パトリックの計画
朝から賑やかだ
俺アレンとレオン、パトリックは廃墟の一階で寝ている、住んでいるのに廃墟というのもおかしな話だが
年長者が一階、二階と三階は年少組の部屋割りだからどうしても広場の声が凄く近い、良からぬ者から守るのも年長組の使命だから俺がここに来た頃は三階だった
パトリックは「むにゃむにゃ、、」いいながら騒音の中でも夢の中だ
レオンの寝床はもぬけの殻だった、今日は嵐になるかもしれない
広場に出るとレオンが昨日の肉の残りでスープを作っていた、子供たちはその様子を食い入るように見つめながら口だけは忙しかった
「みんな、おはよう!昨日の肉は美味かったか?」
そう聞く俺に子供たちは首がもげるんじゃないかという勢いで大きく何度もうなずいていた、なんでこんなにシンクロするのだろう?
「起きたかアレン、飯も出来たし寝てるのはパトリックだけだぞ」
そういうレオンは何かたくましくなったような気がする、大人になったというか、なんだろう?
「聞いたかお前ら!パトリック兄ちゃん起こさないと久しぶりの朝飯にはありつけないぞ!起こしてくるんだ!」
そういうと子供たちはパトリックめがけて突進していった
「うげっイタイイタイ、ちょっとまてよお前ら、、、まじそこやめて、、、」
無事起きれたようだ、子供たちに手足を持たれパトリックが引きずられて広場まで運ばれてきた
「み、み、みんなおはよう、、痛たたた」
塩コショウと麦、肉の入ったスープは凄くおいしかった、パンも一人一枚食べれた
腹が落ち着いた頃にレオンが素振りを始めた、子供たちもちょろちょろしているので抜かないで鞘ごと振っている、弟分たちは剣が珍しいのか少し離れて膝を抱えながら見つめている
「アレン、ちょといい?これからの話がしたいんだけど?」
パトリックが何か話があるらしい、悪い話ではないであろうことは表情で分かる
「昨日は結構稼げたじゃん、たまたま運が良かっただけかもしれないけど、それで思ったんだけどお金貯めてさ、街の外で農場付きの家でも買ってみんなで引っ越さないか?冒険者になったから俺たちは社会人なんだし」
ああそういう事か、パトリックがここに来たのは7才ぐらいの事、普通の生活がなんなのか記憶にある、俺の記憶にあるのはここでの生活だけだ、ここ以下もここ以上も知らない
「正直にいうと、ここでの暮らししか知らない俺は考えたことも無かったな、先の事も考えた事ないし考える余裕も無かった」
「今すぐどうこうって話でもないんだ、弟分や妹分でも野菜作ったり、余裕が出来ればヤギも飼ってチーズを屋台で売ったりしたら楽しいかなって思ったんだ生活も安定するだろうし」
「なるほどねえ、考えたことも無かったがここよりは楽しそうだな」
「でしょ?話せてよかったよレオンにも後で話してみようと思うんだよね」
俺は少し昼寝するといい、部屋で考える事にした
といっても年少組は容赦なく体の上に乗って来たり顔をいじってきたりするのだが、、、
ギルドではFランクから最低1年は昇格は認められない規則だ、Eランクでダンジョンの浅い階層から潜れるようになる、狩りと違って空振りは無いので確実に稼げる
ただ剣とか装備の消耗も激しくなる、そんなに都合のいい話ばかりじゃない
「あの人に相談してみるか、、、ちょと苦手なんだよなあ、、、」
ちょっと寝てしまったらしい
腹の上に二人、足元にも二人、子供たちが寝てる
起こさない様に寝床を出ると、皆色んな所で昼寝していた
レオンは起きていた、パトリックは昨日のお金で夕飯の買い出し、お伴は三人連れて行ったとの事
「なあアレン、パトリックの言ってた農場、俺はいいと思うぞ、俺がギルドのお姉さんと結婚してみんな養子にしようかな?お前も俺の息子になるか?」
「そっか、お前も賛成か、俺も悪くないと思ってる、でちょっと相談したい人が居るからちょっと出かけてくる」
半分ふざけて言う時でもレオンは話の本筋は外さない、レオンも俺と同じここ以外を知らない一人だ
「おい!手ぶらで出かけるのか?もう冒険者なんだから長剣は差して行けよ」
言われて取りに戻る、やっぱりそんなものなのかな?
表通りに出てギルドがある方向とは反対の方に向かう、途中騎士団の姿が目に入る、何度かお世話になったことがあるが干し肉貰って返されるのがお約束のような感じだ、世間体的には捕まえるが境遇に同情されることの方が多い
正面には鉄の門、白い塀に囲まれた中には花壇があり、いろんな色の花が咲いてる、両開きのドアを開け中に入ると長椅子が左右にあり真ん中が大人二人手を広げたぐらいの幅で椅子はない
一番奥にはここの神父でベネディクト神父が居た
「これはこれは、珍しい客人ですな、おや?冒険者になられたのですか?」
「神父様、お久しぶりです、ちょっと相談したい事があるので先に祷りをささげてもよろしいでしょうか?」
「はい、神もお喜びでしょう」
両手の指を交差させて握り、左ひざは着いて右ひざは立てるのがお決まりである、ついでだから何か頼もうか?そうだな、神様私は冒険者になりました。
親の無い子の面倒も見るのに神聖魔法があればなと思っております、何卒
立ち上がり後ろに居るベネディクトと向き合う
「実は今朝の話なのですがパトリックがみんなで農場付きの家に引っ越したいと言い出しましてレオンも僕も賛成しました、農場付きの家を買うのはスラム育ちの僕らでも可能なのでしょうか?」
「私は予てからあなた達三人は他の子と違うと思っていました、他の子達は働ける年齢になるとスラムを皆、後にしてしまうのです、つらい記憶の集大成のような場所ですからね」
「いいと思いますよ、私も全力で応援します、物件は領主様にお願いしてみることにします、ただこれも聞き届け頂けるかも運、ちょうどいい物件が見つかるかも運ですので期待しないでくださいね、信徒には農民も多いので色々聞いてみますよ」
あれ?こんなにいい人だったかな?何か違う人のように感じる、不思議だ
「なにか余計な仕事増やしちゃうみたいで申し訳ないです、昨日から冒険者になったのでこれからお金も貯めなきゃならないので急ぎではありませんので」
「ああそうなんですか?でもただで入れるならすぐにでも引っ越したいですよね?」
今日はグイグイ来るな、この神父
「ええまあ、神父様に相談してよかったです、それでは」
帰ろうとすると神父に呼び止められた、パン屋の信徒が届けたパンを子供らに食べさせてやりなさいと両手いっぱい持たされた
深々と頭を下げ教会を後にした
領主って言ってたよな、結構上から数えた方が早いくらい高位のお貴族様だったと思うが貴族と教会って近い関係なのかな?まあいいや、パンもいっぱい貰ったし行って良かった
スラムに戻るとパトリックも戻っていた
何やら全員釜土を中心に輪になっている
「おおアレンお帰り、昨日の古道具屋さんあっただろ?鋳物のフライパンが目に付いててな、さっき買って来たんだ、焼いてみたくて卵とベーコンも買ってきたから夕飯にしようぜ」
網で焼くだけ、鍋で煮るだけの食生活にフライパンが加わるのは大きい、パンも軽く焼いた方が美味しいに決まってる
「教会行ったらさ、お土産にパン貰ったから丁度いいな、急に食べ物が良くなったからお前らもうれしいだろ?」
子供たちは満面の笑みである、こういう生活が普通の生活ってやつなのかな?
ああだこうだ大騒ぎしながら人数分のベーコンエッグは出来上がった、パンの方はちょっと贅沢な感じのパンだったので温めなくてもしっとりしていておいしい、明日の朝もパンがあるから二日連続朝食べれそうだ
ギルドに行って仕事してくる話は決まってるので水浴びしたら早めに寝る事にする
卵ってこんなに美味しかったっけ?鶏の世話なら年少組でも出来そうだな
そんなことを考えている内に眠り朝になっていた
ねぼすけコンビはまだ寝ているが顔洗って歯を磨いた
部屋に戻ると珍しい事に年少組のロゼリアが二人を起こそうと頑張っている、普段無口で蟻を数えてる不思議な子だ、髪は綺麗な金髪で顔だちも悪くないんだが左の肩から左肘まで火傷の跡が残っている
「ううーん、ロゼまだ夜だよ」
「ああ、俺のベーコン、、、、」
二人はいつもの調子でなかなか起きない、困ったもんだ
対野犬用の木の棒で軽く叩いて起こした、しょうがない兄ィちゃん達は放っておいて飯にしようねと言い、ロゼの手を引いて広場でパンを焼く準備をしてると芋虫の様に二人が顔を出した
「みんな揃ったね、おはよう!実はみんなで住む農場付きの家に引っ越そうって計画があるんだけどみんなどうかな?」
「えーーーつ!!」Xいっぱい
ここもそんなに悪くないという子も居るが農場では野菜作ったり鶏飼ったりできると聞くとみんな大喜びだ
「いつ引っ越すの?今からでもいいけど?」「鶏ってなあに?」「のうじょう?」
みんな大騒ぎだが今すぐの話じゃないし何年先になるかも分からないというと急に静かになった、これは頑張るしかあるまい、言い出しっぺのパトリック、レオンも本気でやる気になったようだ
洗い物も終わり、身支度もして三人で出発する
弁当はパンとベーコンを二切れづつ、十分な食事だ
「そういやアレン、珍しく寝言が多かったな」
「ああそうそう、神様とか信じてますとかまるで誰かと会話してるみたいだった」
記憶にないな、レオンだけなら何時もの事だけどパトリックまで覚えてるなら寝言は本当なのだろう、全然記憶にはないが
「ああ昨日教会行ったから、そんな夢見てたのかな?全然覚えてないわ」
「まあ、それはいいとして子供たちは農場付きの家にあんなに食いつくとは思わなかったな、ちょっと意外」
パトリックが朝の話を始める
「そうだな、考えてみたら日当たりも悪いしな、いたるところボロボロだし井戸は無いから雨水沸かして飲むような生活だしな」
レオンも今更ながら自分たちの生活レベルの低さに気が付いたらしい
「薬草って何日ぐらいで伸びるんだろう?あそこは刈りまくったからしばらく無理だよな?」
パトリックが言うとレオンがすかさずギルドのお姉さんに俺が聞いておいてやるよと言い出す始末、やれやれ困ったもんだ
そうこうしてる内に冒険者ギルドに着いた、Fランクで出来て良さげなクエストを探す為掲示板を見ているとレオンが居ない、カウンターの方を見るとギルド嬢と喋ってる
「おいアレンこれ見てみろよ、金30だってよ、なになに体の右半分が不自由になる病、完治が条件だとさ」
パトリックに言われ見ると結構古くから張り出されてるみたいで黄ばんでる
「ターナーさんだっけ?アル兄ィのところの、魔術師でも病気となるとまた別なんだろうな」
そんな会話をしているとレオンが戻って来た
「ヒール草は最低でも2週間だそうだ、一月が大体いい頃合いらしい、で彼女はアーシャ、16才でギルドに勤めだして二年目だそうだ」
「なるほどな、三週目で行ってみようか?じゃあこの毒消しのキノコ、これなんてどうだ?」
後半のくだりは一切スルーすることにした
「ああそれか?結構近いし洞窟の中で生えてるキノコはそれしかないので間違いようが無いって俺ら向きだよな」
パトリックもレオンの後半のくだりは一切触れないようだ
「じゃあ決まりだな、俺がカウンター行ってくるぜ、もっと詳しい地図もあればいいのにな」
レオンがウキウキでクエストのカウンターに向かうのを冷ややかな目で見送る二人だった
カウンターで振り返りレオンが手招きしてる、そうだ全員で受注しないと実績にならないんだった
「レオン、このメンバーで全員?」
ギルド嬢がレオンを名前で呼んでる!!俺とパトリックは口を開け目が点になっていた
依頼人はこのかごに一つあればいいそうなので少し山になるぐらいで採りすぎるなと注意される
「レオンと二人も気を付けて行ってきてね!」
ギルド嬢の扱いに差を感じつつ、さっさとギルドを後にした
「こんなかご一つで銀1銅2、商人や役人が言うところの7000ゼニーか、薬師の依頼なのかな?」
パトリックがヒール草との値段の違いは何なのか考え中のようだ、そして今日の稼ぎが少ない事も
「今日の晩は卵とチーズでどうだ?フライパンで焼いてさ、パンが俺たちが帰るまで無事だったらの話だけど」
レオンが晩飯の心配してる、まだ半分あったパンは昼でさらに半分、俺たちが帰るまでアイツら我慢できるだろうか?
「パンと卵とチーズで帰りの買い物は決定だな、俺の予想じゃ俺達三人分に三つだけ残してるはず」
パトリックがそんなことを言い出した、確かに全部食べることはしないだろう、いつも分け合ってきたからな、俺らの分3個っていうのは見事な読みだ、三人で笑ってしまった
現場に到着した、割と見つけやすかったから次来るのが夜でも迷わないだろう
さて油の多い枝はと周囲を物色し簡単なたいまつを作り火をつけ洞窟に入る
「この鶏のトサカみたいなのがキノコか?これしかないからこれなんだろうな」
「これしかないからこれでしょ」レオンとパトリックが綺麗にハモった
あっという間にかご一杯になったので、たいまつを自前の消火液で消しギルドに戻り報酬を受け取り買い物をして帰った
予想通りパンは三つだけ残っていたが、そのうちの一つには小さな歯型がついていた
お読みいただき有難うございました
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