バビュロニア帝国軍
「あれは……バビュロニア帝国軍! やつら、ニュンフィアに攻めてきたか!」
俺は怒った。
こんな平穏な土地を攻めようとする帝国軍に対してだ。
あまつさえ、降伏を求めてくるなど、こちら側をなめているとしか言いようがない。
俺はパストール少将という人物は知らなかったが、余りの横柄さに呆れた。
俺は『アンジェラ』のブリッジから様子を見ていた。
パンツァー『ニュンフェ』をまとった女性兵士たちが帝国軍と戦っていた。
帝国軍も量産型パンツァーを出してきたようだ。
帝国軍の量産型パンツァーは『ヴィーキング(Viking)』という。
武装はエーテルソード、エーテルアックス、エーテルジャベリン、エーテルライフルと豊富だが、主にこの中から自由に主武装を選ぶことができた。
それがヴィーキングの強みだ。
このパンツァーは持ち手にフィットした戦いができる。
エーテル同士が輝き、光芒をもたらして消えていく。
戦況は帝国軍が若干押していた。
若干とはいえ、これは大きかった。
大きな波は帝国軍側にある。
俺はアウレーリアを見た。
彼女は冷静に戦況を見守っている。
だが、俺は!
「テンマ君、出撃したい?」
俺は熱くなった。
「当たり前だ!」
「そう、なら出てもいいわよ」
「いいのか?」
「こちらには戦力を温存しておく余裕はないしね」
「ああ、わかった。ところで、父さんを連れて行ってもいいだろうか?」
「あなたのお父様? もちろん。援軍は大歓迎よ」
「ありがとう! 恩に着る!」
俺は走ってブリッジを出た。すぐさま、牢へと駆け出す。
「父さん!」
「テンマか?」
「力を貸してくれ!」
「どういうことだ?」
父さんとしては事情を知りたいだろう。
当然の質問だ。
「実は……」
俺は事情を話した。
俺はこの部隊のクルーを見殺しにしたくない。
黙って見ていることはできない!
俺は戦士だ! 俺は戦う!
「……ふむ、そういうことか。食事が豪華になったのはおまえのおかげか」
「そうなんだ。これが父さんのパンツァーリングだ。これで俺に力を貸してくれないか?」
「いいだろう。おまえがそう言うのなら、この部隊のために戦ってもいいだろう。では、出るぞ」
「ああ!」
一方、女子更衣室では。
「ふーん、テンマも出るの」
「ん、そうらしい。私たちもいいところを見せたい」
「そうだね。ぼくたちもやるっていうことを彼に見せてあげたいな」
エーヴァたちがしゃべっていた。
彼女たちはパンツァーを装着するために薄着になる。
エーテル装甲の下はレオタードだ。
彼女たちはラ・ステッラ・ドーロの士官に当たる。
主に部隊を率いるのが仕事だ。
「ねえ、帝国軍の兵士の撃墜スコアで勝負するっていうのはどう?」
「いい。望むところ」
「ぼくも賛成だよ。ふふふ、負けないからね?」
「それはこっちのセリフよ!」
「私が勝つ!」
戦いへの決意が高まりつつあった。
三人娘はパンツァー『オンディーナ』で出撃した。
風が吹きつける。
戦いの前はいつも、彼女たちは興奮している。
彼女たちも戦士なのだ。
戦いの始まりは両勢力のパンツァー兵のぶつかり合いだった。
エーヴァたちは自軍が若干押され気味であることを悟る。
「エーヴァ、出撃!」
「ダニエーラ、出るわよ!」
「カタリーナ、行くよ!」
三人娘は戦場に飛び立った。
美しい、女性用パンツァーは青かった。
それぞれは武器を取る。
エーヴァはエーテルスピアを、ダニエーラはエーテルボウを、カタリーナはエーテルジャベリンをそれぞれ装備する。
「じゃあ、それぞれ部隊を率いて戦うってことで!」
「ダニエーラ! もう、勝手なんだな。まあいいさ。それじゃあ、エーヴァ、ぼくも自分の部隊といっしょに行くよ」
「ん。わかった。私も指揮に向かう」
三人娘はそれぞれの戦場に向かっていった。
エーヴァは部隊を指揮しつつ、攻めていた。
三人娘の中で一番、純粋な攻撃力はエーヴァが一番だ。
彼女はエーテルスピアで、敵パンツァーを貫く。
不意に彼女の周囲にパンツァーが集まりつつあった。
帝国軍は優勢な数で包囲するつもりだ。
「敵は包囲をする気。私たちは一気にぶち抜く!」
エーヴァが率いて、部隊は帝国軍の包囲を破りにかかった。
エーヴァの部隊は主に槍を装備している。
勢いのままに突破する作戦だ。
帝国軍は包囲によって、密度を小さくしてしまった。
それゆえに、エーヴァの狙い通り、帝国軍のパンツァー部隊が蹴散らされる。
エーヴァの部隊はそのまま反転すると、混乱していた帝国軍に猛攻をかけた。
帝国軍のパンツァーが次々と撃墜されていく。
戦場で、光芒が輝く。
エーヴァの金髪が美しくなびく。
帝国軍は個人に最優先させた武装を持つだけあって、武装の統一性がなかった。
数だけを見ると、エーテルアックスを装備した『ヴィーキング』が多い。
戦況は刻一刻と変化する。
帝国軍は第二波の部隊を出した。
エーヴァたちはそれを見届ける。
「敵、増援を確認! ただちに攻撃にうつる!」
エーヴァはさらなる敵へと向かっていった。
一方、ダニエーラは。
ダニエーラの武器は弓だ。
彼女は洋弓もたしなんでいる。
ダニエーラは部隊にエーテルボウを装備させて、後方からエーヴァの部隊を支援していた。
接近戦はエーヴァに任せる。自分たちは後方支援に徹すればいい。
「さあ、踊りなさい! 一斉射撃、用意! 発射あ!」
ダニエーラたちがエーテルボウから一斉にエーテルアローを放つ。
密集していた帝国軍はいい的だ。
エーテルアローが光の軌跡を描いて、敵パンツァーに命中する。
パンツァー『ヴィーキング』は爆破されていく。
帝国軍は力づくで、戦線を突破しようとした。
「あら? 力づくで来るの? いいじゃない! みんな、よく狙いなさい! 敵は的よ!」
ダニエーラは一斉射撃で敵の突撃を受け付けない。
戦況がラ・ステッラ・ドーロ有利に展開されていく。
それを見たダニエーラは余裕の笑みを浮かべる。
「敵は混乱しているわ! 今度は一点集中して矢を射るわよ!」
ダニエーラたちは一斉に、集中的にエーテルアローを撃つ。
敵からエーテルライフルの反撃が来るが、散発的だ。
そんなものかすりもしない。
エーヴァが正面から敵を撃破している。
そこにカタリーナ率いる部隊がさらに左翼から攻撃を仕掛けた。
帝国軍の前線は崩壊しつつある。
「ぼくの分を残しておいてほしいな!」
カタリーナはジャベリンを操り、敵を貫く。
カタリーナはジャベリンを投げつける。
光の線が走った。
エーテルジャベリンは直接攻撃にも使えるが、やはり、基本的には投げつける時、一番効果を発揮する。
カタリーナの部隊は半数がエーテルスピア、半数がエーテルボウを装備していた。
左翼から敵を挟み込むように、カタリーナの部隊が襲い掛かる。
さながら、メスライオンのようだ。
すさまじいほどの獰猛さであった。
「ぼくらは帝国軍だって手は抜かないからね!」
カタリーナがエーテルジャベリンで立ち回る。
接近戦に対応できずに、帝国軍は倒される。
戦いはラ・ステッラ・ドーロ優勢になりつつあった。




