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ひとまずゾンビ2体を倒し、安堵に包まれたのも束の間、周囲の人々がこぞって様子を見に来てはスマホを片手に写真を撮ってはSNSにアップしていく。


「うーわ。助けてもらっといて事が済めば娯楽扱いかよ」

「こちとら命がけだったっつーのに」

「正味俺1回死んでるし」


3人は気絶しているコースケの方を見た。

なかなか起きる様子もなく、申し訳ないと思いつつナオヤは軽くコースケの頬を叩いた。


「起きてくれー。野次馬だらけなんだよ、その力で何とかしてくれよぉ」

「んん、ん?」


ゆっくりとコースケが起き上がると、駅のホームのド真ん中。

そして自分たち4人を避けるようにして人々が押し寄せてはスマホをポチポチといじっている。

それらを真顔で指さすナオヤ。


「……分かったよ」


騒々しい野次馬の声はピタリと止み、何やら黙ってスマホを操作し始める。

カメラのフォルダからは完全に削除、SNSの投稿もすぐに削除していく。

それらが終わると、潔くスタスタと駅から去っていく。


「すご。便利すぎだろ」

「まあね」


その野次馬を掻き分け、1人こちらにやってくる老人が見えると、コースケも肩の力をストンと落とした。


「博士。なかなかにタイムリーですね」


ナオヤが嫌味混じりにこぼした。


「もちろん、そうなるように狙って来てるからな。この肉片は回収させてもらう」


性質や治療薬の研究に使うということで大きな金属のタンクのようなものに慎重にトングで肉片を放り込んでいく。


「にしてもよくやった、死人はゼロだ」

「俺死にましたけど?」

「今は生きてるだろう?ハッハッハ」

「…………」


肉片を全て回収したトキマサは、雑巾のような布でその液体も綺麗に拭き取り、分厚そうな袋に入れた。


「それにしてもご苦労だった。外にかなりの人がいるみたいだが、このまま学校に行けるのかね?」

「どういうことですか?」

「コースケ君の力で記憶をいじれるかもしれんが、この件はすでにネットのニュースで大きな話題を呼んでいる。テレビ局のマスコミが来るのも時間の問題だぞ?それで全国に君たちの顔が晒されてしまえば……」


4人はハッとした。


「こっちの事がバレかねない、と?」

「そうだ。だから今日はワシが学校まで送ろう。さ、早くついて来るんだ」


コースケの力で静止している人々の間を抜け、停めてあった花一の車に乗り込むと、コースケは力を解除した。


「あれ、何で駅前に立ってんだ?って、今日金曜?!会社は?!えっ、もう11時……2時間遅刻?!?!」

「終わった……遅刻の域を完全に超えちまったよぉ」

「上司になんて説明すれば……」


気の毒だが仕方あるまい。

これでも彼らにはまだ命があり、呼吸をして自分の意思で動くことができる。

すぐ近くの車に乗り込んだ高校生たちにその命を救われたことを彼らは知りもせず、あたふたと今日も憂鬱な一日を過ごすのだった。




「無事だったみたいね」


昼手前に学校に着くと、レイが冷ややかな視線でそう呟いた。


「まあ、結果としては無事ってことになるのかな?」


リクが苦笑いを浮かべる。


それぞれ担任には人身事故で電車の運行が完全に停止していたということで欠席や遅刻扱いにはならなかったのが何よりだった。


「……にしても変ね」


スマホを見始めたレイがまたぼそっと呟いた。

スマホを見てみると今朝の事件を取り扱っているものが複数伺えたのだ。


(この内容を公にしたらマズいはずなのに……ここまでメディアに取り上げられたらこっちは)


「都合悪いよね」


コースケがレイをまっすぐ見つめながらそう言った。

目玉の動きだけでレイはコースケを睨むと、コースケはすみませんと言わんばかりに目を逸らした。


「ねえ、これってあんたたちなの?」


そう言って見せてきたのは駅のホームでゾンビと戦う複数の人影だった。

状況が状況だったため、そこに映る人影は誰が何と言おうとこの4人の誰かのはずである。


「そうだけど」

「俺らしかいなかったし」

「えっ」

「は?」


コースケとナオヤはレイが何を言おうとしているか分かると、背筋に気持ち悪いほど冷たい電気が走った。


「じゃあ誰が撮ったのか……」


シュウとリクはここでようやく意味を理解した。

ナオヤは急いでスマホを取り出し、トキマサにメールをしようとする。


「あーもう!連絡は別の端末だった、家に置いてきたぁ……RINEにしてくんねえかな」


他の全員も同じく別端末を持っておらず、結局放課後まで待つしかなかった。

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