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命乞いするビビリ警護官、0.1秒でヤラセ配信を物理で粉砕す〜近代兵器と極上メシでヒロイン達を餌付けする最強スローライフ〜  作者: 月神世一


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平和な村と、オカン系暗殺者の誕生——最後の晩餐ではありません、ただの豚汁です

平和な村と、オカン系暗殺者の誕生——最後の晩餐ではありません、ただの豚汁です

 神のヤラセ配信をハッキングによって物理的に遮断し、課金でステータスを偽造していた偽勇者ゼロスをタイラップで縛り上げる。

 この一連の『事務処理』を終えた神谷シンは、ようやく心の底からの安堵の息を吐き出していた。

「はぁぁぁ……終わった。終わりましたよね? 雷も落ちてきませんし、もう斬りかかってくる不審者もいませんよね……?」

 涙でぐしゃぐしゃになった顔をハンカチで拭い、シンはよろよろと立ち上がった。

 彼の極度の心配性から来るパニックは、脅威が完全に排除されたことで急速に落ち着きを取り戻しつつあった。

 よし、これで平和な日常が戻ってくる。安全なベッドで寝られるぞ。

 そう思ったシンだったが——ふと顔を上げた瞬間、広場を包む『異様な空気』に気づいて背筋を凍らせた。

「「「…………」」」

 ポポロ村の村人たち、自警団の面々、そして傷ついた身体を癒やした者たち全員が、静まり返ったまま、シンをじっと見つめていたのだ。

 その瞳に宿っているのは、感謝や安堵ではない。

 得体の知れない怪物に対する『底知れぬ畏怖』と、神すらも地に引きずり下ろす絶対者への『熱狂的な崇拝』だった。

(ひぃぃぃっ!? な、なんですかその目は! 僕はただ、自分が死にたくなかったからちょっとやりすぎただけで……っ!)

「素晴らしいわ、シン……!」

 ドンッ!

 背後から、柔らかくも力強い衝撃がシンの背中を襲った。

 振り返る間もなく、月兎族の村長・キャルルがシンの背中に抱きつき、その逞しい腕(ウサギ耳の少女とは思えないほどのホールド力)で彼をガッチリと拘束していた。

「神の怒りを恐れず、雷雲を消し去り、圧倒的な力を持つ勇者を赤子のように捻り潰す……。泣き叫んで相手を油断させる巧妙な手口も、その冷酷な手際も、すべてが完璧よ。私の見込んだ男に間違いはなかったわ!」

「ひ、ひぃぃ!? 苦しいです! キャルルさん、腕の力が尋常じゃない! 骨が! 骨が折れますぅぅ!」

 ヤンデレ特有の重すぎる愛を全身で浴びせられ、シンはタップするようにキャルルの腕をペチペチと叩く。

「シン殿ぉぉぉっ! 貴方の強さは本物だ! 私のパイルバンカーなど、貴方の持つ黒い鉄塊(バレットM82A1)に比べれば児戯にも等しい! どうか、どうかこの未熟な私を、貴方の背に乗せて導いてくれぇぇっ!」

 自警団長のマンミアまでもが、顔を真っ赤にしてケンタウロスの前足を折り曲げ、シンの前で完全な服従のポーズをとっている。

「ち、違います! 誤解です! 僕はただの一般人で、血を見るのも痛いのも大嫌いな、しがない裏方なんです! 死神とか暗殺者とか、そんな恐ろしいものじゃありませんからぁ!」

 必死に弁解するシンだったが、当然ながら誰一人としてそんな言葉を信じはしなかった。

 レベル100の勇者を瞬殺し、神の回線をハッキングで乗っ取った男が「一般人」であるはずがないのだ。

(まずい、まずいぞ! このままだと変に神格化されて、面倒な権力闘争に巻き込まれたり、逆に危険視されて他国から命を狙われたりする! 僕の平和な日常が遠ざかっていく!)

 シンの危機管理レーダーが、新たなリスクの到来を告げていた。

 自分は『無害な人間』であると、この場ですぐに証明しなければならない。戦闘狂でも、冷酷な暗殺者でもない、ただの家庭的な男であることを。

「……よし! 皆さん、戦いで疲れてお腹が空きましたよね!? 僕が今から炊き出しをしますから、食べて落ち着きましょう!」

 シンはポンッと手を叩き、スキル【安全保障配給セーフティ・レーション】を起動した。

 だが、今回取り出したのはサンドイッチでもコーヒーでもない。

 真っ白な『割烹着』と、巨大な寸胴鍋、そして見慣れない食材の数々だった。

 シンは手際よくオーダースーツの上着を脱ぎ捨て、ワイシャツの袖を捲り上げると、その上に真っ白な割烹着を身につけた。

「え……?」

 村人たちがポカンと口を開ける。

 つい先ほどまで、冷酷無比な死神のオーラを放っていた男が、まるでお母さんのような割烹着姿でまな板の前に立ち、トトトトトトトッ!と信じられないほどの包丁さばきで野菜を刻み始めたのだ。

「戦いの後は、やっぱり温かくて塩分の効いた食事が一番です。USSSシークレットサービスでも、極限状態の要人には胃に優しいものを出しますからね。今夜は『特製豚汁』と『塩むすび』です!」

 シンは寸胴鍋に胡麻油を引き、豚バラ肉、大根、人参、ゴボウ、こんにゃくを炒め始める。

 ジュワァァァァッ!という食欲をそそる音と共に、肉の脂の甘みと根菜の香ばしい匂いが広場いっぱいに広がっていく。

 そこに、アゴ(トビウオ)と昆布から丁寧にとった極上の黄金出汁を注ぎ込み、特製の合わせ味噌を溶かし入れた。

 ポコポコと煮立つ鍋から立ち上る、暴力的なまでに芳醇な和の香り。

 さらにシンは、炊き立てのツヤツヤに輝く白米(アナステシア世界の米麦草ではなく、地球の最高級コシヒカリ)をボウルに移し、絶妙な塩加減でふんわりと、空気を包み込むように三角形のおにぎりを握っていく。

「はい、お待たせしました! 毒物混入率0%、精神的デバフ完全解除効果付きの豚汁と塩むすびです! 熱いうちにどうぞ!」

 シンはニッコリと、本当に人が良さそうなオカンのような笑顔を浮かべ、木のお椀にたっぷりとよそった豚汁を村人たちに差し出した。

「「「…………」」」

 だが、村人たちは誰一人としてお椀を受け取ろうとしない。

 それどころか、ゴクリと生唾を飲み込みながら、怯えたように後ずさっていく。

(な、なんだこの状況は……? さっきまで神を落としていた男が、急に割烹着を着て飯を作ったぞ……?)

(ま、まさか……俺たちの働きが悪かったから、これで毒殺して村を乗っ取る気か!?)

(し、死神が振る舞う、最後の晩餐だぁぁっ!)

 シンの意図とは完全に裏腹に、村人たちの勘違いはさらに明後日の方向へと爆走していた。あまりのギャップに、脳の処理が追いついていないのだ。

「あ、あれ? おかしいな……すっごく美味しいはずなんですけど」

 シンが困惑して眉を下げた、その時だった。

「もぐもぐもぐもぐ! はふっ、ほふっ! んまぁぁぁぁぁぁぁいっ!!」

 シンの隣で、みかん箱から降りたリーザが、すでに両手に塩むすびを持ち、口の周りに米粒をつけながら猛烈な勢いで豚汁をかき込んでいた。

「なっ、リーザさん!? いつのお椀を……って、もう三杯目!?」

「ズズズズズッ! ぷはぁぁぁっ! なんですのこれ、お出汁の旨味が五臓六腑に染み渡りますの! お肉の脂が甘いですの! お米が、お米が甘くて一粒一粒が輝いていますのぉぉぉっ!」

 極貧生活でパンの耳しか食べてこなかったリーザにとって、シンの作る『絶対安全の極上和食』は、もはや麻薬以上の依存性を持っていた。

 彼女は感動のあまり滝のように涙を流しながら、塩むすびを次々と胃袋に流し込んでいく。

「あぁ……心が、ポカポカしますの。今まで一人で、寒くてひもじい思いをしてきたのが、嘘みたいに……」

 リーザの言葉通り、シンの【安全保障配給】には精神的疲労を完全に癒やすバフ効果がある。戦いの恐怖で強張っていた村人たちの心も、その香りを嗅いでいるだけで不思議と解きほぐされていった。

「お、おい……あのアイドルちゃんが食べてるんだ、毒は入ってないみたいだぞ」

「い、いい匂いだ……俺も、一口だけ……」

 おずおずと進み出た自警団の男が、シンからお椀を受け取り、豚汁を一口すする。

「——っ!!」

 男の目が見開かれ、手から武器がポロリとこぼれ落ちた。

「う……うまい……! なんだこれ、優しい味だ……。婆ちゃんが作ってくれたスープより、ずっと温かくて……涙が止まらねぇよぉぉっ!」

「俺にも! 俺にもくれ!」

「私にもちょうだい!」

 そこからはあっという間だった。

 シンの前に長蛇の列ができ、村人たちは豚汁と塩むすびを口にするなり、全員がそのあまりの美味さと温かさに涙を流して崩れ落ちた。

 戦闘の狂気と恐怖はどこへやら。広場は、割烹着姿のシンが振る舞う炊き出しに舌鼓を打つ、平和で温かい宴の場へと完全に変貌していたのである。

「ふふっ、本当に美味しいわ。貴方の作るご飯は、身体の隅々まで愛が染み渡るようね」

 キャルルも豚汁をすすりながら、トロンとした目でシンを見つめている。

「ねぇ、シン。貴方は本当に不思議な人。敵にはどこまでも冷酷なのに、私たちにはこんなに優しい顔を見せてくれる……。私、もう貴方のいない生活なんて考えられないわ」

 ヤンデレ村長の好感度が、ついに限界を突破してカンストした音がした。

「そ、そうですの! シンさんのご飯がないと、私、生きていけない体になっちゃいましたの!」

 リーザが空になったお椀を突き出しながら、シンの腰にガバッと抱きつく。

「約束通り、今日から私のプロデューサーとして、私と一緒に住むんですの! 朝昼晩、三食おやつ付きでお願いしますの!」

「ちょ、ちょっと待てリーザ! シンは私の専属護衛よ! 住むなら私の村長邸に決まっているでしょ!」

 キャルルがリーザの首根っこを掴んで引っ張る。

「ズルいぞ村長! シン殿の食事と手当ては、私のような前線で戦う騎士にこそ必要不可欠! シン殿、どうか私を背中に——いや、私のお腹を満たしてくれぇぇっ!」

 マンミアまで顔を真っ赤にして参戦してくる。

「ひぃぃぃっ! やめてください! 僕はただ、平和に一人で静かに暮らしたいだけなのにぃぃぃっ!」

 村人たちの「死神」という勘違いは、極上の飯テロによって「最高に料理が美味い、お母さんのような死神(オカン系暗殺者)」というさらに厄介なものへと進化してしまった。

 偽勇者を縛り上げた傍らで、三人の美少女たちに囲まれ、割烹着姿で泣き叫ぶ元シークレットサービス。

 神谷シンの異世界における平穏への道は、まだまだ果てしなく遠いようである。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「割烹着を着た死神(笑)」「豚汁と塩むすびの飯テロ最高!」「ヒロインたちの胃袋を完全掌握!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページ下部の【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

これにて第1章の激動の一夜が幕を下ろします。

ここからは、シンの「絶対安全な防衛生活」と「賑やかなハーレム同居生活」が本格スタート!

次回もどうぞよろしくお願いいたします!

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