棒術大会
時刻は12時
明日、ジークの父ジャンが診療所を出る日だ
今日は棒術の先生の指南最後の日、教える事は一通り終わったので、今後は
各自の鍛錬に任せるという事、それならと最後の日は焼き肉パーティーにしようという事になり
リク先生の午後の予定がない日に合わせた
「リク先生、短い間でしたがお世話にありました、これからも精進します」
全員で合わせた最後のお礼は綺麗にまとまった
「こちらこそ、いい経験になりました」
「じゃあ始めましょう!乾杯!」
アル兄ィの乾杯の音頭で焼き肉パーティーは始まった
「ここはどうでしたかリク先生?」
「面白かったよ、騎士団の若い連中より成長速度が速い、普段から鍛えてるの
もあるだろうけど、若すぎるからかな?いい経験させてもらったって
言ったのは本心だ」
二番隊がどや顔だが今日はいいだろう
「師範の推薦と道場の選抜が、王都に集まって全国大会があるんだけど、4人出してみない?」
「全国大会ですか?」
エールを飲み干してから
「12歳以下の部に4人、エド、サロモ、クリス、そしてマリー」
「エーーーーーッ!!」
屋台当番のクリスを除く3人も、周りもびっくりだ
「一番隊はもう少ししてから、大人の部で天下目指せばいい」
「いやいや、もう酔っぱらってんですか?」
「まだ酔ってないよ、短期間の成長ぶり見ていて、もっと広い世界を見せたくなった」
マリーと一番隊は口を開けたまま言葉が出ないらしい
「まだ3か月あるからね、同門4人は準決勝までは、まず当たらない、4人揃って残ったら面白いと思わないか?」
王都の全国大会、出るのはいいけど留守番で揉めないかな?
屋台と鶏とポロも居る
「いいんじゃないか?みんなで行って来いよ、アルと俺たち留守番
してやるからさ」
ジャスパー兄ィさんの一言でメンバーが頷いてる
「先に言われちゃったけど行って来いよ、年少と屋台に動物の面倒ぐらい
任せて置け」
アル兄ィも納得の様子だ
「じゃあ4人、申し込んでおくよ」
拳を握り締めてやる気満々のマリーと不安げなエド、サロモの両極端が面白い
気を取り直したのかサロモが質問する
「試合って何するんですか?」
「組手で使ってる棒あるだろ?綿入れたヤツ、あれで首から下のみの攻撃
相手は足以外を地面に着いたら負け、片方の棒先は地面についても関係ない
棒が平らに両方着いたら手を着いたのと同じとみなされ負けだ」
「じゃあ体の柔さと足腰の強いお前ら有利だな」
「正解!サンナは分かってるね」
よく分からないがそういう事らしい、これは楽しみが増えた、そんなに強いかは別にして、ダンジョン行けなくてつまらなそうにしてた
二番隊も目標が出来た
ジークは大会の話は興味ないようだな、明日、父が帰ってくる
---屋台前広場、クリス視点ーーー
「棒のおじさんはリク先生の先生だったの?」
「立場的にはそうだが、直接リクに教えたことはないな」
話しかけると答えるけど、喋るのは好きじゃないみたい
広場は人も少なくなった、型の練習でもしよう、屋台は退屈だ
左利きだけど両方使える方がいいと言われて、左手は上から、右手は下からの握りで素振りするけどしっくりこない
棒のおじさんがボーッと見てる、棒だけに
(イチ、二、、、サン イチ、二、、、サン)
15分経った、時計は便利だ、利き手に握りなおす
(イチ、二、、、サン イチ、二、、、サン)
棒先着いてバック転も入れながら、三匹のゴブリンに囲まれたイメージで型を混ぜる
(暇人が集まってきた、俺は見世物じゃないよ、そろそろ止めよう)
振り返るとボーッと見ていた棒のおじさんが棒を持って立っている
「どうだ?一つ手合わせでも」
「え?止めようと思ってたんだけど?」
「よかろう、こっちは寸止めにしてやるから安心しろ、当てれるもんなら当ててみろ、勝ったらこの黒塗りの棒をやろう」
「おじさん耳悪いのか?止めようかと思ったんだけど」
「おい!クリス!受けて立つのが男ってもんだぜ!」
屋台から余計な声が聞こえる、あの黒い棒も光っててかっこいいしな
「じゃあ行きますよ!!」
「こい!」
(あれ?フェイントが全然効かないな?バレバレってことか?)
棒は空を切る、おじさんの棒にすら当たらない、ならこれはどうだ?
ヒラリとかわされ続けて、これならどうだ?
足に刺すフェイントのつもりで更に踏み込む
(しまった、罠だ、利き手に合わせて左に長く持ち直した棒の右側がガラ空きだ)
「ふっ」
棒おじさんがニヤッとしてる、くそっ!
棒を置き去りに手の中で遊ばせ、体を前に出す、ガラ空きだった右側の棒が一気に伸びる、棒おじさんの棒は体に当たらず、棒で防げた
そのままの勢いで脇をかすめる時に、棒がおじさんの腰に当たった
囲んでた暇人から歓声が上がる
「わしの負けだ、お前はまだまだ強くなる、受け取るがいい」
「いいの?」
「約束だからな、名は何という?わしは棒おじさんでいいよ」
「クリスだ」
屋台に戻るとみんなから褒められる、ちょっと嬉しい
「ああ、あれが目的だったか」
兄ィ達が隣をのぞき込んでいるので、見てみると冒険者たちに棒が売れている
大人は汚い、ほんと汚い、でもまあいい黒い棒はかっこいい、帰ったらエドたちに自慢しよう
ーーー砦ーーー
「いやあ、長々と飲んで食べてしまって」
「いえいえ、それだけここの皆もお世話になったので、これは今日の分と生肉と卵です」
「途中で昼寝してたら肉にゴブリン寄ってきますからね、まっすぐ帰ってくださいよ」
「本当にお世話になりました」「先生また」
最後はポロの顔ぐりぐり攻撃を受けてリク先生は帰っていった
ーーー屋台前ーーー
「アッリク先生、今日で終わりですもんね、お世話になりました」
「いえいえ、毎回お土産までもらって、今日だってこれ」
ちょっと大きな袋を指して言うリク先生は酔ってるみたいだった
「ついでにクッキーもどうぞ」
ロゼもクッキーを渡して嬉しそうにしてる
「ありがとう、あれ?今日は師匠の店繁盛してるね、珍しい」
「ちょっとした余興があったからね」
「それでは、失礼します」
一瞬、間があり考えたが、お互い挨拶して隣に行った
「繁盛してますね」
「リクか、珍しくお前が大会に推す子供らに興味が湧いてな」
繁盛と何が関係してるのか分からない返事に愛想笑いで後にする他なかった
「今日はもういいだろう、4時過ぎてる」
「店閉めよう」
ーーー砦ーーー
カンカンカン
「屋台組帰ってきたみたいだな」
「ポロはここに居るから鐘の音、久しぶりに聞いた気がする」
全員と1頭は焼肉台に集まっている
屋台組も加わり、焼肉大会夜の部が始まる
「この肉の脂吸ったナスがまた美味いんだよなあ」
腹が一杯なアル兄ィは野菜焼き担当になりながらエールを飲んでいるが、ポロの顎は肩に乗せたままだ
アル兄ィがエールのジョッキを膝に置いた瞬間、ポロのよだれがポチョンと入った
止める間もなくアル兄ィは飲んでしまった
「今日のエールは特別うまいね」
時すでに遅しな瞬間だがロゼが
「ああ、それ、、、」
言い出しそうになった
「ロゼ、知らないほうが幸せなこともいっぱいあるんだよ」
こうしてロゼも、また一歩大人になる
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