ゴブリン(本物)襲来
ヒヨコを買ってきて二週間が経った
年少組は二階に置きたいようだが、体が大きくなった分、丁度いい箱も無い
完成した鶏小屋に移し、面倒はロゼたちに任せる
ーーーーー食堂で朝食ーーーーーー
「今日は兄ちゃんたち三人は角ウサギの討伐に行くから帰りは多分夕方だからな」
「留守は任せなさい」
マリーが実に頼もしい、クリス、エド、サロモの新兵たちもマリーの言う事はよく聞く
ほかの子供たちは食べ物で口がいっぱいで静かだがウンウン頷いて聞いてる
革の防具を着て、剣を挿し出発だ
「今日はアレンとパトリックが角ウサギ、俺がヒール草でいいな」
「異議なし」x2
道中の話題は最近の冒険者ギルドの事になった
「最初何やってんだろうと思ってたけど最近のレオンの功績は大きいよな」
「ああ、ギルド嬢とレオンの距離が近いせいでベテラン冒険者まで俺らにやさしいからな」
「カウンターから振り返って出ていく時のあれは傑作だったな、とうせんぼしたおっさんの事、ギルド嬢全員が立ち上がって睨みつけてたの」
パトリックが笑いながら
「ああ、あれな、意地悪してたおっさんがカウンター見渡して青ざめてるから振り返ったらデーモンロードが勢ぞろいしてるのかと思ったわ」
すこぶるレオンのギルド嬢受けがいいのは天性の才能なんだろう、それにしても
「ギルド嬢は敵に回したらヤバイな」X3
現場に到着した、レオンはすぐヒール草刈り始めたので依頼者は二人できたと思ってる
「また来てくれて助かるよ」
「じゃ早速始めますね」
会話もそこそこに木に登った、砦で練習してきたから獲物さえ来てくれれば何とかなるだろう
ボウガンに矢をセットして目を凝らす
草が揺れたのをパトリックは見逃さなかった、手であそこだとジェスチャーしてる
角しか見えない、バッサバッサと俺の方に近づいてきた、お前がやれとジェスチャー、息を止め引き金を引く、頭を貫通した
パトリックは小さく拍手の真似をする
二羽同時に来た時もお互い近い方を同時に仕留めた、なんだか楽しい
その後も1羽ずつ仕留めてから、急に角ウサギが来なくなった、もう結構な時間待ちぼうけだ
そろそろ限界か?
退屈過ぎるので依頼者の家の方を眺めているとレオンが歩いてきた
一度切り上げよう
「5羽まで順調だったけどパッタリ来なくなった」
「ヒール草は御覧の通りパンパンだ」
いっぱい入る方の背負い袋が重そうだった、今回初めての俺よりパトリックの判断に任せよう
「昼から粘って来るかな?前半だけだよな来たの」
「前回より期待できない気はするな、どうする?」
「そういう時は帰ろうぜ、十分だろう成果として」
「賛成」X3
依頼者に今日はもう駄目そうだから帰るというと「5羽も仕留めてくれたら十分だよ、これ持って行ってとお土産まで貰ってしまった」
パトリックが言い出す
「なあ、戻ったら罠作ってみない?砦の傍で試しても何か掛かるかもしれない」
「面白そうだな、落とし穴?」
「いや、砦の山側は木の根が邪魔で穴掘れないと思う」
パトリックが背負い袋のポケットから紐のような物を取り出す
「これね、ボアの腸で出来たガット、滅茶苦茶強いんだよ、これを立ち木に結んで木を弓の様にしならせる、ガットの先は輪にする、その手前に踏んだら外れるように地面につっかえ棒で固定する、獲物がつっかえ棒を踏んで外れると、輪に入れた獲物の足が木の戻ろうとする力で上に引っ張り上げられる」
「ん?」X2
「まあ実際見ないとピンとこないだろう、仕組み自体は凄く単純だ」
ガットを二人に回して手で引っ張ったり、歯で噛んでみたりしてからパトリックに返す
「確かに強いな、蔓草じゃこの強さは無いだろう、何かワクワクしてきたぞ」
「ボアでも、ちぎって逃げれないんじゃないか?」
「自分の腸で絶体絶命のピンチになるとか気の毒な話だな」
3人は駆け足でギルドに報告と報酬を受け取り、大急ぎで砦に戻った
「あれ?夕方じゃなかったの兄ちゃんたち」
新米剣士の三人が木柵の上から木剣と一緒に顔を出した
そんな事よりドアが開かない
「中から鍵かけてるのか?」
「うん、今開ける」X3
「これは安全管理が徹底されてるな、頼もしい限りだ」
「レオン隊長、部下も成長してるみたいで誇らしいな」
「勿論よ!」
食堂には誰も居なかった、角うさぎの肉を井戸水で冷やして、内臓だけ肉を包んでた葉っぱに包み直す、これが罠の餌だ
「どの辺がいいだろう?山に近い方がいいんだろうが水飲み場みたいなのがあればもっといいんだろうな」
「木の太さはどれぐらいがいいんだろう?」
「手で引っ張ってしなる程度だろ?高さにしても太さにしてもほどほどで折って逃げられない程度の強さ」
「あれぐらいか?」
パトリックが指さした木は根元が俺たちのひざ周りぐらい、手を真っすぐ上げた辺りで手首ぐらいだった
「まあ初挑戦だからな、これを基準に駄目なら次考えようぜ」
「邪魔な枝は要らないんだろ?切るぞ」
「いいよ切って、結ぶのは俺に任せて」
「ほうほう」
俺とレオンは見てる人だ
「そしてこっちは投げ輪のように輪を作って」
「ふむふむ」
あの輪で足を締めるんだな
「軽く穴を掘って留めに使う枝を引っ掛け易いようにこうして引っ掛ける」
「ああなるほどね」X2
「この枝が折れるか外れるかすると木がバイーーンと戻る時に獲物の足があると輪が足を締め上げると」
「口の説明じゃホントにピンと来なかったが仕組みはホントに簡単だな」
「じゃあ角うさぎの内臓置いて帰るとするか、瞬間を目撃したい気分だな」
食堂に戻ると料理長マリーがウサギシチューを作ってる
「三人の姿は見えなかったけど肉だけあったからシチューにしたよ」
年少が一人、鶏を抱えたままテーブルについている
「戻さないと駄目だって言ったでしょ?」と鶏を取り上げられて泣き出した
相変わらず賑やか過ぎる我が家の食卓だ
もっと賑やかになるのは少し後の話、寝る前の巡回と称してクリス、エド、サロモが木柵回廊を一周している時だった
木柵のあっちこっちを叩いてる何者かが居る!訓練兵たちがびっくりして報告に来たが十分聞こえていた
「鶏小屋も大騒ぎだな、パトリックとレオンは回廊から一周見てくれ、俺は鶏小屋の柵の隙間から外見てみる」
「分かった」x2
数は不明だが一匹や二匹じゃないだろう、鶏の匂いに釣られたのかまだ分からない
鶏小屋に入って木柵の隙間から外を覗いてみた、尋常じゃないパニック状態の鶏の反応からすると傍に居るはずだ
「ぎゃっ!」
変な声が出た、心臓が止まるかと思った、何かと目が合った、何も無ければ手が届く距離だ
「おーーい!俺の目の前になんか居る!目が合った!上に回ってくれ」
「おう!、相手は何だ?」
「分からん目しか見えん、まだ目が合った状態のままだ」
上をドカドカ走る音が近づいてきた!
「ああ居る!!ゴブリンだ!!」
俺と目があったままだったゴブリン、上から声が聞こえるので上を向いた
間違いないゴブリンだ!!
上が静かになったと思ったらボウガンの発射音が聞こえた
「ギュエッ」と気味の悪い声が目の前から聞こえる
やったのか?息を殺していると怒り狂ったような叫び声が突然聞こえた
丸太の隙間を剣を構えながら順番に見ていく、どこも剣が通るぐらいの隙間はある
「ビュン」
「ギャ」
ボウガンの発射音と気持ち悪い悲鳴ゴブリンはまだ居る,息を殺してすぐ向こうに、、、、
鶏小屋部分の隙間は全部見た、一度鶏小屋を出て柵に沿って外を見る
「!!!!」
目が合った瞬間、剣を刺してやった!ウギャっとゴブリンが声を上げる
「ビュン」
「ギャ!」
また一匹やった様だ、回廊に上がってみると二人が目を凝らして下を見てるが真っ暗だ、何も見えない
食堂に行って料理用の油を薪にかけ、たいまつにした
二人の元に戻って外を照らすと生きてるゴブリンは残ってなかった
「俺が照らすから一周見みよう、居たら射って」
「了解」
柵沿いは二人に任せた、少し離れた広い範囲は俺が見た
「やったのは合計4匹だな、魔石は明るくなってからでいいだろう」
三階から固唾を飲んで見つめてる
「ゴブリンは全部やった!もう大丈夫だ、トイレに行くやつは今の内だぞ」
何人か出てくる、鶏大丈夫?って声も聞こえる
三人で改めて思う
「やっぱり要塞は最強だな」
朝になるまで交代で見回りをした、至近距離でゴブリンの目を見た興奮で眠くなる事は無かった
「子供たちも図太なもんだな」
朝日に照らされたゴブリンの死体見ながらあーでもないこーでもないと喋ってる
剣持って表に行ってゴブリンの魔石と右耳を回収してから4匹を少し先の谷に落とす
「忘れてたけど罠も見に行こう」
「なんか木揺れたない?揺れてるよね?」
「こっちもゴブリンかな?」
「角うさぎだな、こいつら肉食だったっけ?」
「まあいいや、絞めて戻ろう」
もうみんな俺達三人を待っている
「遅くなって悪いね、また来るかもしれないから戸締りは必ず確認する事、分かった?」
「分かったよー」x17
「食べたら少し寝た方がいいな、どこから来たのか痕跡調べてみよう」
「角うさぎが無事だったのを見ると、真っすぐ山方向じゃないって事だな」
騒がしくて目を覚ました、どのぐらい寝たのだろう?レオンとパトリックが居ない
「兄ちゃんたちは?」
「一番上」
と天井を指さす、梯子を上って櫓に上がると周りを眺めながら二人は話してた
「何か分かった?」
「俺らが思うのはそっちの沢じゃないかと」
「なるほど、街道側は考えにくい、山から真っすぐじゃないとなると沢か」
「装備整えて行ってみるか?」
「そうだな、どうせ出るなら早い方がいい」
「水とパン、ロープ、火起こし道具にボウガンと剣、良し行くか」
三人で柵の外に出て沢から出てきた足跡を探す
パトリックが呼んでる
「あったぞこの足跡、ゴブリンの物だろ?」
「ああ、そうだな間違いない、行けるところまで行ってみよう」
「足跡を潰さないように左右どっちかの寄って歩こう」
途中までは小川の様になっていた沢もいつの間にか枯れていた
「ゴブリンは横に並んで歩く事は無いんだな、ずっと一列だ」
「アイツらって会話してるのかな?奇妙な声みたいなのは出してたけど」
結構歩いたんで水飲みながら一休みすることにした
「パトリック、沢は狭く深くなって左右は登れない崖の様になってきたよな、変じゃない?」
「目の前が崖になって前にも左右にも行けなくなるような気はするよな、滝みたいに、実際沢なんだから水がある時にはあるはずだ」
「岩肌も多くなってきたからもうすぐ分かるだろう」
そんな会話をしてからしばらく歩いた、岩だらけになってゴブリンの足跡はもう見えない、左右はとても上り下りできるような岩壁じゃない
「終点だな、言ってた通り、枯れた滝のような絶壁だ」
「進めないんだから戻ろう、帰りは逆方向から見るんだから何か見落としてるのかもしれない」
「あれか?」
パトリックが指さした先には洞窟の入り口っぽいものが見える、もうちょっと下ったところで振り返る、登ってた時の目線だ
「なるほど、こっち側から見ると見えないな」
「たいまつ炊いて少し見てみるか?住んでた痕跡か残ってるか、ゴブリンの気配でも感じたらすぐ引き返そう」
レオンがワクワクしてるのが分かる
「もしゴブリンが残っていれば接近戦になるからボウガンは置いていこう」
じゃあ入るぞ、片手が塞がってる俺は一方後ろの真ん中、レオンが右、パトリックが左だ
思った以上に幅がある
「足跡あるな、やっぱりここにいたゴブリンが夕べのゴブリンみたいだな」
「結構来たんじゃないか?最近鍛えてるとはいえ三人で大丈夫だろうか?」
「新ダンジョン発見なんてことはないよね?」
「それはないだろう、死んでも消えない野良ゴブリンだったからな」
パトリックが頭の高さに手を挙げた
(何か聞こえる、なんだろう?)
パトリックは首を傾げた
「もう少し行ってみる?多分なんか居るぞ」
レオンも俺も頷いた、緊張感がヤバい、のどが渇く
更に歩くと一瞬行き止まりに見えた、いや違う
更に進むと階段がある、降りた先は円い柱が何本かと扉が見える
そして音の原因、スケルトンが二体いる
ちょっと戻ろうと二人に合図する
「なあ、ここダンジョンじゃないか?階段に柱に扉だよ、しかも少し明るかったし」
「昨夜のゴブリンはなんだったんだろう?入口近辺を間借りしてただけ?」
「ボウガン置いてきて失敗だったな、俺取って来るわ、遠距離ならスケルトンぐらい訳ないだろ?階段の上って優位性もあるしアイツらの魔石を回収してダンジョンの証明にしよう」
「それでいい?」
「いいよ、二人で見張ってるわ」
俺は急いで出口に向かった、ボウガン2丁と矢筒。よし!
近くまで行くとゆっくり歩きボウガン2丁に矢をセットする
「ボウガンは二人が同時、剣が向かって来られた時の抑えでいいね?」
レオンが剣と自分を指さす、俺はパトリックにボウガンを渡した
二人並んで構える、二体とも狙える位置に居る、レオンの合図で射る
二体とも頭に命中、倒れないでこっちに歩いてくる
「おいおい!ほんとに?」
前のスケルトンが登り始めたぐらいで二体とも倒れた、光を放ちながら二体とも消え魔石だけが残った
「さっさと拾って帰ろうぜ」
「そうだな、Fランク三人じゃこれが限界だ!」
水を飲みながら入口まで戻って来た
「分かりにくいから石でも積んでおく」
「さあ、帰ろう!ギルドに報告するまでがダンジョンだ!」
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