挑戦者
コッケコッコー!
カンカンカン
砦の時計は5時、柵から逃げ出して一羽だけこっちに居る雄鶏とダニーに
起こされ朝の始まりだ
柔軟を始めると今日のイベントの話題で盛り上がる
屋台で隣の通称”棒おじさん”が棒術大会優勝者のマリーと戦いたい者が
居るから手合わせしてくれないか?って話になりマリーが
相手することになった
「マリーが負けたら仇は俺がとってやるよ」
エドがそんな事を言い出す
「残念だけど返り討ちにしてやるからエドの出番は無いよ!」
そんな話がひと段落すると走り込みだ、回廊階段8周
マリーお付きのおじさん三人は回廊の平らな所を6周ぐらい
俺一人逆回転ですれ違う者全員にヒールを掛けながら回る
「ヒール!」
何回掛けたか分からない、棒を持って回ってるから打ち込んでくる者も居る
「やあああ!」
カーン
「未熟者め!」
打ち込んできた棒を棒で払う、中々きついぞこれは、、、
終わると何時もの棒術型稽古と木剣の素振り、仕上げのヒールを全員に掛け
朝風呂だ、ポロは優雅に回廊を散歩してるがプイは風呂に入って来る
湯船に入れないが石鹸で洗われて気持ち良さそうなプイ
プイの硬い毛は拭くだけですぐ乾く
「プイ終わったよ」
パトリックに拭いてもらうとポロの元に走っていく
ロゼに「座って」と言われると大人しく座ってるプイは人を見れば
突進してくる野生のボアとは大違いだ
食堂では朝イチで窯に入れられた塊肉が香ばしい匂いを漂わせている
パン生地の仕込みは300個、ちぎって丸めて仕込みは終わり
「いただきます」
自分の食器は自分で洗い、屋台組はマジックバッグに荷物を入れて足早に
砦を出る、鶏料理の店は結局大浴場の隣になった
今は夕方から夜だけの営業だ、鶏が足りなくて昼から開けれない
「まだ来ないね」「俺も戦ってみたいな」「うん」
二番隊の面々もダンジョンより面白そうだと待ち構えている
回廊の上には第一騎士団の人、ポロ、プイが見てるので来たらすぐ分かる
「サンナは何処まで行ったかな?サンナの場合馬に乗るより走った方が
早いんじゃないの?」
レオンが冗談交じりで言うが流石に馬には勝てないだろうと笑っていると
通いで働いて貰ってるセバスさんと棒おじさん、挑戦者が来た
「おはようございます」
「おはよう、なるほどここで訓練してるんだね、強いわけだ」
「お初にお目にかかりますロベルト申します、対戦引き受けて下さり
感謝致します」
棒おじさんと一緒に来た同い年ぐらいのロベルトは平民じゃない所作だ
食堂で豆茶を飲んで一休みしてから手合わせする事に
「ロベルトさんは何処の人なんですか?」
「ベルガー辺境伯領です、今年が最後の子供の部棒術大会だったんですが
仕事で出れなかったのが心残りで来てしまいました」
そう答えるロベルトなる人物、ベルガー?聞いたことがある領地だな
アルマさんがロベルトに話しかける
「辺境伯はお元気ですか?暫くお会いしてないもので」
「はい、相変わらず元気だけが取り柄な漢ですから」
辺境伯を元気だけが取り柄なんて言える立場の人間と言えば察しがついた
ベルガーを名乗らないのはお忍びだからなのか?
レオン、パトリックも悟ったようだ、お貴族様だと
「彼は二連覇してましてな、今年も勝って三連覇達成する予定だったんだがね
要人が例の国に行ってるせいで欠場になったんだよ」
何だか話が見えてきた、キー兄ィが警護で行った先は例の国
何かあった時の為に国境に面したベルガー領の軍人は要塞に缶詰めなはず
「ふーん、ロベルトだっけ?ベルガー辺境伯領って遠いの?
王都しか行ったことないんだよね」
マリーは察していないのか?誰にでもため口のマリーは良く分からない
何だか急に不安になって来たぞ
「乗合馬車で三日ほどの距離です、オルレイン領と比べると田舎ですね」
「乗合馬車で来たの?三日じゃ高かったでしょ?」
察していないもが確定だ、自分の所の馬車か愛馬で来てるはず、多分
警護が居ないのも不自然な気がするが、それだけ強いのか?
「ねえ、まだ?早く見たい!!」
二番隊も空気が読めない、しょうがないか、、、
「じゃあ移動しますか、訓練所にステージはありますから」
「はい、お願いします」
ワイワイガヤガヤ五月蠅い砦の集団を引き連れて訓練所へ
大会と同じルールで勝負が始まる
ステージを囲むようにみんなが輪になって座り、審判は棒おじさん
「始め!」
ロベルトは左利きだな、棒の握りで分かる
激しい打ち合いが棒を使った足技へと目まぐるしく攻防が続く
今の所、互角に見えるがマリーが不利だろう、左利きは厄介だ
マリーが軽く捌いたはずの左はパワーで押し切ってくる、バランスを崩された
マリーが棒を突こうとした地面に着くか着かないかの一瞬のところをロベルトの棒で払われた
「勝負あり!」
膝を着いたマリーの負けだ、観客たちがガッカリしてる中
マリーにロベルトが手を差し出す
「マリーさん強いですね、何度も負けたと思う瞬間ありましたよ」
「まあ負けは負けだよ、あんた強いな」
このまま終わるのかと思ったら、そうはならずエド達が対戦を要求してる
と思ったらこっちに歩いて来る、まさか俺?
「アレンさん、手合わせ願えませんか?」
「俺ですか?どうしてまた」
「是非、お願いします」
これは断れないな、受けるしかない
「じゃあ一回だけ」
俺もキー兄ィの指名でリーダーになったのは伊達じゃないってところを
見せてやる!
(こいつは賊だ、マリーはやられた、このままじゃ全員やられる、暗示だ
イメージだ、ここで俺がやらなきゃ、、、)
一瞬で決めてやる!俺に利き手はない、両利きだ、バレたら通用しない
「始め!」
ワザと右利き持ちから左利き持ちにしながら一気に踏み込む
案の定、左から来た!中段だ、右側を伸ばし棒を受ける、受けたら滑らせ
そのままわき腹に打ち込む、まだ終わらない
左側の短い棒を地面に着け、渾身の力で右足を振る
「ぐっ」
鈍い音と共にロベルトは飛んだ
「勝負あり!」
おお!勝てたぞ
「ヒール!」
「大丈夫ですか?力一杯蹴っちゃいましたけど」
「はい、大丈夫です、やはり御強いですね」
大歓声と言うほどじゃないが沸いている、アレン兄ィって実は強いのか?
意外だよな、外の人に勝つなんてっていう失礼な事を言ってるのは二番隊だ
子供たちはそれぞれ練習試合が始まった
「あれはひっかけで右利きなんですか?」
「ああ、あれですか?、握りを変えるのは良く使いますよ、両利きなんで」
「なるほど、両利きですか、それは予想できませんでしたね、
次は頑張りますから」
次?まあいいや、とりあえず勝てたしダニーやアル兄ィも親指立てて笑ってる
「あの三人を鍛えてやってくれませんか?二位と三位ですよ」
「今年は決着がつかなくて3位が二人でしたね、喜んで」
三人はあっという間に伸びている、手も足も出ない二番隊
両利きなのがばれた以上、次からは難しい対戦になるだろう
「ヒール!」
その後は練習試合なのか鍛錬なのか分からない状態で一時間ぐらい
終わるとマリーがロベルトを連れて砦の中を案内していた
「マリーさんは本当に強いね、お前さんもだけど」
「うちは鍛錬がきついですからね、リク先生の教え方も上手だったし」
「ここは丁度いいな、マリーさんが道場やりたいならわしが許可するよ」
「マリーがですか?優勝者って違うんですね」
「まあね、道場やりたくなったらいつでもおいで」
通称、棒おじさんと話終わった後は外で皆で食事をした後
ロベルトは棒おじさんと帰って行った
胸に手を当て二人を見送るマリーの顔が女の顔になっている
見なかった事にしよう
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