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歪み 2

総理はこの事態をかなり重く受け止めていた。

前代未聞の事件、異能を操る人間の暴走……銃器が通用するのかも分からない相手にどう立ち向かえば良いのか、総理は頭を抱えていた。


「どうしたものか……他国に助けを求めるのは――」


珍しく弱気な総理を前に、側近は冷静に指摘する。


「落ち着いてください総理。早まってはいけませんよ。これだけの被害が出て国内に収まっているのはもはや奇跡です。SNSでの拡散によって他国に知れ渡るのは時間の問題ですが、ここは情報統制をしてなるべく時間を稼ぐのが正解かと」


総理は神妙な顔をして眉に力を入れる。


「そこまでして異能の存在を知られてはマズいと?」

「ええ。絶対にでも我が物にしようと狙ってくる者が現れるでしょう。それが突発的な変異などではなく、人工的に作られた薬によるものだとなると尚更です」


総理は深くため息をつくと、第一に情報統制を優先させることを決めた。


「すまないが、デジタル庁で全SNSを一時停止するよう呼びかけてくれないか。こちらは現場復興の手配を急ぐ」

「分かりました」


側近は緊張感を持ちつつも落ち着きのある早歩きでその場を去っていった。

総理はプライベートのSNSアカウントで今回の事件を検索してみるが、想像以上の勢いで拡散されているようで、ハッシュタグや検索ワードランキングにはすべて上位でトレンド入りしている。


超能力を使った無差別テロ事件と位置づけられた今回の出来事は、先のゾンビの目撃と同じく今はなんとか都市伝説の域に留まってはいるが、もう一歩のところで国民はこれが本当のことだと気づくのは時間の問題だった。


既に警察、消防、救急隊員は現場の被害者救助に駆けつけており、負傷者数を確認している。

総理は一部のビル群復興の予算や再建設にかかる期間、交通網の整備など、急遽内閣での会議の為電話で各大臣を招集しようと部屋に固定されている電話に手を掛けた。


「どうされたんですか?総理のそんなに青ざめた顔は見たことがないですが」

「丸山君……今外で何が起こっているのか分かっているのか?」

「ええ、物騒極まりないですね。ですがご安心を。私がテロを引き起こした少年4人を捕獲して見せましょう」


丸山と呼ばれるその男は鈍い銀色を反射させる左腕をそっと撫でる。

その丸い眼鏡越しに合う視線は鋭く総理に突き刺さる。


「あんな超能力者を、どうやって……」

「総理も知っているのでは?目には目を、ってやつですよ」

「味方の超能力者がいると……?!」

「あまり細かいことはお話できませんが、少年4人は私が対処いたしますので、総理は国民の安全確保を優先にされるのが良いかと」


総理は物言いたげな表情だったが、他に頼れる当ても無く丸山の言う事を信じることにした。

丸山は軽く一礼すると、眼鏡を指でクイッと持ち上げ足速にその場を去った。


「ウイルスの調子はどうかな?」

「想像以上に順調です。この調子なら予定の3週間も要らないかもしれません」

「そうかそうか、それは結構。日中のパーティはどうだったのかな?残念ながら私は参加できず、申し訳ない」


丸山は少し薄くなった髪を親指と人差し指であちこちつまんでは引っ張ってを繰り返しながらスマホを耳に押し当てる。


「これも中々だったようで、うまく向こうのご機嫌を取れたそうです。お陰で取引額は倍に上乗せだとか」

「流石だなあ。本当にできる部下たちで誇らしいね」

「いえそんな」

「ところで、今話題のテロを起こした少年4人についてはこちらで対処する事になった。なるべく早く終わらせた方が良いんだろうが、せっかくの展開をもう少し楽しもうかと思う。所詮ただの高校生4人に勝ち目はないんだからね」


余裕の笑みを浮かべると、丸山は電話を切った。


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