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命乞いするビビリ警護官、0.1秒でヤラセ配信を物理で粉砕す〜近代兵器と極上メシでヒロイン達を餌付けする最強スローライフ〜  作者: 月神世一


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闇夜の死蟲軍(ネクロバグ)と四つ目の悪魔——見えない敵は、全部見えるようにすれば安全です

闇夜の死蟲軍ネクロバグと四つ目の悪魔——見えない敵は、全部見えるようにすれば安全です

 ドワーフの交渉人・ガン鉄から『天魔窟の死蟲軍ネクロバグが動き出している』という警告を受けて以来、神谷シンの夜の睡眠の質は著しく低下していた。

「ひぃぃ……嫌だ。絶対に嫌だ。暗闇からカサカサ音を立てて、得体の知れない虫の化け物が襲ってくるなんて、想像しただけで心臓が止まりそうです……っ!」

 深夜のポポロ村。

 村長邸の私室で、シンは毛布にくるまりながらガタガタと震えていた。

 極度の心配性である彼にとって、『暗闇』という視界が塞がれた状態での奇襲は、最も致死率が高く、最も恐れるシチュエーションである。しかも相手は魔獣ではなく『機械の蟲』。人間の常識や痛覚が通じない可能性が高い。

(こんな状態で安心して眠れるわけがない! 僕の平穏な夜を取り戻すためには、村の夜間警備網をUSSSの最高警戒レベル——『デフコン1』まで引き上げるしかない!)

 シンはベッドから跳ね起きると、オーダースーツを羽織り、村の周囲に張り巡らせたセンサー群の調整に向かった。

 ***

 同時刻、ポポロ村の境界線となる森の中。

 月明かりすら届かない漆黒の闇の中を、音もなく這い進む『異形』の群れがあった。

 ——キシャ……キシャシャシャシャ……。

 鋼鉄の刃のようなカマを持つ、体長二メートルほどの巨大なカマキリとムカデを掛け合わせたような機械の蟲。

 天魔窟を根城とする魔人ギアンが作り出した合成死蟲兵ネクロバグ、その偵察部隊およそ三十匹である。

 彼らは生体パーツと機械が融合しており、体温を持たず、足音も立てない。通常の警備兵では、首を刈り取られるその瞬間まで接近に気づくことは不可能だ。

「……何か、嫌な予感がするな。松明の火を絶やすなよ」

 村の入り口で警戒に当たっていた自警団長マンミアが、不穏な空気を感じ取ってパイルバンカーを構えた。

 だが、ケンタウロスの夜目は人間のそれと大差ない。松明が照らせる数メートル先は、深い闇に包まれていた。

 死蟲兵たちは、獲物マンミアの死角へと完全に回り込み、鋼鉄の刃を振り上げた。

 闇に紛れた絶対の奇襲。マンミアの首が飛ぶまで、あと一秒——。

 ピピッ、ピピピピピッ!!

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ! 出たぁぁぁぁぁっ! デカい虫が出ましたよぉぉぉっ!!」

 突如として、村の役場の屋根に設置されたスピーカーから、シンの半狂乱の悲鳴が大音量で鳴り響いた。

「ギチィ!?」

 奇襲をかけようとしていた死蟲兵たちが、想定外の爆音に動きを止める。

「シ、シン殿!? 何事だ!」

 マンミアがスピーカーに向かって叫ぶ。

 その直後。

 バシュッ! バシュッ! バシュッ!

 闇の中から、くぐもった三回の発射音が響いた。

 マンミアの背後に迫っていた三匹の死蟲兵の頭部——いや、強固な鋼鉄の装甲の『継ぎ目』という数ミリの隙間を、不可視の弾丸が正確に撃ち抜いた。

「ギ、ギジャアアアアッ!?」

 内部の生体脳を破壊された死蟲兵たちが、緑色の体液を撒き散らしながらその場に崩れ落ちる。

「な、なんだ!? どこから攻撃が!?」

 マンミアが松明を掲げて周囲を見渡すが、何も見えない。

 ——ポポロ村の監視塔の上。

 そこに、漆黒の夜の闇に完全に溶け込んだ神谷シンの姿があった。

「あぁもう! 体温がないから熱源センサー(サーモグラフィ)をすり抜けてくるなんて、反則じゃないですか! 地面に仕掛けた振動センサー(地震計)がなかったら、僕が寝首を掻かれて死んでましたよ!」

 涙目で愚痴をこぼすシンの顔には、見慣れない『異様な装備』が装着されていた。

 ヘルメットにマウントされた、横に四つ並んだレンズを持つ巨大なゴーグル。

 米軍の特殊部隊デブグル(DEVGRU)や、USSSの特殊作戦チームが使用する最新鋭の広角暗視装置——『GPNVG-18(四眼式ナイトビジョン)』である。

 通常の単眼・双眼暗視装置の視野角が約40度であるのに対し、この四眼式は97度という、ほぼ人間の肉眼と同じ圧倒的な視野角を誇る。

 シンの網膜には、僅かな星明かりを数万倍に増幅した『真昼のように明るい緑色の世界』が広がっていた。

(視界さえ確保できれば、あとはただの的だ。……僕の睡眠を邪魔する害虫は、一匹残らず駆除する!)

 パニックに陥りながらも、シンの『プロとしての生存本能』は完全に研ぎ澄まされていた。

 彼はサプレッサー(減音器)を装着した『M4カービン』を構え、銃の前方に搭載されたレーザーデバイス(AN/PEQ-15)を起動する。

 肉眼では絶対に見えない『赤外線(IR)レーザー』が、暗視ゴーグルを通したシンの視界にだけ、真っ直ぐな光の筋となって死蟲兵の急所を捉えていた。

「危ないですから、村には入らないでくださいね。……害虫駆除ダブルタップ

 バシュッ、バシュッ!

 二発一組の精密な射撃が、闇の中に潜む蟲たちの急所を次々と穿っていく。

「ギシャアアアアッ!」

「ギギギ……ッ!」

 死蟲兵たちはパニックに陥った。

 彼らには、どこから攻撃されているのか全く理解できなかった。自分たちは完全な闇に紛れているはずなのに、はるか遠くから『必殺の不可視の一撃』が、自分たちの最も脆い部分をピンポイントで貫いてくるのだ。

「マンミアさん! 右前方の茂みに三匹! 左の廃屋の裏に五匹です! クレイモアの射線に誘導してください!」

 シンの指示が、トランシーバーを通じてマンミアの耳元に的確に飛ぶ。

「わ、分かった! 全然見えないが、シン殿の目にはすべて視えているのだな!」

 マンミアは暗闇の中、シンの声を絶対の道標としてパイルバンカーを構え、牽制の突進を行った。

 死蟲兵たちはマンミアの攻撃を避けるために後退する。だが、その後退先こそが、シンが日中に再構築した『絶対安全警護領域キルゾーン』だった。

「ひぃぃ、気持ち悪い! 痛いのは一瞬ですから、まとめて吹き飛んでくださいぃぃ!」

 カチッ。

 シンが震える手で起爆スイッチを握り込む。

 ドゴォォォォォォォォンッ!!

 深夜の森に、強烈な爆炎が上がった。

 扇状に配置された複数のM18A1クレイモアから、数千発の鋼鉄のパチンコ玉が秒速千二百メートルで放たれ、密集していた死蟲兵の残骸を文字通り『鉄の暴風雨』で粉砕した。

「ギ、ギャアアアアアッ……」

 断末魔の機械音と共に、三十匹の死蟲兵は一匹残らず鉄屑と緑の体液に変えられた。

 圧倒的な、そして一方的な蹂躙。

 夜の闇という彼らの最大の武器を、近代科学の『四つ目の悪魔(GPNVG-18)』によって完全に無力化された末の、無慈悲な駆除作業であった。

「……ふぅ。クリアです。全熱源——じゃなくて振動反応の消失を確認。はぁ……怖かった……」

 監視塔の上で暗視ゴーグルを跳ね上げたシンは、ようやくヘナヘナと座り込み、涙を拭った。

 だが、その一部始終を下から見上げていたマンミア、そして騒ぎを聞きつけて駆けつけたキャルルとニャングルは、月明かりに照らされた監視塔の上のシンを見て、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

(完全に視界を奪われた闇夜の中で、敵の数と位置を正確に把握し、不可視の攻撃で急所を撃ち抜く……)

(さっき、シンの顔に四つの目が緑色に光る『異形の兜』が見えたわ……。あれが、彼の持つ死神の真の力……!)

「シ、シン殿……! 貴方の目は、闇夜すらも真昼のように支配するというのか……! なんという恐ろしい御方だ……!」

 マンミアが震える声で感嘆を漏らし、その場に膝をつく。

「えっ? いや、これはただの機械で、電池で動いてるだけで——」

「言い訳は無用や、シンはん」

 ニャングルが煙管をふかしながらニヤリと笑う。

「ドワーフのオヤジが言っとった『死蟲軍』の偵察部隊を、村に傷一つつけずに完封しよった。アンタがおる限り、この村の夜は絶対の安全が保証されとるっちゅうことや」

「ふふっ。私の愛した男は、夜の闇すら自分のモノにするのね。ますます惚れ直したわ♡」

 キャルルがウサギ耳をパタパタと揺らしながら、熱っぽい視線を送ってくる。

「だから違いますってば! 僕は暗いのも虫も大嫌いなだけでぇぇぇ!」

 絶対的な夜間優位性ナイト・ビジョンによる見事な防衛戦。

 その結果、シンの『闇を統べる死神』という勘違いは、もはや訂正不可能なレベルへと昇華してしまったのであった。

 ***

 ——その頃。

 ポポロ村から遠く離れた、ドンガン地下帝国のさらに奥深く。

 瘴気に満ちた『天魔窟』の最深部で、巨大な水晶のモニターを睨みつけている男がいた。

「……僕の、僕の可愛い蟲たちが……たった数分で、全滅しただと……?」

 青白い肌に、昆虫のような複眼を持つ痩身の男——魔人ギアン。

 彼はギリッと歯を食いしばり、水晶のモニター(そこには、死蟲兵の視覚データが途切れる寸前の、緑色に光る四つ目の悪魔の姿が映っていた)を拳で叩き割った。

「ポポロ村……あの小さな村に、これほどの兵器を操る化け物が潜んでいるというのか……! 許さない、僕の芸術ネクロバグを塵芥のように粉砕するなんて……!」

 ギアンの背後で、偵察部隊とは比較にならないほどの巨大な鋼鉄の蟲——合成死蟲将軍機ネクロキメラ・ジェネラルが、ギチギチと不気味な産声を上げていた。

「待っていろ、四つ目の悪魔。次は僕の最高傑作で、その村ごと貴様を食い尽くしてやる……!」

 ビビリのオカン系暗殺者と、蟲を操る魔人。

 両者の本格的な激突の時は、もう目前にまで迫っていた。

 そしてその激闘の最中、ポポロ村には、さらなる『理不尽な天災(天然エルフ)』が降り立とうとしていることを、シンはまだ知らない。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「四眼ナイトビジョンかっこいい!」「暗闇での一方的狙撃たまらん!」「また勘違いが深まった(笑)」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページ下部の【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

シンの夜の安全は死守されましたが、敵のボスがキレてしまいました!

次回、さらにヤバい敵……そして、ヤバすぎる「新ヒロイン(天然災害)」がやってくる!?

引き続き、何卒よろしくお願いいたします!

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