フェンリル村の双子
ここは辺境の町、コートカ
岩塩の産地として栄え、発展した2万人程度の町
中央の広場では吟遊詩人が伝える、新ダンジョン発見のニュースが聞こえる
切り出し場から加工場まで岩塩を運ぶ仕事をしていた双子の姉弟は今日の日当を握り締めながら聞いていた
「エリアス、新ダンジョンだって、こんなところで詰まらないポーターやってるより面白いんじゃないの?」
「いやいや、まさか行く気じゃないよね?わざわざ危ない事しなくても」
「村に戻っても狩りの縄張り分けて貰えないんだから、このままじゃダメなの知ってるよね?」
二人の出身地はここより高地にある狩猟の村、フェンリル、フェンリルにまつわる伝承が多い事でフェンリル村と呼ばれ、親から狩りの縄張りを継承したものだけが猟師として村に残り、継ぐ縄張りが無い若者は村を出るのが習わしだった
「あんたはいいよね、魔法使えるんだから、私は狩りの腕も落ちる一方だし村での経験生かせるのは冒険者ぐらいしかないんだよ」
「決めた!あたしは行くよ、あんたは塩でも背負ってなさい!」
「サンナーッ、待ってよう俺も行くよう」
「覚悟決めたの?明朝出発だから帰ったらさっさと寝るわよ」
「サンナはいっつも強引だよね、ダンジョンで狩りの経験が使えるかも分からないのに」
「いいから寝なさい、明日は晩まで走るよ」
ーーーオルレイン川ーーー
「サンナ、一応聞いておくけどオルレイン領だからオルレイン川下るのが一番早いと思ってる?川って蛇行してれば距離増えるのぐらい知ってるよね?」
「言われなくても知ってるよ、これが最短ルート、つまり一番早い、行くよ」
朝日の中、二人は走ったがエリアスは不安でいっぱいだった
黙々と走ってた二人だったがエリアスがサンナを呼び止めた
「止まって!昼、カモでいいよね?」
「あれか?いいんじゃないかそろそろ昼だし」
屈みながら二人はゆっくりカモに近づく
「ストーン、ニードル!」
ぱっと見、みえない、ハリの様に細い石を飛ばす、小型の獲物に有効な土魔法をエリアスが打った
「よし!良くやった、ほんとにずるいなお前は、手ぶらで狩りできるんだから」
「食べたくないなら別に食べてもらわなくてもいいけど?」
「食べたくないなんて誰も言ってないだろ!」
「さっさと焼いて食って走るよ」
食べ終わると川で顔を洗ってるサンナの後ろでエリアスは地図を見ている
まだ先は長い
「さて出発するか、明後日には着きそうだね、肉調達してたら時間もったいないから干し肉だけで走らない?」
「どっちでもいいよ、ただしウサギが居たら食うよ、他は要らないけど」
「ほんとウサギ好きだよね、まあいい、走ろう」
異常なハイペースと野宿を2回で予定通りオルレインの市街についた
「すんげえ人だらけだな、コートカとは比べ物にならんな」
「この国でも大都市の部類だからね、冒険者ギルドはあれだな」
---冒険者ギルドーーー
「新規登録なんですけど?」
「こちらに記入お願いします、代筆でも構いません」
「コートカでポーターしてましたサンナです、こっちは弟のエリアス、二人とも12才です」
「それだと登録は出来ませんね、15才まで待つか15才以上で3年以上の冒険者に身元引受人になってもらわないと」
「そんなーーー!」x2
「だって12才からだってみんな言ってましたよ、ああ、それには条件があると?」
「コートカの冒険者に知り合いは居ないんですか?コートカ支部でも登録は出来ますが」
「ここのダンジョンで稼ぎたくて来たのにまた戻るんですか?」
「新ダンジョン目当てだったんですね、それならどのみちダンジョンには入れませんよ、Eランク以上の制限は全国共通ですし」
「遠方から来た未成年が、このまま帰して何かの被害にあってはいけませんのでギルドマスターに無い知恵絞ってもらいましょう、ちょっと待っててくださいね」
「全然しらなかったな、エリアス知ってた?誰かこの街に居なかったっけ?」
「まあ来ちゃったものは仕方ない、あの口ぶりじゃギルドマスターも当てにならんな、残念そうな感じだもん」
「お待たせしました、ギルドマスターが面談したいそうなのでこちらへ」
---2階応接室ーーー
「話は聞いたよ、ずいぶん遠い所から来たんだね、ずっと岩塩の現場?」
「いえ、フェンリル村で10才まで猟師の真似事してました、私は弓と剣、こっちの弟は土魔法と剣が使えます」
「ほう、それは下手な中堅冒険者より頼りになりそうだな」
「じゃあ、大目に見て登録を?」
「うむ、それがなあ、、、、ところで宿も取れてないんだろ?なんせ新ダンジョンだからな」
「泊まれそうなところに案内してやるからちっと、待っててくれ」
---ギルドカウンターーー
「アーシャ、御者やれたっけ?さっきの二人アレン達のところに預けようと思うんだけど裏方は出払ってんだよな」
「えっ!アレン達という事は、、行きましょう、今すぐ、馬車見てきますので、ギルマスも急いでください!」
「じゃあお願いしようかな、二人連れてくるよ」
ーーー2階応接室ーーー
「今すぐついて来なさい、君らと同い年の冒険者の砦に泊めてもらおう、冒険者登録はとりあえず保留だ、アイツらが何とかしてくれるかもしれんし」
「え?」(何言ってんだこのおっさん)x2
「さあ、はやくはやく」
裏に回るとレイピアを差し、馬を撫でてるアーシャが待っていた
自室に一度戻ったギルマスは背中に大剣を背負っている
「二人とも適当に乗ってくれ、そんなに時間はかからない、すぐそこだ」
「砦って何だろう??」 x2
---砦到着ーーー
「砦だね、誰がどう見ても」 x2
馬車からギルマスが降りるとクリス、エド、サロモはパニック状態
「大変だー盗賊が来たぞーー!」x3
ロバに草食べさせてたアレン、レオン、パトリックは飛んで行った
「どこのどいつだあ」「木剣だと思ってると痛い目にあうぞ!」「そうだぞ」
扉に近づくと柵の上から
「盗賊の親玉の名前はギルマスだそうです!」
三人膝から崩れ落ちそうになりながら扉を開けると
(ギルマスー!紛らわしい顔して、紛らわしい大剣なんか背負って来ないでくださいよ!)
「どうしたんです?ギルマス、ダンジョン開放と自由にしてヨシ!って話は夕べ聞いてますよ、そっちの二人は?」
「ああ!アーシャさん、お久しぶりです!ギルドに行けなくて寂しかったです」
安定のレオンは放置でいいとして
「お前ら私の扱い酷くないか?この大剣はだな、苦楽を共にした大事な相棒なんだが?、大剣は盗賊の印って」
柵の上からのぞき込んでる新兵にギルマスが何か言ってる
「まあ立ち話も何なんで、中へどうぞ」
---食堂ーーー
「なるほど、大体話は分かりました」
「ここで寝泊まりしてもらう分にはいいですよ、12才なら尚更、俺たちの掟ですし」
「誰か文句ある奴いるか?居るなら手を上げろ」
「居ないね?はい、満場一致です、好きなだけいていいですよ、守って欲しい事は徐々に教えます」
「何でこんな砦に子供だけなんですか?実は夜になると盗賊団の親が帰って来るとかないですよね?」
双子の弟エリアスが喋った、さっきまでサンナが一人で喋ってたのに
「ここはね、元軍の訓練場なんだけど使われてなかって放置されてたんだ、それを教会の神父様が領主から貰い受けて、ただでここに住まわせてくれてる」
「俺たちはちょっと前まで町のスラムで暮らしてた仲間なんだ」
「あ、あごめんなさい、話したくない事まで話させちゃったようで」
「別に謝る事じゃないよ、スラム育ちも気にしてないし」
「1年ダンジョン無理でもギルド登録は何とかなると思うよ、ギルマスもそのつもりで連れてきたんですよね?」
「まあな、ダンジョンボーナス受け取るまでは無理はしたくないんでな、じゃあそろそろ帰る、頼んだよ」
「ここは中々、いい所だな、大盗賊の要塞みたいでロマンがある」
「アーシャ、帰るよ」
「えええ!私的には泊りでもいいんですけど」
「冗談はほどほどにな、帰るよ」
ーーー扉の外ーーー
「ダンジョンはまだ行ってないんだろ?しばらくは行かない方が、いいだろうな、深い層に潜れる上級冒険者は早い者勝ち、目の色変えてるが」
「みんなもじゃあね、クエストもこなしに来てよ」
ギルドの二人は帰って行った
「さ、飯でも食うか」
---食堂ーーー
パトリックがサンナとエリスに色々聞いてる、挫折しかかっていた皮なめしとガットの救世主になるのだろうか?
マリーはキー兄ィのお土産のハムと野菜のパンを焼いていた、助手はロゼだ
「それにしても一度に6個の釜土よく使えるね、火の加減だってバラバラでしょ?」
「まあね、最初は大変だったけど火を弱めにしてれば大したことじゃないんだわ」
「へーー、でも俺には無理だわ、焦がす自信がある」
なんて会話をマリーとレオンがしてる、ただのいいコンビなんだろうか?
ギルド嬢がレオンの横に座ってる時もマリーは気にした様子もなかった
年少組が姉弟を不思議そうに交互に見てる、そっくりな双子を見るのも初めてだろうから分からんでもないが
住人が二人増えたが、今日も平和に一日が終わる
だが、しかし次の日の朝から地獄になるとは誰も想像すらしてなかった
お読みいただき有難うございます
PVだけでも励みになります




