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命乞いするビビリ警護官、0.1秒でヤラセ配信を物理で粉砕す〜近代兵器と極上メシでヒロイン達を餌付けする最強スローライフ〜  作者: 月神世一


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遅れてきた(偽)勇者——放火未遂は現行犯で制圧対象です

遅れてきた(偽)勇者——放火未遂は現行犯で制圧対象です

 クレイモア地雷の爆発によって魔物の大群が消え去り、ポポロ村の広場には再び平穏が訪れていた。

 硝煙の匂いが漂う中、自警団の面々は歓喜の雄叫びを上げ、みかん箱の上のリーザは「本日のライブはここまでですの!」と投げキッスをしてファン(村人)たちから五円玉を回収している。

「終わった……はぁ、生きた心地がしませんでしたよぉ……」

 一方の神谷シンは、防弾シールドの陰にへたり込み、涙目でガタガタと震えていた。

 無傷で勝利したというのに、この男の疲労困憊ぶりは凄まじい。極度の心配性である彼にとって、戦闘行為そのものが尋常ではない精神的負担なのだ。

「シン殿! 素晴らしい指揮と恐るべき兵器だった! このマンミア、貴方の背中に乗る日が待ち遠しいぞ!」

「だから乗らないでください! 僕はただ安全に……安全に……」

 フラフラと立ち上がりかけたシンの耳に、遠くから「パチパチ」という場違いな拍手の音が聞こえてきた。

「はっはっは! いやぁ、素晴らしい戦いぶりだった! だが、もう安心だ! 原住民の皆、悲劇に怯えるのはここまでだ!」

 広場の入り口から、白銀に輝くミスリルの鎧を身にまとった青年が、わざとらしい笑顔を浮かべて堂々と歩いてきた。

 太陽の光を反射してキラキラと輝くその姿は、絵に描いたような『正義の勇者』そのもの。彼の周囲には、透明な球体——ゴッドチューブの配信カメラがいくつも浮遊している。

「……誰ですか、あれ?」

 シンが涙を拭いながら首を傾げる。

「ああ。あれは最近『ゴッドチューブ』で話題になっている契約勇者、ゼロス・ディバインね。悲劇の村を救う救世主として売り出しているらしいけど……胡散臭い男だわ」

 キャルルがウサギ耳をペタンと寝かせ、警戒心を露わにする。

 ゼロスは広場の中央まで進み出ると、カメラを意識しながらバサァッ!とマントを翻した。

「さぁ、恐ろしい魔物どもに怯え、家族を失い泣き叫ぶがいい! この勇者ゼロスが、悲しみを背負う君たちに希望の光を——」

「「「…………」」」

「——与え……て……あれ?」

 ゼロスがキメ顔で作ったセリフは、空虚に響き渡った。

 村人たちは誰一人として泣いていない。それどころか、魔物は一匹残らずミンチになっており、村の被害は文字通り『ゼロ』。自警団員たちはリーザのライブの余韻で「リーザちゃぁぁん!」とペンライト代わりに松明を振っている。

「な、なんだこれは!? なんで誰も泣いてないんだ!? 魔物に襲われて、絶望のどん底にいるはずだろうが!」

 ゼロスの顔から爽やかな笑みが消え、苛立ちが顔を出す。

「おい、そこのヒョロガリ! お前が魔物を倒したのか!?」

 ゼロスが、まだ震えているシンを指差して怒鳴りつけた。

「ひぃっ!? ぼ、僕はただ、自分の身を守っただけで……」

「ふざけるな! おかげで俺の救出劇(見せ場)が台無しじゃねえか! スパチャが稼げないだろうが!」

 完全にカメラを忘れて地団駄を踏む勇者。

 その光景を呆然と見つめていたシンの耳元——透明な音響チューブイヤホンに、通信が入った。

『シンはん、聞こえるか? ワイや』

「ニャングルさん? どこにいるんですか?」

『村の役場の屋根裏や。望遠鏡であの自称勇者の装備を見たったんやが……呆れたもんやで。あのミスリルの鎧、魔力コーティングが一切されとらん。ただ見栄えを良くするために金で買っただけのハリボテや。武器の構え方も素人丸出しやな』

 戦術端末(ATAK)を介したニャングルの密告に、シンのプロとしての目がスッと細められた。

(ハリボテの装備……? スパチャが稼げないから怒っている? まさか……)

 シンの危機管理レーダーが、ひとつの『最悪の可能性』を弾き出した。

 この魔物の大群の襲撃は、彼が仕組んだマッチポンプ(自作自演)なのではないか?

「くそっ、このままじゃワイズ様に怒られる! 配信の撮れ高が足りねえんだよ!」

 ゼロスはギリッと歯を食いしばり、懐から真っ赤に燃え上がる結晶——『火炎魔石』を取り出した。

「仕方ねえ、魔物が全滅したなら、俺が自ら『悲劇』を作ってやるよ! 家の二、三軒燃やして、ガキでも火の海に放り込んでから助け出せば、視聴者は感動の涙を流すだろうが!」

 ゼロスは下劣な笑みを浮かべ、火炎魔石を村の木造の集会場に向けて投げつけようと振りかぶった。

「なっ……貴様、それでも勇者か!」

 マンミアが激怒して突進しようとする。だが、ゼロスの周囲にはまだ護衛の傭兵たちが控えており、距離が遠すぎた。

「ぎゃはは! 燃えろ、そして俺の踏み台になれ!」

 ゼロスが魔石を投げようとした、その瞬間。

「ひ、ひぃぃぃぃっ! 危ないですから、やめてくださいぃぃぃっ!」

 半泣きで絶叫しながら、シンがゼロスの足元に向かって『何か』を下手投げで転がした。

 コロン、コロン。

 それは、灰色の円筒形をした金属の筒だった。安全ピンはすでに引き抜かれている。

「あぁ? なんだこの鉄クズは——」

 ゼロスが見下ろした瞬間。

 ——パァァァァァァァァァァンッ!!!!

 炸裂音という言葉すら生温い、鼓膜を突き破るような爆音と、太陽が目の前で爆発したかのような強烈な閃光が、ゼロスの視覚と聴覚を完全に焼き払った。

 USSSが屋内突入時や暴徒鎮圧に用いる非殺傷兵器、**『M84 スタングレネード(通称フラッシュバン)』**である。

 発生する光量は数百万カンデラ、音量は百七十デシベル以上。防護装備なしで至近距離で浴びれば、人間は三半規管を完全に狂わされ、平衡感覚すら失う。

「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 ゼロスは火炎魔石を取り落とし、両手で顔を覆いながら地面をのたうち回った。

「め、目がぁぁ! 耳がキーンって! ぐあぁぁぁっ、なんだこれぇぇぇっ!」

 フラッシュバンの閃光は、物理的なダメージ(破片の飛散)を一切伴わない。

 しかし、その効果は絶大だ。ゼロスの周囲にいた傭兵たちも同様に目を押さえてうずくまり、完全に戦闘不能に陥っている。

「ひぃぃぃ……ごめんなさい、ごめんなさい! 痛いのは一瞬ですから我慢してください!」

 シンは泣きべそをかきながら、あらかじめ目を閉じ耳を塞ぐ防護姿勢をとっていたため、全くの無傷だった。

 彼はフラフラと立ち上がり、悶え苦しむゼロスを見下ろした。その瞳には、もはや怒りすらない。ただの『危険物排除』の冷徹な眼差しがあった。

「放火未遂は現行犯です。しかも、村人(護衛対象)を危険に晒そうとした。……僕の安全を脅かす不審者として、事務的に処理させていただきますね」

 シンが懐から結束バンド(タイラップ)を取り出し、ゼロスを拘束しようと手を伸ばす。

「ふ、ふざ……けるな……!」

 その時、ゼロスの身体から、ドス黒いオーラが噴き出した。

 目と耳を潰されながらも、彼は狂ったように笑い出し、懐から一枚の黒いカード——ゴッドチューブの課金アイテムを取り出した。

「ただの原住民が……俺を、ゴッドチューブの契約勇者をコケにしやがってぇぇぇっ!」

 ゼロスが叫ぶと同時に、彼のユニークスキル【マネー】が発動する。

「課金! 全額課金だ! 俺のステータスを、レベル100相当まで引き上げろぉぉぉっ!!」

 バチバチバチッ!と、ハリボテだったはずのミスリルの鎧が、黄金の闘気を帯びて異常なプレッシャーを放ち始めた。

 基礎訓練を一切積んでいないレベル1の肉体に、莫大なスパチャで買った『レベル100の腕力とスピード』が無理やり宿る。

「死ね! 村人ごと、ミンチにしてやるぅぅぅっ!!」

 視界が塞がったまま、ゼロスはデタラメに聖剣を振り回し始めた。

 だが、その速度と破壊力は凄まじい。聖剣から放たれた不可視の斬撃(ただの腕力による真空波)が、村の広場の石畳を深々とえぐり取っていく。

「ひぃぃぃっ!? レベル100!? なんですかそれ、チートじゃないですかぁぁ!」

 シンが悲鳴を上げて後ずさる。

 だが、その泣き顔の裏で、プロの警護官としての思考は、すでに『最も確実な無力化手段』を導き出していた。

(ステータスが上がっても、肉体の構造が物理法則を無視しているわけじゃない。なら——『物理的に超えられない火力』をぶつけるまでだ!)

 狂ったように剣を振り下ろす偽勇者に対し、シンの背後に、黒光りする『最凶の近代兵器』が実体化しようとしていた。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「フラッシュバンえぐい!」「現行犯で事務処理される勇者(笑)」「ついに課金ステータスの暴力が!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページ下部の【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

次回、課金でイキる勇者のステータスを、問答無用の「50口径」が蹂躙します!

最高のざまぁ展開をお届けしますので、何卒よろしくお願いいたします!

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