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ターニャ

 俺はペータースブルクの街に出ていた。

 今はアスカといっしょだ。

 アスカは白いセーターに、赤いロングスカートをはいていた。

 つまり、俺たちはデートしていたのだ。

 

「ふふふ、今日はいい天気ね」


「ああ、そうだな」


 俺たちはシグルドが仕事をかたづけるまでの間暇を出された。

 俺たちはペータースブルクの街で遊ぶことにした。

 アスカと二人きりというのは実のところ緊張する。

 ただ、アスカといると、いっしょにいて楽しいし、何より、落ち着く。

 アスカには自分を偽ることなくさらすことができる。

 

「まずはどこに行くの?」


「映画館にしよう。何かいい映画がやっていると思うんだ」


「それはいい考えね。うふふ、私はうれしい」


「アスカは良く笑うな?」


 この言葉にアスカはほおを赤らめた。

 急にもじもじする。


「だって、いつもはシャオユエがいるじゃない。二人っきりって久しぶりだから」


 ああ、もう! そんなことを言われたら俺もどぎまぎしてしまう。

 アスカは俺の腕をぎゅっと握った。

 ドキドキが止まらない。

 俺はアスカをかわいいと思っている。

 アスカは魅力的な女性だ。

 俺とアスカは無言になった。

 ただ、嫌な沈黙じゃない。

 暖かい空気がそこにはあった。

 俺たちはまだ、正式な恋人じゃない。

 俺だって男だ。

 アスカともっと近づきたいという想いもある。

 アスカは俺をどう思っているんだろうか?

 俺にはそれが不安だった。

 はっきり言って、すぐにでも告白したい。

 ただ、俺はアスカにどう思われているか、それが気になった。

 それが俺に告白をためらわせる。

 アスカから振られたら、俺は自信を失うだろう。

 それが俺は怖い。

 そんなことを思っている間(あいだ)に、映画館が見えてきた。

 俺たちは映画を観た。

 正直内容はあまり覚えていない。

 隣にいるアスカのことばかりを考えていたからだ。

 

「これからどうするの?」


「ああ、食事にしよう。パスタの店を知っているんだ」


「いいわね!」


「じゃあ、行こうか」


 俺とアスカはパスタの店に入った。

 壁の色は緑だった。店の名前は『イル・ジョルナーレ』だった。

 

「Buon giorno!」


「ブオン・ジョルノ!」


 俺はあいさつを返した。

 俺たちは空いている席に座る。

 席にはタブレットが置かれていて、それで注文するようだ。

 

「先にテンマから決めていいわよ」


「そうか? じゃあ、そうさせてもらおうかな」


 俺はタブレットを操作していく。

 

「おっ、これがいいな」


 俺はスパゲッティ・アッラ・カルボナーラを選んだ。

 それにエスプレッソ・コーヒーをつける。

 

「テンマはカルボナーラにしたの?」


「ああ、チーズがおいしそうだからな」


「じゃあ、私も同じものにするわ」


 アスカがタブレットを操作して、注文を終える。

 さて、あとは待つだけだ。

 そのあいだ、何を話そうか。


「俺の新型パンツァーはどうなんだ?」


「その話? 今、お父さんといっしょに実用段階までできたわ。ふふふ、テンマが起動したらすごく気に入ると思うな」


「おっ、それはいいねえ。一言で言うとどんなパンツァーなんだ?」


「それはね、『天使』をモデルにしているの」


「天使を?」


「ええ。デザインは気にいると思うわ」


「へえ、それは楽しみだな」


「今のエンデュミオンより、全体的に性能が上よ。テンマが起動するんだから、高性能なパンツァーになるわ」


「そうか。もう、エンデュミオンと戦えるのももうすぐ終わりか」


「帝都を攻略する前には渡せると思うの」


「わかった。楽しみにしてる」


「あら、食事が運ばれてきたわね」


「それじゃあ、いただこうか」


 俺たちはカルボナーラに口をつけた。

 とろけるような柔らかさがあった。

 これはうまい!

 

 俺たちは店を出た。

 俺たちは通りを歩いていく。


「それにしても、新型パンツァーか……くうう! 楽しみだぜ!」


「ふふふ、エンデュミオンよりもテンマに合うよう設計されているから、きっと気に入るわ」


「さて、あとは生活に必要なものでも買って帰るか」


「ふんふんふーん!」


「あで!?」


「きゃああ!?」


「テンマ!?」


 俺は路地裏から出てきた少女とぶつかった。

 少女はダンスでも踊っていたのか、正面が見えていなかったようだ。

 

「ふう……大丈夫かい?」


「?」


 少女が首をかしげる。

 少女はよく事態を呑み込めていないようだ。

 

「あ、えっと、君の名前は?」


「名前? タチヤーナ」


「タチヤーナちゃんはこんなところでどうしたんだい?」


「私は……あれ? ここどこ?」


「どうしたの? 道に迷ったの?」


 アスカがタチヤーナに話しかける。

 アスカは優しいからこの少女も心を開くだろう。


「道に迷ったってことか?」


「……うん」


「君はどこで暮らしているんだい?」


「大きなところ」


「大きなところ? うーん、それだけじゃあ、わからないな。さて、アスカ、どうする?」


「そうね。警察に連れていきましょう。警察ならこの子がどこから来たのかわかるはずよ」


「そうだな。警察に行くか。待てよ、今警察署を調べてみる」


 俺はスマホを取り出して警察署を探した。

 この町の警察署は大通りにあるらしい。


「よし、見つけた! じゃあ、行くか!」


 タチヤーナは俺とアスカの間に入った。

 ? どうしたんだろうか?


「私、あいだがいい……」


「まるで子供のようね。いいわよ。入ってごらん!」


「うん!」


 俺とアスカはあいだにタチヤーナを入れた。

 タチヤーナはうれしそうだ。


「ターニャの両親はどんな人だ?」


「ターニャ、両親はいないの」


「あ、ごめん。少し、無神経だった」


「ううん、いいの」


「ターニャちゃんはきれいな髪をしているのね?」


「そう?」


「きれいなブロンドね」


 確かにターニャはきれいな金髪をしている。

 ただ、若干無表情なんだよな。

 この子はどこか心配させる。

 その時だった。

 ジープが急に止まったのだ。


「おい、ターニャ! こんなところにいたのか!」


「?」


「俺だ! アーグロだ!」


「失礼ですが、あなたは?」


 俺は突然現れた目つきの鋭い青年に尋ねた。

 ジープを運転している。ただ服は私服だ。

 帝国軍人だろうか?


「すいませんね、うちのターニャが迷惑をかけたようで」


「いいえ、ターニャちゃんは迷惑なんかじゃありませんでしたよ?」


「おい、ターニャ、基地に戻るぞ! アナスタシーヤが待っている!」


「ターニャ……」


 ターニャはしっかりとした足取りで、ジープに乗った。

 

「俺はテンマだ」


「私はアスカよ」


「俺たちのこと、覚えていてくれよ!」


「うん! ターニャ、忘れない!」


「それじゃあ、失礼しますよ?」


 青年はジープで急いでいった。

 俺たちはそれを見送る。


「ジープに乗っていたな?」


「そうね」


「彼は軍人かな?」


「私もそう思ってた」


「ターニャは軍関係者なのか……」


「敵として合わないことを祈りましょう」


「そうだな」


 俺は心からそう思った。


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