アウレーリアの居場所
俺は母艦の中にいた。
俺の前には死んだターニャが横たわっていた。
なぜだろう? いったい何を間違えた?
どうしてこうなった?
原因は何だ?
俺の頭に複数の思考が起こる。
帝国軍はパンツァー『デスポート』が倒されると、ペータースブルクから撤退していった。
一機だけヘリもあったが、あれも反転していった。
そんなことはどうでもいい。
俺にはターニャがこうなったことが信じられなかった。
「くそっ!」
俺は壁に拳を叩きつける。
夜、部屋は静かだった。
俺をのぞいて、部屋には誰もいない。
「テンマ」
扉が開いて、部屋にアスカが入ってきた。
「アスカ……」
「テンマ、もう行きましょう。ここにいても何も解決しないわ」
「それはわかっている。わかってるさ!」
「あなただって、全能ではないのよ?」
「……」
「あなたはなすべきことをした。あの時、攻撃をためらっていたら、あなたが消されていたわ」
「ああ、そうだな!」
俺は肯定した。アスカが言いたいことはわかっている。
俺があの時、デスポートを貫かなかったら、人々の犠牲はもっとすさまじいことになっていただろう。
俺は正しいことをした。
ターニャを殺さなかったら、おびただしい人々が犠牲になったはずだ。
「何か、ターニャのことで分かったことはあるか?」
「ええ、一応」
「それは?」
「この子は精神的に一種の洗脳を施されていたらしいの」
「洗脳?」
「回収されたデスポートから、精神を操る機能が発見されたわ」
「そんなことができるのか?」
「倫理的にどうかはともかく、技術的には可能よ」
「反吐が出る!」
「それが帝国のやり方ということなんでしょうね」
「帝国は人の人生を何だと思っているんだ!」
「ターニャは強化兵という兵士だったの」
「強化兵? アーグロもそう言っていたな」
「強化のためには、精神的、物理的に可能なことが為されたのね」
「具体的には?」
「ターニャの体から、薬物の使用あとが見つかったわ」
「薬物……そんなものまで……」
「人間を人間とも思わない思想よ」
「俺はどうすれば彼女を助けられただろう?」
「テンマ……もう十分よ。あなたは自分を責めている。あなたが自分を責める必要はないわ」
「……」
「あ、そう。シグルド司令が呼んでいたわ」
「シグルド司令が?」
「ええ、何か重要な話があるって」
「わかった」
俺はターニャを置いて、部屋から出た。そして司令室に向かった。
「シグルド司令、入ります」
「ああ、入ってくれ」
俺はドアから司令室に入った。
そこには三人娘がいた。
「エーヴァ、ダニエーラ、カタリーナ……どうしてここに?」
「それはこっちのセリフよ。あんたも呼ばれていたのね」
「ん。今回の話しは私たちにも関係がある」
「そうなのか?」
シグルドがうなずいた。
「ぼくたちもそれで呼ばれたんだよ」
「結論を言おう」
俺たちは息をのんだ。
「アウレーリアの居場所が分かった」
「!? それは本当か!?」
「本当なの!?」
「!? どこ?」
「ああ、マクデブルク捕虜収容所だ。そこにアウレーリアは監禁されている」
「その情報は確かかい?」
とカタリーナ。
「確かな情報だ」
「じゃあ、シグルド司令、次の攻撃目標は?」
「ああ、マクデブルク捕虜収容所だ。協約を私たちは守る」
俺は体が熱くなっていくのが分かった。
これでアウレーリアを救出できる!
俺たちの士気は上がった。
マクデブルク捕虜収容所にて。
アウレーリアには豪華な一室があてがわれていた。
まるで将官待遇だ。
アウレーリアは本を読んでいた。
アウレーリアはいろいろ本を読む。
小説もたしなむし、哲学書も読んでいる。
それに多趣味だ。
彼女の趣味は主に絵である。
実のところ、絵は幼少のころから描いてきた。
彼女は貴族の末裔の家庭に育った。
そのため、教養が重視された。
実家の方針を悪いとは思わなかったが、彼女が一番習いたかったのは戦い方だった。
絵は好きだが、それが彼女のすべてではない。
今はこの暇な時間をどう有意義に使うかだった。
彼女は囚われたことを否定的には捕えていなかった。
どんなことであれ、プラスとマイナスがある。
なら、プラスにコミットするべきだと思われるからだ。
アウレーリアは自分が厳重に監禁されていると正確に認識していた。
ここから自分の力で出ることはできないだろう。
パンツァー『グロリアーナ』も取り上げられている。
彼女は貴族の末裔だったので、ランスなど近接武器を重視する。
彼女は剣も習った。
とはいえ、いくら時間が有り余っていようと、本だけでは暇である。
「ふう……退屈ね。もう……ここにテンマ君がいればいいのに……」
その時、ドアが開いた。
ドアの向こうには兵士が二人いた。
そこから現れたのは、金髪の女軍人だ。
服から将官であることが分かる。
「あら? 司令官がこんなところに何の用?」
彼女の名前はエレン・アルトドルファー。
この収容所の司令官である。
「ずいぶん暇そうだな?」
「おかげさまで」
アウレーリアは皮肉を言った。
「レジスタンスに動きがあった」
「レジスタンス?」
「レジスタンス『エスペラント』だ」
「ああ、テンマ君が所属しているレジスタンスね? それがどうしたの?」
「そのレジスタンスがこちらに向かっている。ラ・ステッラ・ドーロの残党もいっしょだ」
「それは……」
アウレーリアは目を見開いた。
アウレーリアは直感的に理解した。
ついに、救援が来たのだ。アウレーリアの心に希望がともる。
「おまえの仲間が来るようだな」
「うふふふ、なら、今のところ良い条件で降伏した方がいいんじゃないかしら?」
「我々は降伏しない」
「そう」
「我々はおまえをレジスタンスには渡さない。ここをレジスタンスの墓場にする」
「できるかしら?」
「必ずそうなる。レジスタンスは最近いきがっているようだが、それもここまでだ」
「それはご苦労なことね」
「それを言いに来た。それでは」
アルトドルファー司令はそう言うと去っていった。
アウレーリアにはいい情報だった。
これは良き知らせだ。




