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アウレーリア

「よし! 今から帝国軍の船の中に入る! 来れるやつは続け!」


「なんであんたがしきってんのよ!」

  

 ダニエーラが反論する。

 だが、俺はそれを聞かない。


「戦いは勢いが大事だ! 突入するぞ!」


「各部隊、テンマに続いて!」


「ぼくは退路を確保しておくよ。エーヴァ、君が行くんだ!」


 カタリーナも俺を援護してくれる。エーヴァの部隊が俺についてきた。


「全部隊に告ぐ! 可能な限り、テンマ君を援護しろ」


 アウレーリアもそれを認めてくれる。

 狙いは小型の船だ。

 俺は向かって右の艦を狙った。

 格納庫から内部に侵入する。

 俺はエーテルライフルを出して、内部を破壊した。

 途中、旧式のヴィーキングが出てきたが、エーヴァたちは難なくと倒してしまう。

 勢いは確実に俺たちが押していた。

 俺たちは内部で暴れまわる。

 俺たちの目標は動力炉だ。

 この船を動けなくする。

 落下すれば、地上部隊が何とかしてくれるだろう。

 

「あれが動力炉(メインリアクター)……くらえ!」


 俺はこの船の動力炉を破壊すると、内部から食いちぎるように外に出た。

 船が地上に降下していく。

 あともう一つの船を破壊すれば、旗艦は丸裸だ。

 もう少しでこの戦いに勝てる!


「くっ!? ミンスクをやられたか……このままでは敵のパンツァー部隊にやられる!? おのれ!」


「ふっふっふっふっふ、難儀な顔をしていますな、司令官殿」


「きさま……ベルナドット! 何しに来た!?」


 そこに現れたのは長身で、黒髪の男。

 名前はジャン・ベルナドット。この部隊の参謀を務めている。

 ベルナドットはこの艦が劣勢なのにまるで他人事を言っているようだ。

 それがパストール少将の怒りに火を注ぐ。

 

「敵も賊にしてはやりますな。どうでしょうか? ここはあれをお使いになっては?」


「……あれだと? まさか、きさま……」


 パストール少将は血の気が引いた。

 あれはもしものためにこの旗艦キエフに搭載してきた。

 それを使えとこの男は進言しているのだ。


「あれはまだ試作段階だぞ!?」


「ふふふふふ、いいではありませんか。賊を撃つにはちょうどいい。万が一暴走しても我々に実害はありません。エネルギー切れで行動不能になるだけです」


「きさま……本気か?」


 パストール少将はできることならあれは使いたくなかった。

 だが、戦況は一刻と一刻と悪化している。

 このままではこの旗艦キエフも落とされるだろう。

 今はヴラジヴォストークが賊の猛攻撃を受けている。

 パストール少将は事態を天秤にかけた。


「いいだろう。あれを出せ!」


「ふふふ、おもしろくなりそうですな」


 ベルナドットが妖しく笑った。



 俺たちは左の艦に猛攻をかけていた。

 敵のパンツァー部隊が壁になって防いでいる。

 敵はそれでもたじたじだ。

 俺たちの攻撃は確実に効いていた。

 その時、敵旗艦の後部ハッチが開いた。

 なんだ? 何か出すのか?


「テンマ、何か来るぞ! 気をつけろ!」


「いったい、何だ?」


 それは巨大な塊だった。

 体の色はメタリックシルバーだった。

 それは翼を広げると、その巨体をさらした。


「何だ、あれは!? 飛竜(ひりゅう)か!? 飛竜型のモンスターパンツァー!?」


 モンスターパンツァーとはモンスターのデザインをしたパンツァーのことである。

 基本的に無人で、人工知能で動く。

 帝国では無人であるため、虐殺にも使われるが、レジスタンスでは機械に殺戮をさせることに忌避感があり、使われていない。


「はーっはっはっはっはっはっはっは! ハロー、諸君!」


「この声、パストール少将か!」


「これは我が軍が誇る機密兵器だ! 名は機龍(きりゅう)! 見ての通り、飛竜型のモンスターパンツァーだ! 諸君らはこの兵器によって殺されることを本望とするがいい! さあ、やれ!」


「なめたことを……あんな奴、俺たちの力で倒してやる!」


「テンマ、援護するわ!」


「ああ、助かる!」


 ダニエーラが援護を申し出た。

 正直、彼女の援護はうれしい。

 機龍は口を開いた。

 その口にビームが集中される。

 機龍は大口径ビームをはき出した。

 それはまるで、ブレスのようだった。

 すさまじい光線が空中を駆け抜けて、アンジェラに向かった。

 アンジェラはバリアシールドでこれを防ぐ。

 射線上から退避できなかった味方パンツァーがやられた。

 

「くっ!? こいつ!?」


「行くわよ!」

 

 ダニエーラの部隊が射撃で援護してくれる。

 機龍はそれに気を取られたようだ。

 俺は一気に近づいて、そのままエーテルソードで斬りつける。


「やったか!?」


 俺の剣は確かに機龍の首に傷をつけた。

 だが、それだけだ。

 首を切断することはできなかった。

 あれだけか。

 全力で斬ったのに。

 しかも傷は再生してしまった。

 ただでさえあれほどの質量なのに、再生まであるとは……。

 機龍が腹を見せた。

 腹部からビームが発射される。

 拡散ビーム砲だ。

 俺たちは全力で回避することに力を注いだ。

 それでも拡散ビームはパンツァー『ニュンフェ』を撃墜していく。

 まずいな。このままじゃ、こちらがやられる。

 形勢は帝国軍に戻った。

 

「はーっはっはっはっはっはっは! きさまらは手も足もでないようだな! そのまま息絶えるがいい!」


「パストールめ……いいたいことを言う! だが、この程度で、俺たちはやられはしない! まだまだこれからだ!」


「いいえ、ここまでよ」


「!? アウレーリア!?」


 そこに黄金のパンツァーをまとったアウレーリアが現れた。

 このパンツァーはいったい? 専用機か?


「これは私専用のパンツァー『グロリアーナ(Gloriana)』よ。みんな、よく戦ってくれたわね。私がここで足止めするから、みんなは脱出しなさい」


「え? それはどういう?」


「アウレーリア様?」


「ぼくたちに逃げろと?」


 三人娘も混乱している。

 まさか、アウレーリアはここで一人で時間を稼ぐ気か?

 そんなこと認められるわけがない! 

 俺も戦うぞ!


「アウレーリア、俺だって戦える! 俺も残るぞ!」


「私も戦えます!」


「あたしだって!」


「ぼくも!」


「いいのよ、みんな」


 アウレーリアはかぶりを振った。

 彼女の覚悟は硬い。

 だが、俺は……。


「みんなで戦えば勝てるさ! アウレーリアが残る必要なんてない!」


「これは私の命令よ。エーヴァ、ダニエーラ、カタリーナ、あなたたちは部隊をまとめて、アンジェラでレジスタンスに合流しなさい」


「アウレーリア様……」


「そして、テンマ君、無関係なあなたを巻き込んで、ごめんなさい。ここは私に任せてほしいの」


「だが!」


 俺はあくまで残るつもりだった。

 彼女一人だけになんてできない!


「テンマ……ここは引くぞ?」


「父さん!?」


「今の我々ではあれに勝てない。アウレーリアは合理的だ。ここで戦力が失われれば、再起はない!」


「でも!」


「理解しろ! 撤退するぞ!」


「アウレーリア……」


「ふふふ、ありがとう、テンマ君。あなたとの生活は楽しかったわ。これはそのお礼」


 アウレーリアは俺に近づくと、ほおにキスをした。

 なっ!?


「さあ、行きなさい! エーヴァ、ダニエーラ、カタリーナ、後は頼んだわよ!」


「くっそー!」


 俺は泣いた。泣かずにはいられなかった。

 俺は自分がふがいないと思った。ここは引くしかない。

 頭ではわかっている。

 だが、心は納得できない! 俺は足手まといでしかないからだ。

 もっと俺が強ければ、どうにかできたのに!

 自分の弱さが呪わしい。

 俺たちは後方に退避した。


「? なんだ? 女が一人で浮遊している?」


 パストール少将は混乱した。

 いったい何が起こっているのか?


「どうやら、敵は首領が盾になって、味方を逃がすらしいですな」

 

 ベルナドットが言った。

 この男は現実認識能力は確かだ。


「フン、いまさら逃げるか。機龍! やってしまえ!」


「させないわ!」

 

 アウレーリアがエーテルランスで機龍の顔を貫いた。

 一撃である。


「何だと!? あの機龍が!?」


「ほう……敵のボスはやるようで」


「くっ!?」


 パストールは怒りの目でベルナドットをにらみつけた。

 この男は事態を何と思っているのだ!

 ベルナドットはどこ吹く風だ。

 それがパストールの怒りを増大させる。


「きさま! 味方を何だと思っているのだ!」


「すいませんね、こういう性分で」


「!? 全機に告ぐ! アウレーリア・コルネーリを殺せ!」


 こうして戦場のパンツァーはアウレーリアに向かった。

 アウレーリアは美しく戦った。

 アウレーリアはさながら『ミネルヴァ』のごとく映った。

 テンマたちはそのおかげで、退避できた。

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