道場
コッケッコッコー!!
「五月蠅いよ!脱走兵!!」
砦の時計は5時、2階まで起こしに来た脱走兵が五月蠅い、3階の女子部屋で
子供たちと寝てたプイも2階に降りてきた
ポロは回廊を悠々と散歩中、脱走兵は起きたのに満足したのか
3階に上がって行ってコッケコッコーと鳴いている
「おはよう!」「おはよう!」
ロゼは年少数人を連れて食堂に、相変わらず朝から元気だ
一番迷惑してるのは鶏屋組だろう、店閉めて帰って来るのは何時も10時
ぐらいだ、まだジャンさん達は寝てる
何時もの鍛錬と入浴も終わり一人早飯を食ったパトリックが運び屋の仕事で
砦を出ていく、背中には剣とボウガン、棒は鞍に差せるようにしてある
「いってらっしゃい!盗賊気を付けたな」
「おう!行ってくる」
最近、街道に盗賊が出たらしい、狙われたのは馬車だが馬でも油断はできない
一方、今日からマリーの仕事が始まる道場が開かれる日だ
ーーー食堂ーーー
「いただきます!」
鶏屋組は屋台の仕込みの時間に起きてくる様になった、そろそろ個室は必要か?
そんな話をしながら朝食を食べる
鹿肉を香草と塩コショウで焼いたものに目玉焼き、パンと骨のスープだ
白濁するまで骨を煮たスープは卵を産む牝鶏にもあげている
カニの殻同様、卵が丈夫になるからだ
「マリー達昼飯どうするの?」
「ああどうしようか?」
「作って持っていこうか?」
ロゼが言い出す、神殿はいいのかな?アルマさんは黙々と食べて何も言わない
それでもロゼの一言一句は毎日書いて残しているらしいので驚きだ
「じゃあ俺も一緒に見に行くよ」
俺も行く事に、朝から道場へ行くのはマリーとクリス、エド、サロモの
大会組は女帝マリーの一言に誰も逆らわない
「行ってきます」
屋台組、道場組が出て行った、年長者は事務所で帳簿書いたりしながら
売り上げの話になる、客一人当たり2,600ゼニー以上、酒がある分儲かる
夜だけなら3,000は楽に超えるが昼用の油で揚げた鶏を
パンで挟んだもの、”鶏サンド”を800ゼニーで売っている
「これでいいのかなあ、屋台の方が効率よくない?」
「そんなことないと思いますよ、屋台は狩りの人件費も考えたら同じぐらい
じゃないかな?鶏屋は手伝いも居てぱっと見の人件費多いですけどね」
セバスさんが言うとみんな納得する、そろそろ働きに応じた給金を出す話
も出てるので色々と難しい、苦手だ
「マリー達大丈夫かな?」
「冒険者ギルドからも人来るんでしょ?大丈夫じゃないの?」
「早めに出る事にするよ、ロゼ次第だけど」
神殿に行ったロゼはまだ戻る気配がない、他の子供たちは
ポロ、プイ、脱走兵に見張られながら芋堀してる
「子供たちの前では言えないけど、プイ美味そうだな」
ジャック兄ィが外を見て突然言い出す
「思ってても言っちゃダメだぞジャック、気持ちは分かるが」
皆が窓の外のプイを見る、奇跡のボアの子プイはイモを見つめてる
皆が我に返った頃、ロゼが戻って来た
「マリーのお昼貰って来た」
アルマさんが両手に袋持ってるが何だろう?お昼?
四角い箱にはいろんな料理が入ってるらしい、パンもある
「さっき来た神官が持ってきたの、道場は4人よね?」
「じゃあロゼとアルマさん、騎士団二人、俺の分も貰って行くわ」
アルマさんと話して料理の箱2つとパンを人数分持って道場に行く事にした
料理の箱は一個が大きい
ポロも連れて砦を出る事に、プイは人間が怖いらしく街には連れていけない
目立たない様に冒険者風の格好をした第一騎士団と5人で出発
「神殿は今日もいっぱい来てますね」
「国中から集まってますからね、最初の試練の薬取りに」
アルマさんがそう言うとロゼは笑ってる
「今日は8個作ったよ、一週間かけて馬車で持って帰るんだって」
「そうなの?マジックバック持ってないのかな?」
「神聖なものはマジックバックに入れられない。
っていうのが教会の人の考えみたいよ、みんな馬車で運んでるわ」
なるほどねえ、神に仕えるっていうのも大変なんだな
ロゼは最近読んだ絵本の話を始める、字も覚え絵本を読むのが好きなようだ
神殿のロゼの部屋は絵本とか服とかたくさん届いてる
なんて話を初めて聞いた
道場に着くと稽古の最中だった、リク先生の教え通り型を教えてる
等間隔の子供たちはマリー師範の見本通りに棒を振る
クリス、エド、サロモは歩きながら個別に足や手の動きを指摘してる
「そこはもっと早く!そうそう」
「はい!せんせい!」
エドがせんせい?ちょっと笑いそうになったが指導としてはよく出来てる
「みんなまだ硬いね」
「うん、初日だからね、先生も生徒も硬い」
敷地のほぼ真ん中にある道場に二階はない、ギルドの人が居たので一緒に一周回る、寝泊まりできる場所が細長い、広いガランとしたところに
釜土や調理台がある、まだ入る者は居ない、その並びに鶏小屋と倉庫
こちらもまだ空だ
道を挟んで隣には鉄柵が回された大きな木造の二階建てがある
「あの大きな屋敷は前に来た時は無かった気がしますが誰かの屋敷ですか?」
「あれ?聞いてませんか?こども園ですよ」
ギルドの人は知ってたみたいだ、シスターが大勢居る
少し寄って見てると何か来た、ロバだ、ポロとこども園のロバの目が合う、
駆け寄るポロ
「ポロ!ちょっとまった」
道を渡り鉄柵越しに挨拶を始めるロバ二頭、ロゼも寄って来た
「ポロのお友達だね」
ロゼが喜んでると見慣れたおじさんが玄関から出てきた
ベネディクト神父だ。やっぱり
「ばれちゃいましたね、こんにちは」
「こんにちは、内緒にしてましたね?」
「はい、早速子供たちがお世話になってます」
「今、稽古してるのはこども園の子ですか?」
「ええ、今稽古してるのは半分ぐらいですかね」
「ところでその恰好は?」
「神父は仮、園長が本当のお勤めと言う事です」
見慣れた神父の姿から商人がよく来てるような服にベネディクト神父は変わっていた、ちょっと違和感がある
急に道場が賑やかだ、稽古は終わったらしい
「園長先生!ただいま!」
「はいお帰り、手を洗うんですよ」「はーい」
道場から半分以上の子供たちが新しい屋敷に吸い込まれるように戻っていった
そう言う事か、なるほど納得
「後で寄りますね」
「はい、お待ちしてます」
道場に戻ると子供は残っていなかった、一角の部屋から声がする
「こっちこっち」
サロモに呼ばれて中に入ると机が二つ、長テーブルが二本並べて置いてあり
椅子が12あった
「お昼持ってきたよ、いっぱいある」
「おーっうまそー!」「高級な感じだな、肉とか海老とか色々入ってる!」
「みんなで食べよう」
「いただきます!」
ポロが角笛のような声で鳴いている
「ここから見えるところに移動してくるわ」
ポロの所に行くと寂しくて鳴いていたわけじゃない、こども園のロバに話しかけていた
「ここの方がいいか?向いのロバ見えるもな」
ポロが頷いている、向こうのロバもポロを見ているし、そのままでいいか
「ポロは隣のロバとお話し中だった」
「ああそれで鳴いてたのか」
「これ美味いな」「うん」
「向いのロバはメスですね」
「それでポロの落ち着きが無いんですね」
騎士団の人に言われポロがいつもと違う原因が分かった
「マリー先生、弟子たちはどうですか?」
「どうですかも初日だしね、ギルドの人は?」
「広場の屋台で飯にするって言ってたよ」
「足元はグラグラだし、体力が無さ過ぎかな」
「ここの管理は大丈夫なのかな?ギルドから三人だっけ?」
「それは大丈夫みたい、世話役の人が住み込みで来るらしいよ、ヒヨコは
来週ぐらいだね」
ここには小さな子は住まない、こども園があるからだ、テント村に住みながら
働いてる子供たちが徐々に移って来る予定
午前中は新市街の子供とこども園の子、午後は働いてる子の実戦向き稽古
「午後は責任重大だよね、冒険者になった途端死なれたら大変だ」
マリーも覚悟を決めたようだ
ポロの恋はどうなるのか?
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