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ギヨーム

「いったい何たるざまだ! きさまら、それでも男か!」


 パストール少将が怒声を叩きつけた。

 それが兵士たちの受信機から漏れて、ラ・ステッラ・ドーロに伝わる。

 パストール少将はこの事態にあきれていた。

 たかが、メスザルどもに何たることだ!

 男の方が強いのだ! 強いはずだ!

 それを女ごときにやられるなど恥ずべきことだった。

 パストール少将は男女差別主義者だった。

 男性の優位を疑っていない。

 

「くそっ! このままでは戦列を崩される……どうすればいい?」


「閣下!」


「何だ!?」


 パストール少将に声をかけたのは副官だった。

 パストール少将の怒りの目が副官に注がれる。


「ギヨーム・ド・ノルマンディ大尉を出してはいかがですか?」


「奴か……」


 『ギヨーム・ド・ノルマンディ』とはパストールがあまり関わりたくないタイプの人間であった。

 好戦的で、戦いに無上の喜びを見出す……司令官を軽蔑し、軽んずる。

 パストールの嫌な、気にくわない人間が彼『ギヨーム』だった。

 今、帝国軍は猛烈な攻撃を受けている。

 このままでは多数のはずの帝国軍がやられてしまうだろう。

 パストール少将に芽生えたのは己の保身だった。

 奴は確かに気にくわないが、実力は確かだ。

 このままでは私は敗軍の将となるだろう。

 それだけは絶対に避けねばならない。

 自分のメンツがかかっているのだ。

 それと比べれば、奴を出撃させるのも致し方ない。

 パストール少将はそう考えた。


「わかった。奴を発進させろ!」


 

「何? パストールが出撃命令を出しただと?」


「お頭、確かな情報です」

  

 部下のアントワーヌが言った。


「パストールの奴はキンタマがついてるんですかねえ?」


 もう一人の部下ダスティンがパストールをなじる。


 ギヨームはまず指令を疑った。

 パストールから自分は毛嫌いされている。その自覚はギヨームにはあった。

 ゆえに、発進しろとは……。


「くくくく、司令官殿は追いつめられたというべきか。いいじゃないか」


 ギヨームがほくそ笑む。

 この展開はギヨームにとって悪くない。

 司令官に恩を売ることができる。

 

「わかった。すぐに出撃する。相手は女か。楽しみだな!」


「これで戦場を楽しめますね!」


「けっけっけ! 女相手に戦争とはついていやすぜ!」


 かくして、パストール少将は問題児を出撃させた。



 エーヴァは勝利への道を歩んでいた。

 彼女の部隊は帝国軍をことごとく撃破している。

 味方の損害は大したことがない。

 このまま行けば、帝国軍は退却するだろう。

 エーヴァは自信を持った。

 そんな時だ。

 星のように輝いたパンツァーがあった。

 合計三機だ。


「ん? あれは何?」


 エーヴァは気味の悪さを感じた。

 何かあれにはおぞけをもたらすものがあるようだ。

 星が突撃してきた。

 三人娘は、部下に攻撃を控えさせる。

 

「はーっはっはっはっはっはっは! おい、女ども! よく聞けえ!」


「あれは?」


「何、あのおっさん?」


「気を引き締めて! あれは強敵だよ!」


「はははははははは! 俺様はギヨーム・ド・ノルマンディ大尉だ! 帝国のノルマンと呼ばれている! おまえたちの力を俺に見せろ! せいぜい、殺し合おうじゃないか!」


 ギヨームは大音声でエーヴァたちに呼びかけた。

 ギヨームのそばにはパンツァー『ヴィーキング・カスタム』を装備した男が二人いた。


「私はアントワーヌです。以後、お見知りおきを」


「俺はダスティンだ! 燃やす尽くしてやるぜえ!」


「何なのよ、あんたらは? 殺されたいの?」


 ダニエーラが冷たい目で三人を見る。


「おまえたちが士官か。いいな! 俺様を楽しませろ! ヒャッハアアアアアアア!」


 ギヨームは問答無用に攻撃してきた。

 ギヨームのパンツァーは専用機だ。

 パンツァー『ヘルツォーク(Herzog)』である。

 機動性を失っているが、大火力、大出力兵器を装備している。

 ギヨームの手にはエーテルソードが握られていた。

 

「くっ!? 迎撃!」

 エーヴァがギヨームを止めようとする。

 しかし、ギヨームは強力な突進で、エーヴァを吹き飛ばす。


「ああっ!?」


「あんた! よくもやったわね! 一斉射撃よ!」


 ダニエーラが部隊に一斉射撃を命じる。

 ギヨームはそれを回避するどころか、むしろ突撃してきた。


「効かねえなあ!」


 ギヨームのパンツァーは装甲とバリアシールドが厚いようだ。

 ギヨームはダニエーラの部隊に斬り込んだ。

 そのまま女性兵が斬り殺される。


「あああっ!?」


「かあっ!?」


「きゃあっ!?」


 アントワーヌとダスティンがそれに続く。

 

「やらせないよ!」


 カタリーナは部隊をギヨームに向かわせた。

 ギヨームたちは袋の鼠だ。

 だが。


「がーははははははは! そんな攻撃が効くかよ! 女々しいんだよ、女ども! 非力すぎるぜえ!」


「くっ、こいつ!?」


 ギヨームはエーテルキャノンを出した。

 あれにはかなりの火力があるだろう。

 三人娘は翻弄された。

 

「じゃあ、まずは死んでみっか!」


 エーテルキャノンにエネルギーが満ちる。

 そのまま、宙を漂っていたエーヴァに狙いが向けられる。

 

「じゃあな! あばよ!」


 エーテルキャノンが発射された。

 エーヴァは死を覚悟した。

 その時。


 エーヴァの前に白い流星が現れた。

 それはバリアシールドを最大限に展開してエーヴァを守った。


「ふう……」


「!? 何だてめえは!? 男だと!? この部隊のなんで男がいる!?」


「無事か、エーヴァ?」


「テ、テンマ……」


 

 俺は戦況を確認する。

 エーヴァが狙われたのはすぐにわかった。

 俺はすぐに飛んでエーヴァの前に行った。

 バリアシールドを最大で展開して、防御する。

 あまり、利巧とは言えない。これはバリアシールドに負荷をかけるからだ。

 だが、エーヴァを助けるにはこれしかなかった。


「状況は、君たちが押されている、それでいいか?」


「う、うん……」


「テンマ!? なんで来たのよ!?」


「テンマ君!?」


「まあ、俺も戦いに参加したくてね。父さんは後ろの二人を頼む。俺はあの男を狙う」


「いいだろう。負けることは死を意味するぞ? わかっているな?」


「ああ、もちろんだ!」


「ならいい。おまえの命はおまえだけのものではない。それを忘れるな」


「ああ!」


「てんめえ……よくも邪魔しやがったな……ぶっ殺す!」


「それはこっちのセリフだ! せいぜい、あがいて見せろ! 行くぞ!」

 

 テンマとギヨームが滑空した。

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