パンツァー『デスポート』
俺たちはいったんタチヤーナと別れた後、母艦に戻った。
母艦ではシグルドからの指令があった。
帝国軍に動きがあったという。
「シグルド司令! 帝国軍に動きがあったとか!」
「ああ、そのことだ。今回敵の戦力はすさまじい」
「それはどういうことですか?」
「まずは、これを見てくれ」
「これは……」
それは超巨大なパンツァーだった。あまりの大きさに俺は絶句する。
事前の情報では帝国軍の秘密兵器だという。
「このパンツァーは『デスポート』というらしい」
「デスポート?」
「このパンツァーは一機でペータースブルクを焼き払える。それほどの戦力だ。このパンツァーには護衛がついていて、簡単に攻撃できないようになっている。このパンツァーの相手を、君とクウマに頼みたい」
「わかりました」
パンツァー『デスポート』は雪原を疾駆していた。
このパンツァーにはパイロットがいた。
「ターニャ? パンツァーとのシンクロはどう?」
「うん、いい感じ!」
アナスタシーヤがターニャに尋ねる。
アナスタシーヤたちはペータースブルクへ侵攻するため、ヘリに乗っていた。
パンツァー『デスポート』は機動性重視のパンツァー『ヴィント』に守られている。
「アーグロ、そちらから、デスポートの様子はどう?」
「ああ、問題ないぜ? まったく、なんでターニャがこれを動かすんだよ? なんで、俺じゃないんだ? こんな兵器を動かせるなんて、最高なのによ」
アーグロは不満そうだ。
アナスタシーヤはそれもわかっている。
「パイロットとしての適性ではターニャの方が上だったのよ。おとなしく、命令に従いなさい」
「へーい……けっ」
やれやれ。不平不満をなだめるのも大変だ。
さて、この兵器はアナスタシーヤの最高傑作だ。
この兵器ならペータースブルクを焼き払える。
ああ、この兵器が街を焼き払えるなんて、どんなに『美しい』光景だろう!
アナスタシーヤは今から恍惚としていた。
戦場には俺と父さんが待機していた。
今回帝国軍は超巨大兵器で街を攻撃するつもりだ。
今回はいつもとは緊張感が違う。
俺たちはパンツァー『デスポート』を待っていた。
「テンマよ」
「何?」
「今回はおまえの戦闘力がもろに重要になる。それをまずは伝えておこう」
「ああ、わかっているさ。今回は数を頼れないからな」
「グラーヴォは出せん。敵のいい的になるだけだからな」
「それで、俺たちに出番が回って来たというわけかい?」
「まあ、そういうことだ。私は護衛兵の相手をする。おまえは敵『デスポート』を狙え。あれだけ大きければ、接近戦は苦手だろう。接近戦に持ち込めば勝機はある」
「ああ、そうだな。おっ、敵が見えてきたぞ?」
パンツァー『デスポート』の圧倒的な大きさが目立つ。
護衛機が何体かいるようだ。
デスポートへの接近を阻止するために配置されているのだろう。
俺と父さんは市街地を飛行した。
すかさず、敵機と交戦する。
新型パンツァー『ヴィント』と俺たちは戦う。
空中戦に入った。
パンツァー『ヴィント』はエーテルサーベルを抜いて、俺たちに攻撃してきた。
おそらく、俺たちと同じ機動性を重視している機体だろう。
「へっ! また会ったな!」
「!? おまえは!? 確かアーグロとか言ったな!」
「戦場では手加減はしないぜ?」
「おまえは帝国の軍人だったのか!」
「へへへ! いいことを教えてやるよ! あの巨大パンツァーのユニットはターニャだ!」
「何だと!?」
「ははははは! 本当は俺がユニットになりたかったんだが、適正ではじかれちまった! そういうことだ! 恨むなよ!」
「くっ!?」
あの超大型パンツァー『デスポート』のユニットがターニャというのは俺を動揺させた。
あれを阻止するためにはあれを倒さねばならない。
それはターニャを殺すということだ。
俺にそれができるのか?
「ははははは! さあ! 楽しもうぜ!」
アーグロが俺に斬りかかってくる。
俺はアーグロとぶつかる。
この男は剣術の訓練をしているようだ。
素人ではない。
これはそう簡単には行かせてくれないか。
父さんを見ると、護衛兵と交戦しているのが分かった。
なんだ? 俺は違和感を感じた。
こいつらはただの兵士ではない。
戦闘能力がかなり高いが、それが不自然だ。
「俺たちが気になるかよ?」
「何を!」
「いいぜ。教えてやるよ! 俺たちは強化兵! 戦闘のためだけに調整された戦闘兵士だ!」
「それじゃあ、ターニャも?」
「ああ、同じだぜ! あいつも強化兵なんだよ!」
「人間を、何だと思っているんだ!?」
「そんなの関係ねえよ! さあ、落ちな!」
アーグロがエーテルライフルで俺を攻撃してきた。
俺は弧を描いて、それをよける。
それから俺はエーテルを前面に集めて構えた。
俺はアーグロに突っ込む。
エーテルストライクだ。
「がっはああああ!? くそが……」
「せめてもの情けだ! 苦しまずに倒してやる!」
「っちくしょう……」
アーグロのパンツァー『ヴィント』が落下していく。
その後、爆発した。
俺はデスポートに向かいなおった。
デスポートは腹部エーテルビーム砲を発射した。
膨大なビームが市街地を駆け抜ける。
市街地は一撃で火の海とかした。
なんて威力だ!
帝国らしいと言えばそれまでだが。
俺はエーテルライフルでデスポートの腹部を撃った。
だが、巨大なバリアフィールドが発生してそれを阻む。
デスポートは両手を飛ばしてきた。
これはビットの応用か!
両手は俺を撃ち落とすべく、指からビーム攻撃をしてくる。
俺はそれを緊急で回避する。
エーテルライフルで俺は両手を撃ったが、それも回避される。
俺はエーテルナイフを両手に投げつけた。
すると両手は甲からビームソードを形成し、それを無力化した。
俺は一瞬の隙をついて、デスポートを斬りつける。
「どうだ!」
「あああああああああ!?」
ターニャの姿が露出される。
俺はターニャを説得しようとした。
「ターニャ、俺だ! テンマだ!」
「テンマ?」
「ターニャは戦う必要なんてない! 投降してくれ!」
「テンマ!」
パンツァー『デスポート』の動きが止まった。
それを不信の目でドクター・アナスタシーヤが眺めていた。
「何、あの虫は? ターニャをデスポートから外す気? そうはいかないわ!
ターニャの洗脳レベルを上げなさい!」
俺はターニャを救出できると思った。
その時、コクピット全体が赤く光った。
「何だ!?」
「あああああああああああ!?」
「ターニャ!」
「殺す! 殺す!」
パンツァー『デスポート』が再び、腹部ビーム砲を発射しようとした。
俺は迷った。
だが、事態はそんなに甘くなかった。
「くそっ!」
俺はパンツァー『デスポート』をエーテルソードで貫いた。
巨大なパンツァーはそのまま倒れていった。
俺はターニャを救えなかった。




