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串焼き

冒険者登録をしてから10日目の朝が来た

初日に稼げたのが嘘のように金貨を見ることはあれ以来なかった


「おい起きろよ、お前ら!」


レオンとパトリックの寝起きの悪さは平常運転だった


「うーーん」

「あーーーそれ俺の串焼き、、、、むにゃむにゃ」


最近ちょっとした変化があった、ぱっつん前髪のマリーが料理をするようになった事、もう一つはギルドでの事だ


17人の子供たち、そして俺達三人、毎日の食費が大変なので小麦粉を大袋で買ってきて水で練ってフライパンで焼いて食べる、そのパンのようなものの料理人がマリーなのである、パンを買うの同じ金額で10倍の量になった

これで三食腹だけは膨れさせて、ひもじい思いをすることも無くなった


「マリー、今日もご苦労様、すっかりお姉さんだな」


フンムと胸を張り大威張りだ、照れたりするようなタイプではないのは知ってるがマリー姉さんと呼ばれることも増えたので自覚が出てきたと解釈しておこう、調子に乗っているわけではないと


「今日はベーコンを小さく切って入れてみたんだよね、塩気もあるから食べやすいと思うんだ」


その様子を見守る眠気より食い気が勝った子供たちがベーコンの香ばしい匂いに鼻をクンクンしている

左から5才の男児クリス、7才の男児エド、6才の男児サロモ、そして蟻ウォッチャーの女児ロゼの面々だ


本当の誕生が何時なのか分かっている者は、ここには一人もいない、ベネディクト神父の見立てとここに来た月が誕生月だ、食量が乏しくなる冬の頃にここに来るものが多い


フライパンの形をしたパンは次々焼き上がる、小さなドラゴンが次々巣から出てくると何時もの賑やかな一日の始まりだ


「みんな、おはよう、顔洗って来いよ」

「おはよう、分かってるよお」


全員揃うまではまだまだかかりそうだが、レオンとパトリックは寝ぼけているがぎりぎり起きている状態だ


「今日は昨日受注した角ウサギの討伐なのお前ら覚えてる?、早めに出たいんだけど?」


特にしゃっきりしないパトリックに聞いてみた


「角ウサギは、、、俺食ってないと思うけど、、、、」


駄目だこりゃ!寝不足なのかな?


「とりあえず顔洗って来いよ!ぼーっとしてないで」

「そうだそうだ、顔洗って来い」


子供たちも真似を始める、パトリック兄ィの威厳はどこへ


そんなこんなで朝食と洗い物が終わったので出発する、畑を荒らす角うさぎは小さい上にすばしっこいので骨の折れるクエストで人気が無い、角は風邪薬、革は服や手袋など、肉も美味しいのだが、当然逃げられる事も多いので全頭単位の討伐ではなく、一羽いくらの仕事、多ければ多いほど望ましいというのが依頼する側のだいたいの希望だ

そして今日の秘密兵器は弓が使えなくても誰でも使えるボウガンなるものを2丁だけ用意した、銅3x2の出費は痛かった

一丁足りないが、一人は高いところに登り見張り番だ


依頼者の家に着いた、畑の多い集落の一番山側に位置するこの農家が角うさぎの被害を一件で引き受けてる感じだ、一向に受注されないから来てくれただけで嬉しいと言ってる、それじゃあこっちは嬉しくない、何としても5羽ぐらいは仕留めたいところだ、肉を食わせないとならない子供たちが待っている


畑はそんなに広くないが角ウサギの好きそうな野菜ばかりがあるとパトリックは手で庇を作り、畑の奥の方まで見渡している


「畑の奥はすぐ森だ、高いところから獲物を見つけても下に居たんじゃ草が邪魔で射れないだろう、どうする?」


俺の問いにレオンの方を見ると


「木の上から射るしかないんじゃないか?畑だとこっちの姿もすぐ見つかるし」


まあそうだろうな、上手くいくかは分からないが木の上で待ち伏せる事にするとして一人余るな


「じゃあ木の上から狙うのは二人に任せる、ヒール草の群生地と似てる気がする所がちょっと手前にあったから探して来るよ、昼には一度戻る」


「あんまり奥に入るなよ、昼とは言わず無さそうならすぐ戻れ」


そんな言葉とともに木に登り始めてる二人に手だけ挙げて見せた

背の高い草も無いこんな感じの所だったよな、群生地は、と咄嗟の場合に備えて右手に剣を持ち辺りを見渡す


「おお!こりゃラッキー!」小さめだが声が漏れた、アル兄ィに教えてもらったところより街から近い、半分ぐらいの距離だろうか?角ウサギの依頼しか無いから冒険者も来ないのが幸いだったか?


長剣は仕舞い短剣で刈りまくった、昼までに背負い袋満タンにして戻って。例の大きくなる背負い袋に詰めれば久しぶりの金2だ、がぜん張り切った

背負い袋から出して木に吊るしておいたパンを取り、依頼人の家の傍まで行くと二人とも木から降りていた


「アレンの方も収穫アリだったようだな、袋が重そうだ」


嬉しそうに言うレオンに近づくにつれ角ウサギが見えてきた、4羽もある、上々なんじゃないだろうか?


「こっちもばっちりだ、ヒール草の群生地を見つけた、久しぶりに金貨確定だな」


依頼主のおじさんが炒った豆で入れたお茶をくれた、こっちに来る用事も新たに出来たからついでに角ウサギの仕事受けてもいいよ、月に一度は来れるだろうというと手を握られた

(そんなに感謝されてもヒール草のついでなんだが)


パンも食べ終わったので仕事再開だ、角ウサギは後二羽も買ってくれれば十分だと言われ気が楽になった

討伐証明は角だけでもいいので依頼者のオジサンの好意に甘え、解体をお願いすることで午後の部が始まった


俺はレオンの普通な方の背負い袋に代えて薬草採取、あんまり取り過ぎない方がいいという話で落ち着いたからだ


今で半分くらいかって思ってる頃、レオンとパトリックが角ウサギを6羽掲げながら歩いてきた


「これは広いな、全部刈ったら袋8つ分はあるんじゃないか?」


パトリックの見立てだ、ここだけ見ればね


「ここだけならな、あそこで終わりじゃないんだよ」


指を指さした方は群生地は終わってるかのように見える、一段低くなってまだ続いてた


「ちょっと行ってみようぜ、ついて来いよ!」


「おいおい、なんだかワクワクするぞ!アレン、もったいぶるなよ!」


「自分の目で見た方がいいだろう、納得も出来る」


三人は一段下を見渡せるところまできた、あっけにとられてる


「アレン、お前はただ物じゃないと思ってたよ、金二桁余裕だろ」


上機嫌になったパトリックとレオンは、帰りの足取りが軽かったのは言うまでもない


「なあ皆、しばらくぶりに屋台街の串焼き食いたくないか?もちろん金も払ってさ」


言い出したのは串焼きの夢を見ていたパトリックだった


「もう10日行ってないからな、ゴブリントリオは冒険者に討伐されたと思ってるに違いない、なあアレンあの親父は焼いた串焼きわざと後ろに置いてトイレに行ってたんだよな?」


レオンも気がついていたようだ


「そうだよ、あの事件の直後からだからな」


あの事件と言った途端、悲しみがこみ上げる、二人が俯くと事件を知らないパトリックは不思議そうな顔をしている

レオンも一生忘れられないだろうな、あんな思い二度としたくない


ギルドに帰るまで、俺もレオンも無言になり一言も喋らなかった、いや喋れなかった

報酬は一人銅3づつ受け取り残りは預け入れにした、ウサギの肉はギルドに渡さず持って帰る


ギルドの建物を出て左に少し進むと商業区で屋台街が軒を連ねる、商業ギルドや大きな商会等は屋台街の向こうにある

ギルドでも無言でギルド嬢に心配されてたレオンが口を開く


「たった10日でも随分久しぶりに来た気がするな、、、、」


「ああ、俺たちの食糧庫に帰って来たぜ」


屋台の裏を歩いていくのが当たり前だった過去と違って屋台通りを普通にあるくのは新鮮だ

隣の八百屋のおばさんが俺たちに指をさすと串焼き屋の親父が俺たちに気が付いた、俺たちは小さく頭を下げる、なんだかばつが悪い


おやじはものすごい勢いで走って来た


「おまえら無事だったのか?なんで来なく、、、なった?」


おやじはボロボロと涙を流し泣き出した、周りに居る買い物客も「何事だ?」と言った感じで視線を向けてくる

俺たちは固まったままだった、なぜか涙が流れる


「あんたらゴブリントリオが来なくなってずーーーっと、心配してたんだよ」


串焼き屋の隣の八百屋のおばさんだ、不名誉な名前の名づけ親が見つかった気がする

おやじが少し落ち着いたのか喋り出す


「アイツが野犬にやられる前の日にな、、、俺は、、棒で叩いちまったんだ、、チビを守って、、、野犬に殺された、、アイツを、、」


アイツとはアル兄ィの相棒、ダニーの事だ、年少二人連れて散歩に出ていたダニーは運悪く野犬3頭に襲われた、大人たちは動けなかった

ダニーだけが子供たちを庇い野犬に襲われた、子供に向かう一頭を捕まえたダニーをほかの二頭が許すわけがない

ほうきやスコップを取りに戻った大人が駆け付けた時には手遅れだった


その時の記憶と来なくなった俺たちを重ね、悪い想像ばかりしていたのだろう


荷車に乗せたダニーをアル兄ィが曳き、俺とレオンが後ろから押しベネディクト神父と一緒に墓に埋めた

スラムからアル兄ィが消えたのはその次の日だった、パトリックがスラムに来る半年ぐらい前の話だ


串焼き屋のおやじは後悔していたらしい、スラムの子を見ると焼いた串焼きを置きっぱなしに居なくなった、俺たちは、それに甘えさせてもらってた


レオンが口を開く


「俺たち3人は冒険者になって稼げるようになった、これからはお客さんで来るよ」


年少組のような泣き方をしてたおやじも何とか収まった様だ、気がついたら俺は親父の背中を摩ってた

スラムに戻り、一人一本食べる串焼きは凄く美味しかった


「明日皆でダニー兄さんの墓参りに行くぞー!」


「おーー!」(全員)

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