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冒険者デビュー

この国で3番目に大きい都市の一角、ほぼ廃墟の様なスラム街は朝から賑やかだった


「オイ!お前ら起きろ!今日は忙しいんだからな」


大声でまだ夢の中でうつらうつらよだれを垂らしている二人を起こそうとしているのは

リーダー格の俺アレンだった


「ふぁあああ、もう少し(むにゃむにゃ)」

「うう、そんな食えないよう、、、、」


こっちの二人がレオンとパトリック、寝起きの悪さには定評がある二人


「今日は冒険者登録に行く日だろ!さっさと、お!き!ろ!!」


は!そうだったと飛び起きる二人をいぶしげな眼で見るアレンはこいつら大丈夫なんだろうか?

いささか不安になって来た


三階建ての廃墟に囲まれた広場には20人ぐらいの子供たちが何やら騒いでいる、ケンカをしているもの、腹が減ったと泣くもの、虫を数えてるもの、それぞれ何かしている


「おう!お前ら、おはよう」


三人で広場に行くと朝の挨拶だ、スラムのルールの一つって訳ではないが朝だけは挨拶する習慣になっている


「あ!ゴブリントリオの兄ちゃんだ!おはよう!」


ぱっつん前髪で歯が一本無い少女マリーが昨日聞いた三人の屋台街の通り名を得意げに使いだした

、屋台街は【おすそわけ】を頂く間柄なので最近通り名が付いた


「マリー!そんな呼び名誰から聞いたんだ?お仕置きが必要なようだな」


と言ってレオンが手を魔物の様に構えながら追いかけていく


その様子を見ていた他の子たちも大爆笑で見守る


「お前らも知ってると思うが今日から俺アレン、レオン、パトリックは冒険者になる

、いっぱい稼いでお前らに腹いっぱい食わせてやるからな」


俺とパトリックは腕を組みフンムと胸を張り、レオンはマリーの足を掴み逆さに担いで笑ってる


「兄ちゃんたち、頑張って来いよ!」「俺は肉が食いたい」「気を付けてね」

などなど激励と催促の入り混じった声を聞きながら三人出発する


裏路地を進むと表通りに出る、わずか数百メートルで別世界に来たような綺麗な街並みだ


「アレン、ギルド前でアル兄ィが待っててくれるんだよね?俺しばらく会ってないや」


パトリックが言うアル兄ィとはスラム出身の年長者、アルなんちゃらって名前らしいがみんなはアル、

アル兄ィと呼んでいる


冒険者ギルドに近づくにつれ見覚えのある顔、アル兄ィだと分かる、一緒に3人ぐらい居るがパーティーメンバーなんだろう厳つい感じがいかにもって感じだ


「アル兄ィご無沙汰しております、身元引受の件、感謝しかないっす!」


「何気にするな、俺だってその昔の兄貴分に面倒見てもらって12才から冒険者してんだからな

、次はお前らの弟たちに返せばいいだけのことだハハハ」


「パ-ティーのお前らにも紹介しておく、スラムの弟たちでアレン、レオン、パトリックだ

、何かあったらよろしく頼む」

「よろしくお願いします」X3


「リーダーが俺でこっちが剣士のジャスパー、同じく剣士と弓のジャック、魔法使いのターナーで

もう一人問題児が居るがたまにしか顔を出さない5人組だ」


「アルは辺境の村を出てきた田舎者の俺たちに色々教えてくれた恩人でもあるからな

、困ったことがあれば何でも言って来いよ、金と女以外なら何とかなる事も稀れに

、あるかもしれない」


と尻つぼみで若干頼りなくなった感のあるジャックもいい人そうだ


それぞれ握手を交わしギルドに入る、40人ぐらい冒険者が居るだろうか、その奥がカウンターだ、

夢にまで見たギルド嬢を目の前にし一人目をハート形にして頭から湯気を出してるレオン、

何もやらかさないことを願うアレンであった


アル兄ィだけカウンターに向かい俺らも続く、他のメンバーは依頼書の掲示板を眺めている


「新規登録に三人連れてきたんだが」


アルがギルド嬢に話しかけたらすぐレオンが動いた!


「ぼくレオン、ギルドにこれほどの美人さんがいるとはアル兄ィも教えてくれませんでした、お姉さん!僕と仲良くしてくださいね」


ギルド嬢が困った顔してるのでレオンをカウンターからパトリックと二人で引きはがす


ギルド嬢がビジネスライクに新規登録の説明をする、三人とも字は怪しいので代筆してもらいビックリするぐらいの速さで鉄で出来た冒険者タグを受け取る

Fの文字が一番大きく、次に名前、その下にギルド支部名、管理用の4桁の数字、そして身元引受人であるアルの名とアルの管理用4桁の数字が入ってる


三人で首に掛けたタグを見ながら、大人の仲間入り出来た事、冒険者になれた事で胸がいっぱいだった


「アル兄ィ、有難うございました」X3


「お礼はまだ早いぜ、ちょっとついてこい」


そういうとギルドを出るとギルドの三軒隣の古道具屋に案内された


「お前ら短刀は持ってるよな?初心者冒険者の必需品を俺が買ってやる、だが期待するな中古品専門店だからな」


「そこまで甘えていいんでしょうか?」


パトリックはアル兄ィの懐事情を心配しているようだった


「何気にするなって、もうすぐCランクだからな、それなりに稼ぎもある」


そういうとアル兄ィは子供に合いそうな短めの長剣を物色してる、鞘付きの三本をカウンターに乗せ、「おやじ、可愛い弟たちの門出なんだ、サービスしてくれると嬉しいぞ」なんて店のおやじに話しかけた


「アルの弟たちか?じゃあ背負い袋と水筒、火起こしセットもあった方がいいな、それから靴だな、そこの山になってる靴はボロだが合う奴持っていきな」


「いいのかいこんなに?」


アル兄ィが聞くと


「構いやしないよ、どれも使えるけどボロだしな、靴に至ってはそろそろ処分しようと思ってたしな、坊主たち、いいもの手に入ったら売りに来てくれな」


おやじはそういうと一本ずつ剣を確かめ軽く研いでくれた


「銀1銅3でどうだ?新品買えば金貨3枚分の品だから妥当だろ?」


金貨が10000ゼニー、銀貨が5000ゼニー、銅貨が1000ゼニー、鉄貨が100ゼニーだと聞いたことがあるとパトリックが耳打ちする


「うん、いつも助かるよ、他所からくる冒険者も安いって評判だったぜ」


アル兄ィが金を払ってる間に背負い袋を掛け長剣をぶら下げた、靴もぴったりなのが見つかり傍から見れば立派な冒険者、、のはず


「ギルドに戻ろうか?水筒も水入れないとな、乾燥し過ぎるとひび割れや漏れの原因にもなる」


「流石、先輩冒険者のアル兄ィ、頼りになりますぜ、こんな装備まで買ってもらって有難うございました!」X3


4人でギルドに戻るとアル兄ィのところのメンバーは他のパーティーとエールを飲みながら談笑中だった


「おいしい依頼は上がってなかったぜ、で8人で話してたんだが新人さんの薬草取りとボア狩りなんか2パーティーで丁度いいんじゃないかって話してたんだよ」


ジャスパーが言うのは新人の俺たちが薬草採取の依頼を受け、山の手前で薬草採取、それより奥で2パーティーでボア狩りすれば新人たちも安全だろうって事だった、この時はあんな展開になるとは、、、


「お前らもそれでいいな?Fランクの新人と言えば薬草は定番だからな、群生地も教えてやる」


願ったり叶ったりの三人なので「それでお願いします」と返事して出発準備に取り掛かる、依頼書をギルド嬢のところに持っていきたかったレオンは薬草は常に必要なので依頼書は無くても持ち込めば達成だと聞いてしょんぼりしている、お調子者が治る薬草は無いだろうか?


パンと水、干し肉はターナーさんがおごってくれた、冒険に出る時の水は浄化魔法を使った水を作るか買っていくのがゲン担ぎの様になっているらしい


アル兄ィのパーティーが4人、その知り合いのパーティーが5人、そしてゴブリントリオの二つ名を持つ勇者パーティーの俺ら3人で12人

結構な人数がぞろぞろ門から外に出る、朝と昼の間くらいに出て昼には着くらしい


根がまじめなパトリックは先輩方から薬草の事を色々聞いて勉強している、寝起きは悪いが勤勉な男だ、で、どのギルド嬢のおっぱいが大きかったとか髪の色がどうだの緊張感の欠片も無い男が、今隣で喋る続けてるレオン ハアア前途多難だ、薬草は地面から上、指三本分残して切れ、じゃないと次が生えないってくだり聞いてたのかな?


「ジャックさん、ボアの肉っていくらぐらいになるんですか?俺達でも出来る様になりますか?」


レオンは放置でジャックさんに聞いてみた、山間の集落の出らしいので狩りは得意なのだろうと思ったのである


「大きさにもよるけど2才ぐらいで皮が生で銀1鞣して持っていくと金1、肉が金2ぐらいかな?俺は8才ぐらいから親の手伝いでボア狩りはしてたから街育ちのアレン君たちに今すぐ出来るかは分からない、覚えた方がいいのは間違いない」


「なるほど!俺金貨なんて見た事ないんでやる気が出てきました、今日は薬草ですけど」


皆歩くペースが速かったのか目的地到着、さっさと飯にして山に入るらしい、俺ら3人はアル兄ィに連れられ森のそばへ


「いいかお前らこれをよく見ろ、これがヒール草だ、偉い学者がつけた長ったらしい名前があるがポーションの基になるのはこれ、あとは毒消しを追加したり流行り病に効くもの追加したりするがこれが無いと始まらない、指三本より下が残っていれば何度でも再生する草だ!根を持ち帰り増やそうとするものもたまに居るが成功した試しはないらしい、袋パンパンになるまで刈れば金1、実際は半分ぐらいしか刈れないだろう、昼だしな、じゃ頑張れよ」


そう言い残し俺らが戻ってくるまで刈ってろという事だった


「なあお前ら、金貨って見てみたくないか?パンパンにしたら金貨一枚なんだろ?俺一人で金1っていうのを稼いでみたい」


三人顔をそれぞれ眺める


「やってやろうじゃないか!ひとり金1稼いで帰ろうぜ!!」x3


話が決まれば行動は速い、短剣とも言えないような普段から持ち歩いてる手の平くらいの刃渡りのナイフを取り出し黙々と薬草を集める、弟分と妹分の為でもある、アイツらに美味いもの食わせる為にも三人は頑張る


昼と日没の中間ぐらいで袋はパンパンになった、パトリックの背負い袋だけ変わった作りになっていって生地の半分以上が中に畳まれて引っ張り出すと二倍半ぐらいの大きさになった、これで背負い袋四つ半ぐらいに収穫量が増え皆満足気である


開けた原っぱで三人座り俺が水筒の水を飲もうとしているとパトリックが思い出したように立ち上がると長剣を抜いて素振りを始めた、素人目だが結構堂にいってるように見える、街には野犬も多い、スラム育ちの俺達には木の棒で応戦する事しかできないが木の棒は暇さえあれば振って来た、そのせいか?


気が付けば三人素振りを始めていた、初仕事をこなせた満足感、兄的存在の冒険者とも仲良くなれた、後は無事に帰れれば言う事は無い冒険者デビューのはずだった


「なんだろう?怒鳴り声のような叫び声聞こえないか?」


レオンが言い出した、ははん、さては腕が上がらなくなってきたな?その手には乗らないぞ


「どこかに潜られたか?!」「いや直進してる20メーター先だ」「早すぎるな、もう一発矢で射れないか?!」


三人素振りを止めて「ん?」となったがボアがこっちに向かってきているのを追いかけてるっぽいぞ!と三人同時に悟ったようだ


「よし!野犬狩りの要領だ!真ん中は俺、レオン左!パトリック右!」


スラム街とは勝手が違うが、20歩ぐらいの間隔で三人並んだ、出くわす予想地点に合わせ俺が左に移動する、二人もそれに合わせて移動する


ちょっと向きを変えたか?今度は右に移動する、二人もそれに合わせ移動する


一緒に来た冒険者の声がはっきり聞こえる、草を突っ切る音も目の前に聞こえる、飛び出してきたのはボアだった、ちょっとデカい!


「ううぉおおおおおお!俺の晩飯いい!」


と威嚇した瞬間俺とレオンの間を抜けるつもりになったらしい、すかさず二人で左右から首を狙って刺す、ちょっと浅かったか?よろけながら逃げようとしてる所にパトリックが追い付きお尻を刺した


「ブイイイイーー」という断末魔を最後に絶命したようだ


「ああごめんごめん、仕留めそこなったのが足早くてな、でもよく三人で仕留められたな、このボアはお前らの物だ」


ジャスパーは笑いながら言った


「血抜きを見るがいい、やったことないだろ?」


既に首から大量出血してるがこの先の処理があるのか、よし勉強させてもらおうとパトリックの目が語っている、それぐらい分かる


「よく見ておけよ、山育ちじゃないと知らない血抜きだからな」


と言ったかと思うと慣れた手つきであばら骨とヘソの間を数回に分け切り開いた、最後がこの膜な、内臓を切らない様にこの膜を切る、そして手を入れると説明してくれるが何をしているのか分からない


「この傷口見ててみな」


ん?血が波打つように流れ出した、三人が呆気に取られてると順番にやってもらうと言い出した


ジャスパーさんは自分の手を抜くと俺に手を入れろと催促する、温かくて変な感じだ。指で指さすところまで手を入れると拳くらいのちょっと硬いものに当たった


「それが心臓だ、握ったり揉んだりしてると血が抜けていく」


「ほうーーー」X3


これにはびっくりである、順番に体験した後、足を縛り担ぐ準備をする


獲物を担いで降りてきたアル兄ィ達と合流し街へ戻った頃は日は沈んだ直後でまだ明るかった


冒険者ギルドでヒール草を換金すると金4銅3だった、ボアの方は金3だった

肉は持ち帰り部位と量を言えば原価で分けて貰えるらしいので高級な所を手振りで量を示して戻してもらい銅3引かれて金2銀1銅2になった


冒険者ギルドは金の預け入れも出来るので三人は金1銅1づつ受け取り金3、銀1は預けることにした、弟分や妹分に金貨を見せたいのとお土産を買う為である


アル兄ィたちはこれから酒場で打ち上げをするらしいが三人は分かれて買い物をして帰った


スラムの広場に戻るとすっかり夜だった


「アッ!兄ちゃんたち帰ってきたよ!」


「ただいま、今日は兄ちゃんたちが仕留めたボアの肉があるからな、晩飯にしよう!」


大歓声である、肉を切りさっきまでお湯だけ沸かしていた釜土は網が乗せられ肉パーティーだ

塩と胡椒も買ってきた、パンも買った、スラムの子供たちにとってはとんでもなく豪勢な晩餐の始まりだった


マリーはレオンの膝に座り肉の焼け具合を聞いている

そういやマリーを拾ってきたのはレオンだったな、ちょっと筋肉痛だ、明日はゆっくりさせてもらおう



















お読みいただきありがとうございました

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