マカイロス要塞
レジスタンス『エスペラント』はマカイロス要塞攻略のため、出撃した。
母艦は『ラ・リベラッツィオーネ』だ。
戦艦『アンジェラ』もそれに続く。
アスカたち研究者は基地に残った。
今回の作戦が成功すれば、アルカディア共和国復興の大きな一歩になる。
アスカは母艦を見つめる。
母艦にはテンマが乗っているであろう。
「彼が心配かな、アスカ?」
「お父さん……そうね、心配よ」
「やれやれ、恋とはなかなかうまくいかないものだね」
父、リョウタロウがつぶやく。
実際、テンマとアスカは愛し合っている。
だが、その想いは未だ告げられていない。
アスカはテンマが自分を愛していることを知っている。
テンマもアスカの気持ちに気づいているであろう。
互いにそれはわかっているのだ。
テンマはいつ自分の気持ちを明らかにするだろうか?
「アスカはテンマ君のことをどう思っているのかな?」
「私は……」
アスカの言葉は続かない。
アスカもこのままでいいとは思っていない。
だいたい、テンマが自分から告白してくれればこんなもやもやは抱え込まなくていいのだ。
「私は、テンマを愛しています」
短いが、確信に満ちた言葉だった。
「こういったことはなかなか女性からは言いにくいかな?」
「そうかも。できれば、テンマから告白してもらいたいわ」
「私の時はコトネから告白されたよ」
「お母さんから?」
「そう。私はひたすら、パンツァーの開発に明け暮れていた。そんな時さ、コトネから告白されたのは。驚いたよ。それまで私はコトネをただの部下だと思っていたのだから。もちろん、プロポーズは私からしたけれどもね」
「そうだったの……」
「まあ、悔いがないようにしなさい。男と女は平等だ。女性から告白してもいいんだよ?」
「それはわかっているけど……」
「何にしても、テンマ君も兵士だ。いくら強くとも、戦場で死ぬことはあり得る。少なくとも、その可能性はゼロじゃない。だから、あんまり時間をかけないことだよ?」
父は善意で言ってくれているのであろう。
アスカはラ・リベラッツィオーネが見えなくなるまで、ずっと見守っていた。
マカイロス要塞は海沿いにある。
この要塞には大量のパンツァー兵が詰めかけていた。
ここは帝都バビュロンの入口に当たる。
ここを突破すれば、帝都までの道が開かれる。
俺は母艦から映像で要塞を眺めていた。
今回からレジスタンスの新型量産型パンツァー『グラーヴォ』が実戦投入される。
実験はかなり積んでいるらしい。
試験的な運用も済ませてきた。もういつでも、実戦で使えるはずだ。
グラーヴォの武器はエーテルサーベル、エーテルマシンガン、エーテルナイフだ。
主に接近して戦うことを想定されている。
俺はパンツァーを具現化した。
出撃前だ。
俺はカタパルトに足を乗せる。
すでにグラーヴォは出発していた。
もう、帝国の量産型パンツァー『ヴィーキング』と交戦している。
今回の戦場は海上だ。
俺も出撃したくてうずうずしてる。
「テンマ・イカズチさん、発進の準備はよろしいですか?」
「ああ、いつでも行けるぜ!」
「それはいい知らせです。パンツァー『エンデュミオン』、発進してください」
オペレーターからの許可が下りた。
俺は滑走して、母艦から飛び出す。
この空に浮かぶ瞬間がたまらなく気持ちいい。
俺はバーニアを噴かせて、大空へと飛び立った。
ブリッジではシグルドが司令席に座っていた。
シグルドは味方が青、敵が赤で表示された画面を見ている。
パンツァー戦は古代の戦いのように、ただ力づくで戦うものではない。
明確な戦略、戦術思想にもとづいてパンツァーは運用される。
正面から馬鹿正直に攻撃を仕掛ければ、返り討ちに遭うだろう。
「グラーヴォの性能はどうだ?」
シグルドがパンツァー『グラーヴォ』の戦果について尋ねた。
画面では青で表示されている。
青側は右翼を最も厚くしていた。
それによって、帝国軍をハンマーで殴るように撃破するという作戦だ。
レジスタンスは機動性を、帝国は攻撃力と防御力に性能を割り振ることが多い。
どんなパンツァーもすべての性能で優れているわけではない。
機動性がある機体、攻撃力がある機体、防御力がある機体、など、パンツァーの性能は何かを突出させれば、何かを失うようにできている。
「グラーヴォは優勢に戦いを進めています。エーテルマシンガンが有効な力を発揮しているようですね」
「それは朗報だな。このまま右翼を突き破れば、こちらの勝ちだ。その後はマカイロス要塞を占領するだけだな」
「テンマ機がまた敵パンツァーを撃破しました。やはり、テンマ機の力が大きいですね」
「我々は蛮勇ではなく、知略で勝つ。パンツァー『エンデュミオン』の性能は高いが、それに頼り切るのも問題だ。それに今回はラ・ステッラ・ドーロが補助部隊として動いてくれている。我々だけの戦果ではないよ」
そういうとシグルドは戦場に目を向けた。
一方、戦場での天馬は。
「はあああああああ!」
俺はまた敵パンツァーを撃破した。
俺が主に使うのはエーテルソードだ。
エーテルビーム粒子を刃に変える技術が用いられている。
俺にとっては愛剣と言ってよかった。
俺は海上で、敵パンツァーに接近戦を挑んだ。
パンツァー『ヴィーキング』は攻撃力と、防御力に高い性能を持つ。
その分、機動性は犠牲になっている。
帝国の設計思想は攻撃と防御だからだ。
だが、そんなパンツァーでもエーテルソードはあっさりと敵パンツァーを斬り捨てる。
戦場の中で俺はただひたすら敵パンツァーを斬っていく。
敵が俺を危険な敵と認識したようだ。
複数のヴィーキングが俺を包囲しようとする。
「そんな策、俺には通じない!」
俺は機動力で敵パンツァーに接近すると、一体のパンツァーを斬り上げた。
斬られたパンツァーが海中に没し、そのまま爆発する。
俺は暴れまわるライオンのように戦場を舞った。
誰も俺を止められない。
だが、敵には秘密のパンツァーがあることを俺は知らなかった。




