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邂逅 3

もう、ダメかもしれない。

そんな諦めに近い思いだけがシュウの頭の中に張り付き、中々剥がれることはなかった。


今この瞬間もビルは崩れ落ちてくる中、ビルの残骸で足場は悪く、舞い上がる細かい砂埃や煙で視界もほぼ灰一色。

そんな中、微かに悲鳴や助けを求める叫びが聞こえてくるが、どこにいるのかはっきりと把握できない。


超高速で動けるシュウでも1人助け出せるかどうかの精一杯な状況だった。


「違う……ここでもない!声はこの辺りからしたはずなのに……!」


そのスピードのお陰ですぐさま瓦礫の下敷きになる心配は無く、下敷きになる運命の人が居ても救出が可能だったが、肝心な助けを求めている人がどこにいるのか分からない。

手を必死に振った勢いで煙を払おうにも、ビル丸々が崩れ落ちてくるのに払ったところでまた大量の煙に呑まれるのがオチだった。

そもそも、煙がその場から離れる速度に対しシュウがあまりにも速すぎるため、手を払ったところで何も見えることはなかった。


自分の居場所も分からず、シュウはその場で足を止めてしまった。

スピードは緩めず、高速でその場で止まり考えを振り絞るが、何も思いつかない。


「どうしよう……いったん戻って視界が開けたところに……」


そう悩んでいると、ゆっくりと赤い液体が宙を舞って煙の中から現れては、シュウの目の前を通り過ぎ、また反対の煙の中へと吸い込まれていく。


「え?」


今度はまた現れた赤い液体はシュウの頬にピチャリと付着した。

それは誰が何と言おうと人間の血に他ならない事は頭の良くないシュウにもすぐ分かった。

シュウは急な吐き気を催し、さっき走ってきたのを思い出しながら視界の開けたところに反射的に戻ってしまった。


そのスピードを緩めた瞬間、一瞬にして辺りは雪崩のように崩れ去った。


「え……」


日本最大のオフィス街は一瞬にして破壊された。

シュウたち4人と、ホテルだけをポツリと残して。


瓦礫の上に澄み渡る青空は、なんとも皮肉なことに雲一つない美しい青空だった。

それに対比するかのように、灰色のコンクリートの下には下敷きとなってしまった人々の血がゆっくりと滲み出てくる。


「まあ、これぐらいでいいんじゃないかな」

「一瞬だったなぁ」

「なんか物足りない気もするけど、我慢ってとこかしら」

「…………」


シュウたち4人はそれぞれ場所は違ったものの、同じように膝をつき半開きに口を開け、死んだ目で少し斜め下に眼球を向けていた。


*


一方、トキマサは急遽車を飛ばして現場のオフィス街に向かっていた。

スマホを肩と頭で挟んで大慌てで花一に電話をかけた。


「花一!あの4強が出た!多手町一帯が一瞬で壊滅した……!」

「えっ、え?」


トキマサは花一の声を聞いた瞬間言葉が出てこなかった。


「あぁ、ええ、多手町の辺りですよね。もうニュースになってますよ。人外の少年らしき者たちの犯行か、だそうです」

「どういう……人外って何だ?!少年って、4強の奴らは大人3人と高校生1人……」

「私にとやかく言われようと、そういうニュースですよ?」


トキマサはすぐさま運転席のディスプレイでニュース番組を付けると、確かに4人の少年らの犯行かというニュースが報道されている。


(おかしい……なぜあの4人が悪者扱いされてるんだ?)


「花一、これはどういう……」

「ニュースの通りじゃないですか?力の制御が効かなくなったのかもしれませんし……」


トキマサはえも言われぬむず痒さに苛立ちを覚えた。

何かがおかしいが、それが何かピンと来ない。

最近妙に感じていた、謎の違和感。

それがここにきて急にパズルのピースがカチリとハマるように腑に落ちた。


「……お前は誰だ?」

「博士?何をおっしゃ」

「答えろ。お前は誰なんだ?」


トキマサの質問に答える声はなく、電話はプツリと切れた。

心臓を鷲掴みにされ、握り潰されるような、息が苦しくなる不安がトキマサを襲った。


「嘘だろ……なんでだよ……」


車は少しスピードを落とし、シュウたち4人が膝をついているオフィス街へと走っていく。

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