魔道具
砦の時計は12時と半分
昨日言われた通り、エリアスに残ってもらいジャンさんとマリー、俺の4人
食堂で公爵が来るのを待っている
年少達は食事が終わり二階で昼寝中、ポロは回廊から外を監視してる
「公爵って王都の屋敷に居る方が多いって話だけど帰ってたんだね」
「拡張工事でも見に来たのかな?エリアスの魔法に興味があるって事は
こども園の風呂でも見たんだろう?」
あらかたの予想は当たっていた
ポロが扉の上に移動を始めた、かんぬきを落としに行かないで、真上から見降ろす時は客だ
「どうやら来たみたいだね、アタシ前回会ってないから顔だけ拝まないとね」
「世話になってる領主様だからね、失礼な物言いは気をつけろよ」
くぎを刺しておかないと心配だ、マリーは昼寝してくれてていいのに
カンカンカン
鐘が鳴った、小さい方の扉を開けると公爵の馬車と馬が4頭
騎士達は周りを警戒してる
ジャンさんは膝を着き、頭を下げている、流石、大人のジャンさんは作法をわきまえてる様だ
真似しようかと腰を下ろしたところを止められる
「ああ、いいよいいよ、そういう堅苦しいのは必要ない」
「ご無沙汰しております、お元気そうで何よりです」
「突然押しかけて、すまないね、こっちの彼が土魔法の?」
「はい、エリアスと言います」
「そうか君か」
「立ち話も何なので食堂へどうぞ、馬車と馬は入れますか?」
「いやいいよ、外で待たせるから」
こうしてオルレイン公爵と側近の二人とセバスさんが食堂に移動する
「豆茶しかありませんがどうぞ」
マリーがお茶を出す、今の所マリーは大人しい、大人になったもんだ
「昨日ね、子供園に行ったんだけど、見事な風呂があったものだから
ベネディクト神父から、根掘り葉掘り聞いて、使いを出したって次第だ、
短時間であれだけの物が作れる、優秀な魔法使いに会いたくてね」
「ここにも僕の作った風呂ありますけど、あとでご覧になりますか?」
「是非見せてもらおうかな?そこの窯も君の作品なんだろう?」
「ハイ、料理用の窯も僕が作りました」
「君の才能を見込んで頼みたい工事があるんだが」
「おい、あれを」「ハイ」
側近がカバンから何やら出してきた
「新市街地の見取り図がこれだ、広場がここで君たちの屋台がこれだな
ここから宿屋街に小路があってここは私の抑えてる土地だ」
皆でのぞき込んでるが、屋台やってるのもバレてるみたいだな
「で、これをここに作りたいんだよ、何を作ろうか考えてはいたんだが
風呂がいいだろうという事になって一晩で描かせた」
見取り図の上にもう一枚乗せられた物は大きな風呂の絵だ
「これをエリアス殿の手で完成させて貰えないか?」
「結構大きいですね、この小屋の様なのは何ですか?」
「それは蒸し風呂でな、木で作る必要があるから気にしなくていい」
「木だけに?」
マリーが黙っていられなかった
「ハハハ、面白い事言うね」
公爵は喜んでる、これはセーフだ
「すぐ作れますけど、今作りに行きましょうか?」
さすがエリアスだ、実に頼もしい
「引き受けてくれるんだね?それが水を汲み上げる魔道具と、湯を沸かす魔道具がまだなんだ、特別製なんでね」
「報酬なんだが、君たちはダンジョン配当もほとんど手を付けてないんだろ?物の方がいいと思ったから、ここにも湯沸かし、水汲みの魔道具と、あとは部屋を暖める魔道具って事でよいかな?」
エリアスがこっち向いてる
「やるのはエリアスなんだからエリアスが決めるんだよ」
「はい、報酬も有り難い物ばかりなので喜んでお引き受けします」
「これからは魔道具が、庶民の手の届くものになっていく、その為にもダンジョンの魔石を卸してくれる冒険者の、居心地を考えるのも領主の務めだと思ってね、まだまだ贅沢品のお風呂に毎日入れるのはいいだろう?」
「ここへ来てからお風呂に入る様になりましたが、もう水浴びには戻れませんね」
「じゃあ風呂でも見せて貰って失礼する事にしよう」
こうして公爵ご一行は帰って行った
「水汲みと薪集めが無くなるのはいいね、部屋も暖かくなるとか」
「冷蔵庫と一緒で魔石入れるだけで使えるんだろ?楽だよな」
「なんで領主様と顔見知りなんだい?昨日から驚かされてばかりなんだが」
「ここに住まわせてくれてるベネディクト神父と領主が近い関係みたいなんだよね、そんな縁でお世話になってます」
「なるほどねえ、子供たちも起きてきたからトウモロコシの続きでもやるよ」
「はい、こき使ってるみたいで申し訳ないです」
「いやいや楽しいよ、簡単な作業だし」
ジャンさんには柵の外で育てたトウモロコシを干した物を、潰して鶏のエサ作りを子供たちとやって貰ってる
ーーー1週間後ーーー
新市街地の工事現場に来ている
アル兄ィパーティーと一番隊に二番隊、ぞろぞろ見物に来た
「これが汲み上げと沸かす魔道具か?」
「そんなに多きものじゃないんだな」「軽かったらポロの荷車にも乗りそうな大きさだな」
気楽な外野は魔道具を眺めてるが、エリアスは打ち合わせ中だ
「ストーンウォール!」
杭で六角形に張られた内側がツルツルの石の床になった、ふむふむ、一か所穴がある、排水口か?
数人が手早く二回り小さい六角形を墨で書いていく、厚さも手で指定してるな
我ら見物人は少し引いて好き勝手な事言ってる、野次馬だ
「結構大きいな、50人は入れるんじゃないか?」
「うん、こんな大きかったら泳げるな」
高さは水平を見ながら棒に印を入れているが、そこまで器用なこと出来るのかな?
「ストーンウォール!」
「ぴったりだな、しかも白い石だぞ!」
これには他の工事関係者も驚いている、いつの間にか見物人も増えてきた
「ストーンウォール!」
男女の仕切り壁が風呂と同じ色で立ち上がる、潜って侵入できない様に湯舟の中は格子状だ
排水口に蓋がされると魔道具を動かす
スポンスポン音がしたかと思ったら湯気を上げながらお湯が出てきた
「おおおおお!!!」
見物人も声が上がるが
「ストーンウォール!」
外壁が立ち上がり何も見えなくなった、これも六角形だ
「ストーンウォール!」
かすかにしか聞こえない、が内側に傾いた壁が追加される
「・・・・・」
聞こえないけど、また壁が延びる、更に内側に傾いている、ふむふむ
どうなってんだろう?風呂から離れて見たらカクカクした半円球をしている
天辺は少し平らだ、開放なのか湯気が上がってるのが見える
皆を呼ぶと形に驚いている
「こんな形の建物見た事無いな」
「これは見る人の興味を引くわ、何か分からないもん」
「やっぱりエリアスは凄いやつなんだな」 「うん」
近くに戻って中を覗き込むとやっぱり湯舟の真上は開いていた
もうほとんど完成してる
脱衣スペースとカウンターがあり部屋も一つ、取って付けたように六角形に出っ張ってる格好で付けられた
「あの馬車オルレイン公爵じゃない?」
野次馬達は胸に手を当て頭を下げている
「遠くからでもよく目立っているよ、絵の通りだ」
いつもよりご機嫌な公爵は皆に手を上げながら中に入っていく
「君らも入っておいでよ」
と公爵に呼ばれ後に続く、湯舟に半分入ったお湯に手を付け公爵も側近もテンションが高い
「エリアスの土魔法は反則級だな」
「もう営業できるんじゃないか」
脱衣所には籠が並べられ、桶も洗い場に並べられた
「湯加減はどうだろ?」
「ちょうどいいかと思います」
「新市街の目玉が出来たな」
リチャード・オルレイン公爵大満足の様だ
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