこにある?」
「こっちよ」
アスカが研究室の奥に俺を連れていく。
そこには青い輝きを発する甲冑があった。
「これが……」
新型のパンツァーはハンガーにかけられていた。
肩が青い。
上半身は青で、下半身が白というカラーリングだ。
それに白い翼がついている。
それに武器もあった。
エーテルサーベル、エーテルブレード、エーテルライフル、エーテルバスターライフルだ。
やはり俺の目をエーテルブレードが引いた。
「これは片刃なのか?」
「そうよ。テンマの今までの戦いから片刃の方が向いていると判断したの。エーテルソードより、威力が上よ」
「すごい……よく、これを作ってくれたな! ありがとう!」
「だって、テンマのためだもの。当然じゃない?」
「やあ、テンマ君。新型パンツァーを見に来たのかな?」
「リョウタロウ博士! お久しぶりです!」
「ああ、久しぶり。このパンツァーはね、『パルジファル(Parsival)』というんだよ」
「パンツァー『パルジファル』?」
「そうだよ。このパンツァーは君の思考や能力、癖などすべてを把握して作られている。まさに、君にフィットした機体さ」
「感無量です! 俺がこれを装備したら、敵をめちゃくちゃにしてやりますよ! 博士の腕を証明してみせます!」
「はっはっはっはっは! そうだね! この機体がどれだけの性能を発揮できるか、それが楽しみだ。ああ、それと」
「それと?」
「これは先見者としての助言だ。悔いは残らないようにね? 言うべきことは伝えたほうがいい。テンマ君だっていつ死んでもおかしくないんだからね? それでは」
俺はリョウタロウ博士の言葉を思い知った。
わかっている。俺には言わねばならないことがある。
ずっと秘めていた、俺の想い。それをアスカに伝えるんだ。
俺はずっと怖かった。
アスカに拒絶されるのが、怖かったのだ。
だが、今がそれを乗り越える時だ。
「アスカ……」
「テンマ?」
「俺はアスカを愛している」
「!? テンマ……」
「それで、答えは……」
「んもう! テンマの意気地なし! ええ! 私も、テンマを愛しているわ」
「アスカ!」
俺はアスカを抱きしめた。
そのままキスをする。
アスカの唇は柔らかかった。
「ねえ、テンマ?」
「何だい?」
「私はシャワーを浴びてくるから、もっと愛して」
「ああ」
こうして、俺とアスカは恋人同士になった。




