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命乞いするビビリ警護官、0.1秒でヤラセ配信を物理で粉砕す〜近代兵器と極上メシでヒロイン達を餌付けする最強スローライフ〜  作者: 月神世一


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「痛いのは嫌でしょう? 止めましょう?」——レベルという概念を粉砕する50口径

「痛いのは嫌でしょう? 止めましょう?」——レベルという概念を粉砕する50口径

「ぎゃははははっ! 死ね! 死ねぇぇぇっ! 原住民ごと、ただのゴミクズに変われぇぇっ!」

 フラッシュバンによって視覚と聴覚を奪われた契約勇者ゼロスは、狂気に満ちた笑い声を上げながら、デタラメに聖剣を振り回していた。

 しかし、その一撃一撃は、絶対に無視できないほどの破壊力を秘めていた。

 ユニークスキル【マネー】。

 彼がゴッドチューブの配信で稼いだスパチャを消費し、一時的に自らのステータスを『レベル100相当』まで引き上げる課金ドーピングである。

 基礎訓練など一切積んでいない素人の剣筋だが、レベル100の純粋な『腕力』と『スピード』が乗った刃からは、不可視の真空波が発生していた。

 ズバァァァァァンッ!!

 真空波が広場の地面を深くえぐり、石造りの建物の壁を豆腐のように両断する。

「ひぃぃぃぃっ!? なんですかあのデタラメな攻撃! あんなの掠っただけで身体が真っ二つですよぉぉ!」

 神谷シンは涙目で悲鳴を上げながら、全速力でその場を飛び退いた。

 寸前までシンがいた地面が、凄まじい衝撃と共にクレバスのように叩き割られる。

「くそっ、なんて理不尽な力だ! 剣圧だけで我々を近づけさせないだと!?」

 自警団長のマンミアがパイルバンカーを構えるが、真空波の嵐の前に一歩も踏み出すことができない。リーザの歌によるバフを受けてなお、レベル100という暴力的数値の壁は厚かった。

「そこを退きなさい、シン! 私が月影流で相手をするわ!」

 シンの背後から、ウサギ耳をピンと立てたキャルルが飛び出してきた。

 彼女の脚には黄金の闘気が収束しており、いつでもマッハの速度で飛び蹴りを放てる態勢に入っている。

「私のモノ(護衛官)に、これ以上指一本触れさせないわ!」

 ヤンデレ特有の重い愛を乗せて、キャルルがゼロスの死角へ跳躍しようとした——その瞬間。

「……危ないですから、下がっていてください」

 ガシッ。

 シンの左手が、キャルルの細い肩を力強く、しかし優しく掴んで制止した。

「え……?」

「プロとして、護衛対象あなたを矢面に立たせるわけにはいきません。それに、あんなメチャクチャな攻撃に飛び込んだら、綺麗な肌に傷がついてしまいますよ」

 シンの瞳から、先ほどの涙目とパニックが完全に消え失せていた。

 そこにあるのは、極限の緊張感の中で最善の選択を冷徹に実行する、合衆国シークレットサービス(USSS)特命警護官としての絶対零度の眼差し。

 ドクンッ、とキャルルの心臓が大きく跳ねた。

 震えていたはずの彼が、自分の身を呈して、圧倒的な力を持つ勇者の前に立ちはだかっている。その広くて逞しい背中に、キャルルの頬は一瞬にして林檎のように赤く染まった。

(あぁ……なんて素敵なのかしら。私のために、命を懸けて……!)

 ——だが、シンの内心は全く違った。

(ひぃぃぃ! キャルルさんが死んだら、この村の防衛線が崩壊して僕の生存率が下がるじゃないですかぁ! しかも、後でヤンデレ拗らせて僕がボコボコにされる未来しか見えない! 絶対にここで止めるしかない!)

 恐怖と保身の究極系。それがシンの原動力である。

 シンはキャルルを背後に庇いながら、深呼吸を一つした。

(ステータスが上がったといっても、無敵になったわけじゃない。肉体の構造が物理法則を無視しているわけじゃないんだ。なら——『物理的に超えられない火力』をぶつけるまでだ!)

「……スキル発動」

 シンが低く呟いた瞬間、彼の両手に【合衆国官給品ガバメント・イシュー】による最大の質量が実体化した。

 全長145センチ、重量14キログラム。

 黒光りする無骨な鋼鉄の塊。巨大なマズルブレーキを備えた長く太い銃身。

 USSSが、突進してくるテロリストの装甲車をエンジンブロックごと撃ち抜き、強固な遮蔽物の裏にいる狙撃手を壁ごと粉砕するために配備している『最凶の鉾』。

 ——対物ライフル、『Barrettバレット M82A1』。

「な、なんだあの巨大な黒い鉄塊は……!?」

 マンミアや自警団員たちが、バレットが放つ異様な威圧感に息を呑む。

 それは対人用の兵器ではない。完全なる『対物アンチ・マテリアル』。人間に向けて撃つことなど想定されていない、純粋な破壊兵器である。

「どこだ! どこにいやがる原住民! 全員まとめてミンチにしてやるぅぅぅっ!」

 フラッシュバンの後遺症で目が霞んでいるゼロスが、シンの気配を察知して振り返った。

 レベル100の腕力によって、白銀のミスリルの聖剣が、シンを真っ二つにしようと大上段に振りかぶられる。

 常人であれば、その圧倒的なステータスの暴力と殺気を前に、一歩も動けずに絶望するだろう。

 だが、バレットを腰だめに構えたシンは、情けない顔で、心の底から怯えきった声で叫んだ。

「……危ないですから、本当に止めましょう? 痛いのは嫌でしょう?」

 それは命乞いのように聞こえた。

 だが、彼の指はすでにトリガーに掛けられており、銃口はゼロスの『右肩』にピタリと照準を合わせていた。

 それは命乞いなどではない。絶対に覆すことのできない『完全なる死の宣告』。

「うるせええええええええっ!! 死ねぇぇぇぇぇっ!!」

 ゼロスが地面を爆発的に蹴り出し、レベル100の速度でシンに向かって突進してきた。

 シンの頭上へ、聖剣が振り下ろされる。

 シンは一切の表情を変えず、ただ静かに、トリガーを引いた。

 ——ズドォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

 ポポロ村全体を揺るがすほどの、鼓膜が破れんばかりの轟音が炸裂した。

 巨大なマズルブレーキからV字型に強烈な発射ガスが噴き出し、周囲の土煙を吹き飛ばす。

 発射されたのは、12.7x99mm NATO弾。通称『50口径』。

 戦闘機の機関銃にも使用される、指の太さほどもある巨大な弾丸が、音速を遥かに超える速度で射出された。

 魔法の詠唱も、闘気のバフも必要ない。

 ただそこにあるのは、近代科学が結集した純粋なる物理運動の極致。

 『レベル100』というゲーム的なステータスの概念など、圧倒的な質量の前には何の意味も成さなかった。

「……え?」

 ゼロスの視界で、世界がスローモーションになった。

 彼が全力で振り下ろした『決して砕けないはずのミスリルの聖剣』が、不可視の弾丸と激突した瞬間——ガラス細工のように、いとも容易く粉微塵に粉砕されたのだ。

 弾丸は聖剣を木っ端微塵に吹き飛ばしてもなお威力を失わず、そのままゼロスの右肩を覆っていたミスリルの肩当て(ショルダーガード)ごと、彼の右腕の肉と骨を豪快に削り飛ばした。

「あ…………?」

 ドパァァァァァァッ!と、遅れて鮮血が空中に舞い散る。

 右腕の機能を完全に破壊されたゼロスは、突進の勢いのままコマのように空中で回転し、十メートル以上後方へと吹き飛ばされ、地面を無様に転がった。

「…………ぁ、ぎゃ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 ワンテンポ遅れて、ゼロスの脳が『右腕が消し飛んだ』という激痛を理解し、絶叫が村に木霊した。

 彼は血だまりの中でのたうち回りながら、信じられないものを見る目でシンを睨みつけた。

「お、俺は……レベル100だぞ!? 課金したんだぞ!? なんで、なんでただの原住民の攻撃が、俺の聖剣を……っ!?」

「ひぃぃぃぃぃ! ごめんなさいごめんなさい! だから痛いから止めましょうって言ったじゃないですかぁぁ!」

 シンはバレットの重量に耐えきれずに反動で尻餅をつきながら、涙目で泣き叫んでいた。

 だが、その手にはすでに止血帯と医療用ガーゼが握られている。

「右肩の欠損! 大動脈損傷の恐れあり! 動かないでください、今すぐ【第一応答者】で止血しますから! 安心して、死なせはしませんから!」

「く、来るな……っ! 化け物ぉぉぉっ!!」

 泣き叫びながら、異様な手際で止血処置を施そうと迫り来るシンの姿は、ゼロスにとって死神よりも恐ろしい悪夢そのものだった。

 村人たちも、キャルルも、マンミアも、ただ息を呑んでその光景を見つめている。

 レベル100の勇者の全力攻撃を、見たこともない鉄の塊で一瞬にして粉砕し、さらに生かして冷酷に手当てを行う。

(なんて慈悲深く、無慈悲な死神……!)

 全員の心の中で、シンに対する『恐るべき勘違い』が決定的なものとなった瞬間だった。

「ひ、ひぃぃ……っ、ふざけんな……俺が、俺がこんなところで終わるわけねえ……!」

 ゼロスは激痛に顔を歪ませながら、残った左手で懐から通信用の魔石を取り出した。

 その瞳には、完全な敗北への恐怖と、最後の拠り所にすがるような卑屈な光が宿っていた。

「お、俺のバックにはな……『炎上神ワイズ』様がついてるんだぞ! ゴッドチューブの運営側、神様だぞ! お前らみたいな原住民が、神の配信を邪魔してタダで済むと思ってんのかぁぁっ!」

 血を吐きながら、ゼロスが神の権威を振りかざして脅迫してくる。

 だが、シンは止血帯を巻き終えると、ピタリと動きを止めた。

「……神様?」

 シンの声が、再び絶対零度のエージェントのトーンに戻る。

 彼のイヤホンから、ニャングルの声が聞こえていた。

『シンはん。上空にいくつも不可視のカメラが浮いとる。それに、なんやヤバい魔力の高まりを感じるで。上からデカいのが来るかもしれん』

 シンは、ゆっくりと天を仰いだ。

 ゴッドチューブ——配信。つまり、この胸糞の悪いヤラセを仕組んだ『元凶』が、上空の安全な場所からこの村を覗き見ているということだ。

(僕の安全な寝床を、上から監視している不審者がいる……?)

「……それは、いけませんね」

 シンは涙を拭い、冷たく呟いた。

 命をオモチャにする外道への、シークレットサービスとしての『最終処理』が始まろうとしていた。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「50口径エグすぎ!」「レベルの暴力を物理で粉砕!」「泣きながら止血する死神(笑)」と少しでもスカッとしていただけましたら、

ページ下部の【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

次回、ヤラセ神の配信を近代電子戦でハッキング!?

ざまぁ後半戦、完全決着です! 何卒よろしくお願いいたします!

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