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命乞いするビビリ警護官、0.1秒でヤラセ配信を物理で粉砕す〜近代兵器と極上メシでヒロイン達を餌付けする最強スローライフ〜  作者: 月神世一


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善意の災害級エルフ襲来——火事には米軍仕様の消火システムで対応します

善意の災害級エルフ襲来——火事には米軍仕様の消火システムで対応します

 死蟲軍ネクロバグの夜襲を無事に退けた翌朝。

 ポポロ村は、文字通り『別の意味での大炎上』に見舞われていた。

「ひぃぃぃぃぃっ!? な、なんですかあれは!? 森が! 村のすぐそばの森が燃えてますよぉぉっ!」

 朝食の準備をしていた神谷シンが、窓の外を見て頭を抱えて絶叫した。

 ポポロ村に隣接する森の一部が、轟々たる炎に包まれている。しかもただの山火事ではない。炎そのものが巨大な『龍』の形を成し、周囲の木々を無差別に焼き尽くしているのだ。

「キャルルさん! 敵襲ですか!? 昨日の蟲の親玉が攻めてきたんですか!?」

「ち、違うわシン! あれは精霊魔法よ! しかもあの規模……国家の軍隊クラスの魔力を持った魔法使いが放ったものだわ!」

 パジャマ姿のキャルルが青ざめながらウサギ耳を逆立てる。

 自警団長のマンミアもパイルバンカーを構えて駆けつけた。

「報告する! 村の入り口付近の街道で、巨大なゴーレムが地面を陥没させながら徘徊している! さらに森では火炎龍が暴れているぞ!」

「ゴーレムに火炎龍!? なんですかその地獄絵図は! 早く止めないと村に延焼して僕が焼け死にます!」

 シンは半泣きになりながら、オーダースーツの上に急いでタクティカルベストを羽織り、現場へと猛ダッシュした。

 ***

 村の入り口、炎に包まれた森のすぐそば。

 そこに、地獄絵図とはおよそ不釣り合いな、ふわふわのお嬢様ドレスに身を包んだ一人の美しい少女が立っていた。

 透き通るような白い肌に、長く美しいエメラルドグリーンの髪。そして、尖った長い耳。

 エルフ族の少女は、燃え盛る火炎龍と、道路をボコボコに陥没させながら雑草をむしる巨大ゴーレムを前に、ニコニコと微笑んでいた。

「あらあら、これで少しは暖かくなりましたかしら? 道路のゴミもすっかり綺麗になりましたわね」

「なってねえよ!! 街道が完全にぶっ壊れとるわ!!」

 現場に駆けつけていた財務官のニャングルが、涙目でツッコミを入れている。

「ニャングルさん! 状況は!?」

 シンが防弾シールドを構えながら合流する。

「シ、シンはん! 手ェ出したらアカンで! あの娘、エルフの『世界樹の森』の次期女王候補、ルナ・シンフォニアや! 極度の方向音痴で迷子になっとったらしいんやが……」

「迷子!? じゃあこの火事とゴーレムは!?」

「村の子供が『朝は少し冷えるね』って言うたから火炎龍を召喚して、道端に葉っぱが落ちとったから『汚れてるわ』言うてお掃除ゴーレムを出しよったんや!」

「善意!? 善意のテロリズムじゃないですかぁぁ!」

 シンは絶望的な表情で叫んだ。

 悪意のある攻撃なら排除すればいい。しかし、完全に純粋な善意で(結果的に)村を破壊しようとしている天然の災害など、どう対処すればいいというのか。

「おや? 貴方がこの村の責任者の方ですか?」

 ルナがシンの姿に気づき、優雅にお辞儀をした。

「申し訳ありません、道に迷ってしまいまして。ですがご安心を。村の環境整備と温度管理は、私と植物のお友達が完璧にこなしておきましたわ」

「インフラが崩壊してるんですけどぉぉ!」

 ゴォォォォォッ!!

 ルナが微笑んでいる間にも、火炎龍が村の防護柵に引火しそうになっていた。

(このままじゃ村が燃える! 僕の安全な寝床とキッチンが灰になっちゃう!)

「……危ないですから、火遊びは止めましょうね」

 恐怖が限界を突破し、シンの声が『絶対零度のエージェント』へと切り替わった。

 シンは【合衆国官給品ガバメント・イシュー】を起動。

 空間が歪み、彼の手元に現れたのは、真っ赤な塗装が施された巨大な金属の筒——米空軍が航空機火災の消火に用いる、背負い式の『CAFS(圧縮空気泡消火システム)』だった。

「ひぃぃぃ! 熱い熱い熱い! 痛いのは嫌ですからぁぁ!」

 シンは涙目でノズルを火炎龍に向け、トリガーを全開で引いた。

 ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

 特殊な界面活性剤と圧縮空気が混合された、圧倒的な体積の『白い泡』が猛烈な勢いで噴射された。

 魔法の火炎龍といえども、燃焼の三要素(酸素・熱・可燃物)の法則からは逃れられない。分厚いCAFSの泡が瞬時に火炎龍を包み込み、酸素を完全に遮断。さらに急速な冷却効果によって、数十メートルあった火炎龍は、わずか数秒でジュワァァァッと音を立てて鎮火、消滅してしまった。

「……え?」

 ルナが目を丸くして固まった。

「私の……大精霊級の火炎魔法が、謎の白い泡で、一瞬で……?」

「ふぅ、ふぅ……っ! ああもう、死ぬかと思いました! むやみに火をつけないでくださいよ!」

 シンは消火器を下ろし、膝に手をついてゼェゼェと息を切らしている。

「す、素晴らしいですわ……! 魔法も使わずに、これほどの現象を鎮めるなんて……!」

 ルナの瞳が、キラキラと輝き始めた。

「お詫びと言っては何ですが、私、お金には困っておりませんの。これ、お近づきの印ですわ」

 ルナが手をかざすと、空間から眩い光が放たれ、ゴトリ……と。

 巨大な『純金(およそ100キログラム)』の塊が、シンの足元に転がった。世界樹から彼女に毎月送られてくる「お小遣い(年金)」である。

「「「…………」」」

「あーっ! アカンアカンアカン!!」

 ニャングルが顔面を蒼白にして純金の塊に飛びついた。

「こんなモンが市場に流れたら、ポポロ村どころか三大国の経済がハイパーインフレ起こして崩壊するわ! コンプライアンス違反や! 即刻、村長邸の地下室に塩漬け(封印)やぁぁぁっ!」

「経済まで破壊しようとしないでくださいよぉぉ!」

 シンは頭を抱えた。

 このままでは、戦闘が起きる前に村が内部崩壊してしまう。彼女の行動を大人しくさせ、かつ害のない方向へ誘導しなければ。

「……ルナさん、お腹、空いてませんか?」

「あら。そう言われますと……少し」

 エルフは肉食を好まない。だが、野菜や果物だけでは満足感に欠けることもある。

 シンはすぐさま【安全保障配給セーフティ・レーション】を起動した。

「これ、食べてみてください。僕の特製『大豆ミート(植物肉)のハンバーグ』と、新鮮な野菜のスムージーです。毒物ゼロ、完全植物性ですからエルフの貴女でも安心です」

 お盆の上に乗せられたのは、肉汁(に見立てた特製植物オイルと旨味成分)が溢れ出す、分厚いハンバーグステーキ。

 ルナは不思議そうにフォークを刺し、一口食べた。

「——っ!!」

 ルナの尖った耳が、ピーン!と直立した。

「な、なんですのこれは……!? まるでお肉のような食べ応えなのに、自然の恵みがギュッと濃縮されていますわ! 世界樹様から届く最高級の蜂蜜よりも、ずっと、ずっと美味しい……!」

 ルナは優雅な所作ながらも、猛烈なスピードで大豆ミートハンバーグを平らげ、スムージーを飲み干した。

 精神的デバフを解除するレーションの効果により、彼女の天然特有の『無意識の暴走衝動』が、スゥッと落ち着いていく。

「私、決めましたわ」

 ルナがナプキンで口元を拭い、満面の笑みでシンを見つめた。

「貴方のご飯、とっても素晴らしいですわ。私、今日からこの村で、貴方と同じ家に住まわせていただきます」

「「はぁ!?」」

 背後から、キャルルとリーザ(いつの間にか起きてきていた)の怒声が響いた。

「ちょっとアンタ! シンの横は私の特等席よ! 森に帰んなさい!」

「そうですの! シンさんは私のプロデューサーですの! ゴミ屋敷エルフはお断りですの!」

 キャルルとリーザが猛抗議する。

 だが、ルナはニコリと微笑むと、空間魔法で『完璧に熟した、超高級フルーツの盛り合わせバスケット』を実体化させ、リーザにスッと差し出した。

「お近付きの印ですわ」

「……お姉様! 私たちのシェアハウスへようこそですのぉぉぉ!」

「リーザ! アンタまた食べ物で買収されて!!」

 極貧アイドルは、秒でエルフの軍門に降った。

「あぁもう! また面倒な同居人が増えた! 僕の胃に穴が空きますよぉぉ!」

 純金100kgを地下室に封印し、火炎龍を消火し、天然災害エルフを大豆ミートで餌付けする。

 神谷シンの胃薬が手放せないドタバタシェアハウス生活は、新たなヒロインの加入によってさらなる混沌へと突き進んでいた。

 ——だが。

 その平穏(?)な日常を切り裂くように、シンの懐の戦術端末『ATAK』が、かつてないほどのけたたましい警報音レッドアラートを鳴らした。

「な、なんだ!?」

 マンミアがパイルバンカーを構える。

『シンはん!! レーダーがエラいことになっとるで!』

 通信機からニャングルの悲鳴が飛ぶ。

『天魔窟の方向から、熱源反応が一つ……いや、違う! 熱源は一つやが、サイズがおかしい! 家よりデカいバケモンが、猛スピードでこっちに向かっとるで!!』

 ズズン……ズズン……!!

 遠くの大地が揺れる。

 昨夜、シンが偵察部隊を全滅させたことに激怒した魔人ギアン。彼が差し向けた最高傑作——『合成死蟲将軍機ネクロキメラ・ジェネラル』が、ポポロ村を平地にすべく、その巨大な姿を現そうとしていた。

「ひぃぃぃぃぃぃっ! だから嫌だって言ったじゃないですかぁぁっ!!」

 ビビリのプロフェッショナルと、彼を取り巻くワケあり美少女たち。

 ポポロ村の絶対防衛戦・第2幕(死蟲軍襲来編)が、ついに火蓋を切られようとしていた。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「天然災害エルフ襲来!」「米軍消火器で火炎魔法を鎮圧(笑)」「フルーツで買収されるアイドル」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページ下部の**【ブックマークに追加】**と、

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

これにて第1章〜導入編が完了し、物語は第2章【巨大蟲防衛戦】へと突入します!

果たしてシンは、家よりデカい敵をどうやって「安全に」処理するのか!?

引き続き、シンの胃痛防衛ライフの応援を何卒よろしくお願いいたします!

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