↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/28

帰り

 俺はレジスタンスベース『エスペーロ』に帰ってきた。

 当初は武者修行の旅のつもりだったが、ラ・ステッラ・ドーロとかかわってすべてが変わった。

 今、ラ・ステッラ・ドーロのメンバーはレジスタンス『エスペラント』に受け入れられている。

 彼女たちはレジスタンスに協力するという道を選んだようだ。

 正直、今後も彼女たちといっしょに戦えるのはうれしい。

 俺は司令室で、レジスタンスのリーダー『シグルド・リーヴァ』と話していた。


「そうか。厳しい旅だったな」


「はい、俺たちはアウレーリアを犠牲にして戻って来ました」


「それにしても……」


「? 何か?」


「ああ、機龍というのが気になってね」


「はっきり言って化け物でした。俺では手がでなかった」


「ふむ……君ほどの剣士がそう言うのなら、それほど危険な代物なのだろうね。なんにしても、よく帰ってきてくれた。しばらくは休むといい。心も体もな」


「はい、ありがとうございます」


「それでは下がってよろしい」


「あの」


 俺はどうしても尋ねたいことがあった。


「どうかしたか?」


「ラ・ステッラ・ドーロの残党はどうしますか?」


「彼女たちは当分、協力者になってもらう。これからいっしょに戦うこともあるだろう。その代わりとして、レジスタンスは彼女たちの首領アウレーリアを助けるための手助けをするという協約を結んだ。これで同盟軍というわけだ」


「そうでしたか」


 彼女たちもアウレーリアのことを心配しているに違いない。

 アウレーリアはあの後、帝国軍に大打撃を与えて囚われたそうだ。

 アウレーリアがどこに囚われたかはわかっていない。

 俺は彼女が心配だった。

 身を挺して彼女は俺を逃がしてくれた。

 彼女には借りがある。それを何としてでも返したい。

 それに借りがあるというのはあまりいい気分ではなかったからだ。

 アウレーリアへの借りは必ず返す!

 そう思って、レジスタンスベースを歩いていると、奥からシャオユエが現れた。


「ティエンマー!」


「やあ、シャオユエ!」


 シャオユエは俺にダイブしてくる。

 この子は俺に受け止められると思っているな。

 やれやれだ。


「半年ぶりだね!」


「そうだな。意外と短かったな」


「私、さびしかった」


「ごめんな、俺のわがままで」


「ううん、ティエンマーは悪くない。でも、もっと遊んでほしかったのも確か」


「安心してくれ。今日からしばらくはレジスタンスにいる」


「? ティエンマー、何かあった?」


「……どうしてだ?」


「何か、ティエンマーは元気がない」


 こんな子供にも見抜かれるなんて、俺はそんなにわかりやすいか。

 まいったな。


「そう、見えるか?」


「……うん」


「まあ、いろいろあってね。アスカはいるか?」


「うん、いるよ。ティエンマーが帰ってきてうれしがってる」


「そうか。俺はアスカと話しに行く。かまってあげられなくてごめんな」


「ううん、大丈夫」


「それじゃあ、俺は行く」


 俺はエスペーロの研究室に向かった。

 そこにはアスカの姿があった。


「アスカ! ただいま!」


「テンマ! お帰りなさい!」


「今戻ったところなんだ」


「そうなの。半年ぶりね」


「ああ、そうだな」


「何か、変わったわね?」


「そうか? 自分ではわからないんだが?」


「うん、変わった。修行のおかげかしら?」


「ははっ、そうかもしれないな」


「半年間、何をしていたの?」


「まあ、長い話になるが……」


 俺はアスカに旅のこと、ラ・ステッラ・ドーロのことを話した。

 アスカはわかってくれた。


「そう、大変だったわね」


「俺はまだ未熟だ。俺がもっと強ければ、アウレーリアを犠牲にすることはなかったんだ」


 俺は自分の拳に力を入れる。

 それをアスカが柔らかく包み込む。

 俺はドキッとした。


「テンマのせいじゃないわよ。クウマさんがいても撤退を選んだんでしょう? なら、仕方がないわ」


「俺は必ず、アウレーリアを助け出す」


「うん」


「必ずだ。俺は借りを返す」


「そう、ね。しばらくは忙しくなるんじゃない?」


「まあ、俺たちが次に帝国から狙われるということもあるか」


「そうそう、テンマ」


「何だ?」


「エンデュミオンを貸して」


「エンデュミオンを?」


「整備するわ。いつでも戦えるようにね」


「ありがとう。こんなことを頼めるのはアスカだけだ」


「それが私の役目だもの」


 アスカはそう言うと、ほおを赤く染めた。

 俺とアスカはしばらく黙った。

 だが、悪い沈黙じゃない。むしろ心地いい。

 ふしぎだ。沈黙はどこか嫌な感じがするはずなのに、アスカとのあいだの沈黙はどこか情緒を伴う。

 俺は目を閉じる。

 この感じをずっと感じていたかった。

 アスカはどう思っているんだろう?

 心地よく感じているだろうか?

 そう感じてくれたのならうれしい。

 

「テンマは、次の作戦のことを知ってる?」


「いや?」


「今度はマカイロス要塞を攻撃するようよ」


「マカイロス要塞……」


「海沿いにある要塞ね」


「なるほど、シグルドはそこを占領して、帝国首都へと道をつなげたいわけだ」


「きっと、激戦になるわ」


「そうだな。だが、俺も戦士(クリーガー)だ。そんなことでビビってられないさ」


「テンマはどうして戦うの?」


「俺はアルカディア共和国を信じているからな。ほかのみんなもいっしょじゃないか?」


「確かにレジスタンス『エスペラント』ではアルカディア共和国に忠誠を誓うわね。でも、それだけかしら?」


「というと?」


「帝国では暴力を行使したい人間が軍に入ると聞くわ。レジスタンスはどうかと思って」


「まあ、戦いにしか生きられない人もいるさ。父さんだってそうだ。父さんがレジスタンスに協力しているのは武の道を極めるためさ」


「私は戦争が怖い」


「怖い?」


「ええ。戦争が長引くほど、人の理性がおかしくなっていくように感じて……」


「だから、俺たちは戦争に呑まれないようにしないといけないのさ」


「テンマは大丈夫?」


「俺は戦いが好きなわけじゃない。確かに、一剣士として剣の道を極めたいという願望はある。だが、それは暴力を極めることじゃないさ」


「そろそろ、食事の時間ね」


「ああ、行こうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。