歪み 3
空も青さが薄まり赤みを帯び始めた頃、あの事件があった辺りはビルを再建するためのクレーンやらがあちこちに停まり、一般人は誰も寄り付かないゴーストタウンのようになっていた。
この時間帯はいつもなら多くの人が仕事を終え、帰路について帰りの電車へと向かうあの光景が見られるが、まるで特撮のために作られたジオラマの世界のように、今は工事をしてくれる人たちも、とにかく人が誰もいなかった。
総理の判断により、日が暮れる頃には工事の仕事含めこの辺り一帯の人は帰らなければならなかった。
だが、人が誰もいないのをいいことにそこにごく一部の限られた人間は集まる。
「ここ結構穴場だね」
「人がいないってだけでこんないいスポットになるものなのね」
4強である。
秘密基地や隠れ家として使う、までとはいかないが一息ついて屯するにはちょうどいい場所だった。
それぞれ自販機で買ったジュースを片手にビルの瓦礫に腰掛ける。
「俺ら、どうなっちまうんかね」
「さあね。結局あの人に金で買われたようなもんだよ。あの人が何事もなく生きていれば、俺たちも生きていける」
マキトはジュースを持っていない方の掌を自分のほうに向ける。
「確かに俺たちはもう普通の人間じゃない。こんな力望んだわけじゃないのにね。あったって生活がちょっと便利になるだけ……」
感傷に浸り静寂が4人を包む中、4人のスマホの通知音が静寂を引き裂いた。
スマホを見たあとの顔は、気だるさがそのまま表情として表れていた。
「もう、やだ」
ユキが涙を堪えながら震える声を絞って口に出した言葉だった。
どこからともなく、頭に声が響いてくる。
重く、歪んでいるような、鈍く反響するような痛みとともに、声が聞こえてくる。
「何が嫌だって?」
4人とも初めてのことで、戸惑いながらも痛みに耐えながら頭を抱える。
「イヤ……何も、嫌じゃないっ……あぁぁ!!!」
ユキが咄嗟にそう言うと、驚くほど痛みが引いていく。
「紛らわしい弱音吐くんじゃねえよ。ビシッとしろよ」
それ以上何か声が聞こえてくることはなかった。
「何、今の……」
「誰だ?どうなってる?何で声が聞こえたんだ?」
ユウガが少し苛立っているのを鎮めるかのように、再び激しい頭痛に襲われる。
「詮索するな。お前らはやること黙ってやってりゃいいんだよ」
少し目尻に涙を浮かべて、ユウガは舌打ちをした。
4人がやるべきこと、それは現在街を破壊した高校生4人を捕らえること。
生け捕りにして引き渡すことさえできればそれで良かった。
「ところで、ウイルスの話はどうなったのかしら」
「3週間ぐらいで最終チェックまで終わるって聞いてるけど。全国各地方の主要都市をはじめとして人為的にパンデミックを起こす、って……」
「それで予防薬として完成したウイルスを打っていけば、近いうちに全国民がゾンビになるって話だろ」
頭痛に襲われることもなく、ユキを除いて3人で話は盛り上がった。
はたから見れば中の良い若い男女でしかない。
(そこまでして何が望みなの?お金なの?)
ユキは口を開くこともトラウマになりそうだった。
下ろした両手でズボンを無意識に力強く握りしめた。
(一番死ぬべきなのはあいつじゃ……私たちみたいに異能はないはずなのに)
自分たちより圧倒的に弱いはずの者に支配されているのが、ユキは腑に落ちなかった。
だが、少し変な行動を起こせばあの形容しがたい激痛が頭を襲うと思うと、反旗を翻すことも容易ではないだろうと、ユキは視線を90度下に落とした。
(あの時会った人……その友達も……どうなっちゃうんだろう)
心の中のシュウたちに静かに思いを馳せるユキだった。
よくわからない話ですね。何を書いてるんだろう




