父を待つ少年
ーーーレオン視点ーーー
今日の一番隊、屋台当番は俺だ
屋台のメンツはロゼ、サロモ、最近二番隊になったコリンで4人
広場の時計台は10時と半分ぐらい
「あの子、捨て子かな?」
「うーーん、違うんじゃないかな?」
ロゼの視線は時計の柱の下で、しゃがんでる子に向けられてる
「6才ぐらいかな?、変な大人が寄ってきたら教えてね、俺も見てるけど」
「うん分かった」
しばらく様子を見ることにした、浮かない顔して一人でいる少年
痩せてるわけでもなく、汚れてるわけでもないが気になった
パンを焼いてる時はロゼに任せるしかない
「人数分、クッキーと肉パン貰おう」
「ありがとう、肉パン四つ」
「あいよ」
「ここの肉パンは肉がいっぱいで腹持ちいいんだよな」
「ああ、クッキーも干し肉みたいに喉乾かないからな」
冒険者たちが、店先でそんな話をしてる、そりゃそうだ、狩りの人数も大勢い
るし、肉には困らない、肉は買って来てるわけじゃないから多く入れても
支障ない
「ロゼどうだい?」
「普通の人が話しかけてたけど、すぐ居なくなってた」
時間は12時、時計の下で時間が止まった様に動いていない
その後も客は次々来て、落ち着いたのは2時ぐらいになってからだ
「何か食べてる様子はあった?」
「食べても居ないし、飲んでも居ないよ、トイレに一回行ったけど」
「ちょっと行って来る、店見ててね」
他の3人も気になってたみたいだ、肉パンを一つ持って少年の所へ行き隣に座る
「いやあ、もう一個食べようと思ったけど、食べれそうにないなあ」
少年に聞こえるように言う
「腹減ってない?食い切れなさそうだから半分あげるよ」
少しちぎって大きい方を少年に渡し、自分の分を食べ始めると、視界の隅で凝視されてるのが分かる
「いやあ、美味いな」
「ありがとう」
視界の片隅の少年は食べ始めたみたいだ
「お兄さんは普段冒険者で屋台もやってんだ、あれ、あそこ」
指さすと食べながら無言で少年は屋台を見てる、やがて食べ終わると喋り始めた
「うちの父さんは冒険者でダンジョンに行ってるんだ、昨日は帰ってこなかったけど」
「父さんと二人で街に来たの?」
「そうだよ、父さんはBランクなんだ」
母親は何年か前に、荷物を持って家を出て帰ってこなかった、
父さんにその話をすると機嫌が悪くなるので
何があったかは知らないらしい、ここの領地にもう二つある
ダンジョンの一つの傍の宿に寝泊まりして、昼間、父親はダンジョンにソロで
入っていたようだ、そうして新ダンジョン発見でこの街に来た
「夜帰って来ない事は、よくあるの?」
「大体帰って来る」
さて困ったな、捨て子なら連れて帰るのが掟だが、今日、帰ってくるかもしれない
「冒険者ギルドに行ってみないか?父さんの事、分かるかもしれない」
「ギルドは行った事あるよ、ここのじゃないけど」
二人でギルドに行く事にした、屋台の連中には手短に説明だけして
ーーー冒険者ギルドーーー
「こんにちは、ダンジョン管理は誰でしたっけ?」
「レオンしばらくね、元気そうね、ちょっと待ってて」
ギルド嬢は皆、察しが早い
裏から小太りの中年の男が出てきた
「そうですか、Bランクのジャン、、、確かに昨日入って昨日は出て
来てませんね、けが人の報告もありません、まだ中でしょうな」
ギルマスが降りてきた
「話は分かった、今日戻らなかったら捜索隊を出そう、
子供はどうするんだ?」
「飯なしの宿を使ってるみたいなんで、うちで預かります、騎士団に報告
お願いしていいですか?あんまり行きたくないんでね」
「よし、良かろう、宿の方はレオンが寄っていくか?」
「はい、この後行きますよ」
こうしてB級冒険者ジャンの息子ジークを連れて帰ることになった
宿には、やはりまだ戻ってない、うちの地図とギルドにも子供は預かる話は了
解されていることを伝え、屋台に戻ると肉パンは売り切れてる
ジークは眠そうだ、荷車で寝させておく
「うちで預かることになったから」
「父さん無事に帰ってくるといいね」
宿には屋台の事も教えたから、目の前を歩くダンジョン帰りの冒険者に
ジャンが居たならここに来るはずだ
「そろそろ閉店だな、帰るよ」
「父さん来なかったね」 「うん」
「ジーク起きて、帰るよ」
「う、うん、、、」
「ジークは大物だね、落ち着いてるもん」
「そうだね、帰ったらご飯だよ」
すれ違うダンジョン帰りの中にも父親は居なかった様だ、砦に着いた
「ポロただいま!」
木柵の上から見下ろすポロは一人増えてる事を考えてる様だ
少し間があってから大きい方の扉のかんぬきが落ちる
「ジーク、この子はポロ、よろしくな」
ジークはポロを撫でている、動物は怖くないようだ
鍛錬中の奴も居れば、風呂の温度の見張りも居る
クリスに捕まったジークは一緒に木剣で素振りを始めた
ーーーアレン視点ーーー
「あの子がジーク?着た瞬間から馴染んでるな」
「ああ、父親にあっちこっちついて行くうちに、ああなったのかな」
父親は無事なんだろうか?おかしな大人に会わずに、ここに来れたのは運がいい
万が一の時はここで育つことになるだろう、里親なんか見つからなくても
問題ない
ここはもうスラムじゃないが、スラムで、スレた子供は里親が敬遠する
ジークはそれぐらいに見られる年齢だ
「冷蔵庫に肉はあるし焼き肉でもするかい?」
マリーが言い出したが、みんなも肉が食いたいらしい
アル兄ィは冷蔵庫にエールを取りに行った、冷蔵庫が出来て一番喜んでるのは
間違いなくアル兄ィ達だ
ジークの歓迎会と称した焼き肉パーティーは始まった
ジークも楽しそうで何より、いやな予感はしないので父親は帰ってきそうな気はする、なんとなくだけど
野菜担当のジャック兄ィさんの肩にポロが顎を乗せている
あんた、たまにでいいから雑草食ってくれない?
ーーー翌朝、冒険者ギルドーーー
緊急クエスト
ダンジョン内捜索
対象: Bランク冒険者、ジャン
場所: ダンジョン内第4階層、第5階層
資格: ダンジョンルール準規によりCランク4階層、Bランク以上5階層
報酬: ギルドより金50、領主様より報奨金
昨日の魔石を交換に来ていた冒険者や、クエストを探しに来ていた冒険者も
張り紙を見て飛び出していく
オルレイン公爵は冒険者の捜索には力を入れている、探す方も探される方も、力を尽くしてくれる有難味を感じる
そんな領地にあるダンジョンは冒険者の評判も上がるからだ
---砦ーーー
「アル兄ィ達頑張ってきてね」
「4階層に居る確率は、意外と高い気がするからな、行ってくるよ」
「ジークの父さん見つかるといいな」
「うん、父さんは強いから大丈夫だと思う」
ジークは強いというのか、父親が魔物ごときに負けるはずがない、と思ってる様だ
エドたちに呼ばれ、二番隊と一緒に棒術の型を練習してる
「屋台で待ってた方がいいかな、とも思ったけど、ここの方が良さそうだな」
パトリックが言う、今日の屋台当番だ
「ああ、屋台に連絡が来たら知らせてくれ」
ポロが木柵の上で角笛の様に鳴くと降りて来て、かんぬきを落とした
「リク先生来たから皆準備して」
こうして棒術の鍛錬が始まる、最近は棒の両側に綿花を詰めた革を被せて、組み手の練習もしている
「何で組手の時だけ逃げてくんだ2番隊!」
マリーがご立腹なようだ、しょうがないので俺が相手する
それぞれ1対1で組手をしてる、隅でリク先生は、今日初めて棒を触るジークに
型を教えてる
ーーー第5階層ジャン視点ーーー
もうどれくらい時間が経っただろう?ダンジョンじゃ昼夜の感覚が無い
ジークはどうしてるだろう?離婚して三年、あいつは留守番だけしてる生活だったな
飯はどうしてるだろう?心配だ
俺はここでは死ねない!絶対にだ!
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