パンツァー『シレーナ』
レジスタンスとステッラ・ドーロ連合軍はマクデブルク捕虜収容所を攻撃した。
施設に警報が鳴り響く。
「いったい、どうした!?」
エレン・アルトドルファー司令が司令部にやって来た。
事態はひっ迫している。
「敵襲です! レジスタンス『エスペラント』かと!?」
部下が悲鳴のような報告をした。
まったく、いくら敵襲が珍しいとは言っても、ここまで臆病とは……。
アルトドルファー司令はあきれた。
「落ち着け! 敵の狙いはわかっている! 敵はアウレーリア・コルネーリを救出しに来たのだ! パンツァー兵を出せ!」
アルトドルファー司令は席に着く。
まずは部隊の混乱を鎮めるのが先だ。
いくら、敵襲と無縁で過ごしたからといって、ここまで狼狽するとは……。
これは今後兵士を叩きなおす必要がありそうだ。
だが、今は目の前の事態に注意する必要がある。
「敵の母艦をはっきり見せろ!」
「はっ!」
ディスプレイが映像を映す。
そこには二隻の戦艦があった。
二隻とも並んで、浮遊している。
「戦艦の確認を急げ!」
「はっ! 照合します!」
部下がコンソールを操作する。
結果はすぐ出た。
「照合終わりました。敵戦艦はレジスタンス母艦『ラ・リベラッツィオーネ』とラ・ステッラ・ドーロの母艦『アンジェラ』です!」
「やはり、レジスタンスとラ・ステッラ・ドーロの残党か。連合して攻めてきたか。アウレーリアを隔離しろ! 敵の狙いはわかっている! アウレーリアの奪還だ! アウレーリアを敵に渡すな!」
「あわただしいな」
シグルドがブリッジで席についていた。
ブリッジにはコンノ大佐がいて母艦の指揮を執っていた。
もちろん総指揮はシグルドが執るが、戦艦の運用はコンノ大佐に一任されていた。
「テンマ、出撃したいか?」
『ええ、もちろんですよ!』
テンマは通信で答えた。
テンマは今カタパルトにいる。
いつでも出撃は可能だ。
「今回はラ・ステッラ・ドーロの兵士たちに譲ろうと考えている」
『ええ!?』
「おまえはアウレーリアの情報を見つけ次第、出撃させる。それまで待機していろ」
『はあい。わかりましたよー』
「さて、ラ・ステッラ・ドーロの力……見せてもらおうか」
「パンツァー部隊、出撃!」
エーヴァが指揮を執った。
「部下たち! あたしたちに従いなさい!」
ダニエーラが命令する。
「ぼくたちの力を見せる時だよ!」
カタリーナが励ました。
三人娘は出撃の準備を整えていた。
ここにアウレーリアがいる……。それが彼女たちを高揚させる。
今までレジスタンスに協力してきたのは、すべてこの戦いのためだ。
この戦いではシグルドから、優先権が与えられている。
つまり、ラ・ステッラ・ドーロの正規軍が帝国軍守備隊と戦うのだ。
エーヴァたちはカタパルトから続々と出撃していった。
士気は高い。
エーヴァたちは敵のパンツァー部隊に突撃する。
敵は魚が逃げるように散開した。
どうやら、ここの敵は前線に送られる兵士ではないようだ。
戦い慣れていない。
「突撃! 敵を穿つ!」
エーヴァたちは一斉にパンツァー『ヴィーキング』を屠っていった。
この収容所のパンツァーは旧式だった。
エーヴァたちのパンツァーには性能でも、兵士の質でも劣る。
「一斉射撃!」
ダニエーラが固まっている敵部隊にエーテルボウによる射撃を叩き込む。
敵はまるで的だ。
ダニエーラの部隊は主に後方支援向きだ。
これでエーヴァとカタリーナがやりやすくなる。
カタリーナがエーテルジャベリンを投げつけた。
敵パンツァーは次々と落ちていく。
爆発が至る所で起こった。
「行くよ! ぼくたちがアウレーリア様を助けるんだ!」
カタリーナの部隊も敵に向かって攻撃していった。
味方が優位に戦いを進めている。
それは喜ばしい。だが、肝心のアウレーリアの情報はまだない。
俺はじらされた。
おそらく敵はアウレーリアをどこかに隠そうとするだろう。
だが、このまま行けば収容所そのものを占領できそうだ。
ラ・ステッラ・ドーロはまず、敵部隊を壊滅させるつもりか。
そうすれば後でゆっくりとアウレーリアを探せるからな。
『テンマ』
「はい?」
『アウレーリアの居場所が分かった。座標を送る。すみやかに彼女を救出せよ!」
「ああ! 行ってくるぜ!」
テンマはカタパルトから発進した。
空中に躍り出る。
テンマは贈られた座標を手掛かりに、アウレーリアのもとに向かった。
「ちい……我々が押されているか……」
アルトドルファー司令は忌々しそうな顔をした。
このままでは味方が全滅してしまう。
部隊を何としてでも立ち直らせなければならない。
「私も出る。後の指揮は任せた」
「は? 司令が出るのですか?」
「仕方あるまい。私も戦力にならなければこの劣勢は覆せない。では、パンツァー『シレーナ』で出る!」
「はっ!」
俺は前を行くジープを追い越した。
中にはアウレーリアが乗っていた。
俺はジープのタイヤを狙って、エーテルライフルで撃つ。
ジープは緊急停止した。
俺は扉を力ずくで開ける。
「アウレーリア、久しぶりだな!」
「あーら、テンマ君。かっこいいじゃない。ありがとー! これを斬ってもらえる?」
アウレーリアの手には手錠がつけてあった。
「ああ、いま切る!」
俺はエーテルナイフを出して、それを切った。
「これで自由に動けるわ! 今どんな状況かしら?」
「これから、母艦に収容する。俺が抱えていくぞ?」
「あら、頼もしいわね。じゃあ、おねがーい」
「そうはさせんぞ!」
「むっ!?」
俺に向かってエーテルライフルが撃ち込まれた。
俺はアウレーリアを守るようにバリアシールドを展開する。
「アウレーリアは渡さん!」
「あんたが司令官か? 名前は?」
「私はエレン・アルトドルファーだ!」
「パンツァーか?」
「そうだ。私の個人用パンツァー『シレーナ』だ」
「それじゃあ、あんたを倒してこの収容所を制圧する!」
「フン! そううまくいくと思うな!」
アルトドルファー司令はエーテルスピアを出してきた。
パンツァー『シレーナ』は黒い翼を持つパンツァーらしい。
装甲は薄い。
おそらく機動性に最大のパフォーマンスを割り振っているのだろう。
俺はエーテルソードを抜いた。
俺とシレーナがぶつかり合う。
やはり、スピードでは相手が上だ。
パンツァー『シレーナ』から四つの砲門が出た。
「死ね!」
四つのビーム砲が火を噴く。
俺はそれを紙一重で回避する。
俺は斜めに飛行する。
この武器を前に正面から戦うほどバカではない。
俺は徐々に敵と距離を詰める。
また、ビーム砲が撃たれた。
俺は緊急上昇してそれを回避した。
そのまま落下して俺はシレーナのビーム砲を斬り落とす。
「くっ!?」
シレーナが後退した。
俺はエーテルライフルでシレーナを撃つ。
シレーナはエーテルスピアでビームを斬り落とす。
俺とシレーナが双方ダッシュした。
そのまま飛行しながら相手と交差する。
俺は一太刀を見舞った。
「がっ!? くっ……私の負けか……」
アルトドルファー司令はその場に落ちた。
戦闘不能だ。
その時、この収容所は陥落した。




