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第41章 アークリッチ

談笑も束の間だった。

広間の空気が――すっと、刺すように冷え込んだ。


四人全員、反射的に身を強ばらせる。


次の瞬間、頭の中に直接、別の声が流れ込んできた。


(……我が傀儡の呪いを解くか。肉体を長く保つため、生かしておいただけだというのに……殺しておくべきだったか。

……まあよい。ならば――貴様らを新たな傀儡として迎え入れよう)


ぞわっ……!


四人の背筋を、冷たい悪意が這い上がる。


広間の中央で、空間が“黒く染まり始めた”。


影が液体のように渦巻き、

渦は収束し、

収束は形を成し、

やがて――“人間の形”へ。


グギ……ギ……。


骨の軋むような音と共に、闇がほどける。


姿を表したのは――

闇を纏い、紫紺の瘴気を噴き出す“骸骨の魔人”。


その存在だけで、空気が重く沈む。


フィリスの手が思わずイグニシアを握り直し、マリナは青ざめた顔で震える唇を動かした。


「あ……あれは……エルダー……違う……」


マリナの声は細く震えた。


「――アークリッチ……!」


それは、絶望を具現化したかのような魔の王だった。


「……ぐっ……ッ!」


ダリオは槍を構えながら、肩で息をした。

額には大粒の汗。手が震えている。


「凄まじい……これが……アークリッチの“圧”かよ……立ってるだけで……押し潰されそうだ……!」


フィリスも、普段なら絶対に見せないような怯えを浮かべていた。


「ちょ、ちょっと待ってよ……!アークリッチって……伝説級の魔物じゃない……!

なんで、こんな……十階層に……!」


瘴気の渦が四人の精神をじわじわ侵食する。


胸の奥に冷たい手を突っ込まれたような感覚――そのまま心臓を握られているかのような、圧倒的な殺気。


(いけない……このままじゃ……全員心が折られる……!)


マリナは必死に錫杖を握りしめた。


「フィリス……みんな……耐えて……!」


彼女は錫杖を高く掲げ、強く地面を踏みしめる。


「――《ブレイブ・ハート》!!」


光が弾け、暖かい波動が四人の胸に流れ込む。冷え切った心臓が、再び脈打ち始めるような感覚。


「……っ!身体が……軽い……!」


ダリオの目に、戦士の光が戻る。


「さすがねマリナ!ひえぇ……助かったわ!」


フィリスも肩の力を取り戻し、イグニシアを構える。


広間の奥で、アークリッチがゆっくりと腕を広げた。


(……ほう。我が悪意に呑まれず、なお立つか。小虫にしては……なかなかだ……)


冷え切った声が頭の奥に直接響いてきた。


「こりゃあ、簡単には逃がしてはくれなさそうだな……」


ダリオは低い声で槍を構える。


「こうなったらやるしかないわね……丈太郎くん、先頭を頼める?」


フィリスが背後に声をかけたが、返事がない。


「丈太郎くん?」


振り向く。


そこにいたのは――

膝を床につき、両腕で自分を抱きしめ、ガタガタと震える丈太郎だった。


顔面蒼白。瞳孔は開ききり、呼吸は乱れ、まともに声にならない。


「あ……ああ……ッ……」


丈太郎は吐き出すような呻きを漏らしている。


「丈太郎くん!!」


フィリスが駆け寄り、肩を掴んで揺さぶる。


「しっかりして!ねぇ、聞こえてる!? 丈太郎くん!!」


だが、丈太郎の目は空虚で、フィリスの声は届いていない。


「フィリス!ど、どういうこと!?丈太郎さんは無敵なんじゃ……!」


マリナの声は恐怖で震えていた。


フィリスは食いしばった歯の隙間から、掠れた声で言う。


「……あいつが放ってるのは、“恐怖”よ……

呪いでも魔法でもない……もっと原始的で、もっと根源的な……精神を直接ねじ伏せる“恐怖”……!」


フィリスは唇を噛みしめる。


「丈太郎くんの絶対防御は……外からの干渉は無効化できても……内側に生まれる感情までは守れない……!しかも……能力のせいで“ブレイブハート”は丈太郎くんにだけ効かない……魔力を持たない彼には……心を守る術がない……」


マリナは息を呑む。


「そんな……だってそれじゃ……丈太郎さんだけ……生身のまま……!」


「そうよ……丈太郎くんは今……“初めて死を感じてる”の……」


フィリスの横顔は、悔しさと焦りで歪んでいた。


(私は……丈太郎くんに頼りすぎていた。

その無敵の能力に……

その異常な成長スピードに……

そして――その優しさに…)


フィリスは悔しさを噛みしめるように目を伏せた。


「……師匠失格ね」


その声は、どこかひどく静かだった。

だが次の瞬間。


彼女は震える丈太郎の身体を、そっと抱きしめた。


「丈太郎くん……大丈夫。安心してなさい」


耳元で、囁くように優しく。

その声音は、炎ではなく――温かい光のようだった。


「フィリス……」


マリナが不安げに呼びかける。


フィリスは抱きしめていた丈太郎から離れ、ゆっくりと立ち上がった。

恐怖の気配に満ちた広間の中で、ただ一人、確かな強さを宿す。


その瞳は――烈火そのもの。


「……あいつを倒せば、全部終わるわ」


ゆらりとイグニシアの刀身が赤く光る。


「そうこなくちゃな」


ダリオがにやりと笑い、槍を構える。


「今度は俺達が……丈太郎くんを守る番だ」


「ええ……丈太郎さんに救われた命。絶対に無駄にはしない!」


マリナは震えを抑えながら、錫杖を握りしめた。その表情には恐怖と、そして覚悟が宿る。


広間に、冷たい影がそよぐ。


(ほう……まだ我に刃向かうか。ならば――抗ってみせよ。愚かな人間どもよ)


アークリッチの声は、空気さえ凍らせるほど冷たい。


「2人とも……行くわよ!」


フィリスの怒号は、恐怖を焼き払う炎のように響き渡った。


「よくも俺の身体を……おもちゃにしてくれたな!」


ダリオの怒気が爆ぜる。


槍が閃光に包まれ、空気が焦げるような臭いが広間を満たす。


「――ライトニング・グレイブ!!」


轟ッ!!


雷が一本の槍となり、アークリッチの胸を貫いた。雷光が闇色のローブを焼き裂き、骨の奥まで閃光が走る。


「今よ、フィリス!」


「任せて!」


フィリスの刀が真紅に燃え上がる。


「――インフェルノ・スラッシュ!!」


灼熱の斬撃が雷光の残滓をなぞるように、アークリッチの身体を二度目の刃で引き裂く。


続けてマリナが錫杖を高く掲げる。


「浄化の光よ……!

――ホーリー・ブラスト!!」


白い閃光が爆ぜ、闇を打ち払うようにアークリッチの全身を包み込む。


ズガァァァァンッ!!


雷、炎、浄化の光――

三つの力が一点に叩き込まれ、衝撃が広間中に響き渡る。


灰煙が舞い、床石が砕け散る。


「……やったか!?」


ダリオは息を荒げつつ、ニヤリと笑う。


しかし。


灰煙の奥から――

コツ、コツ、と乾いた音が聞こえ始めた。


まるで骨が床を叩くような、不気味な足音。


その歩みは、少しも乱れていなかった。


アークリッチの胸には――

大きな穴が空いていた。


だが、その穴は“闇”が逆流するように収束し、ズルリ……と閉じていく。


まるで最初から傷などなかったかのように。


「……な、なんだと……」


ダリオは槍を握る手をわずかに震わせる。


「やっぱり……駄目なのね……」


マリナの声はかすれ、表情には諦めの色が滲んだ。


「どういうことよ、マリナ?」


フィリスが問い詰める。


マリナは恐怖で乾いた唇を噛む。


「伝承では……アークリッチは“不滅”。

物理も魔法も――ほとんどの攻撃が意味を成さないって……」


「そんな……じゃあ、倒せないってこと……?」


フィリスの喉がつまる。


マリナは絞り出すように続けた。


「理論上は……身体を構成する“瘴気核コア”を破壊すれば倒せるわ。

でも、その核は物理も魔法も通じない……。だから、歴史上ずっと“封印する”のが唯一の対処法だったの」


「封印しか……方法がない……?」


フィリスの胸が冷たく締めつけられる。


(無敵……丈太郎くんの“絶対防御”と同じ……でも――こいつは攻撃してくる。不死で、躊躇なく殺しにくる……)


フィリスの背筋に、初めて“絶望”が這い上がってきた。


(もう良いのか……? ならば――滅せよ)


アークリッチの声が響いた瞬間、その前方に闇がぐねりと収束し始めた。


黒い炎――

いや、“炎に似た何か”が形を成す。

光を吸い、空気を殺し、周囲そのものを腐らせるような闇。


「来るぞ!!」


ダリオが叫ぶ。


次の瞬間、闇炎が轟音すらなく、

ただ黒い線となって一直線に飛ぶ。


「ホーリーシールド!!」


マリナが光の盾を展開する。


闇炎は光の壁にぶつかり、ジジジ……と音もなく光を侵食し始めた。


「くっ……! だめ……押し切られる……!」


マリナの顔が苦悶に歪む。


すぐさまフィリスが手をかざす。


「ファイアウォール!!」


炎の壁がホーリーシールドを包むように出現。

しかしそれすらも闇炎に触れた部分から、じわじわと“黒く腐って”消えていく。


「フィリス……助かった……けど……!」


「これも……長くはもたない……どうすれば……!」


マリナの声が震える。


「チッ……ライトニング・グレイブ!!」


ダリオが雷槍を投げ放つ。

雷光がアークリッチの身体を貫き、大穴を穿つ。


しかし次の瞬間――

その穴は泡立つ闇のようにうごめき、閉じていった。


「効かねぇ……! なんなんだよ化け物が……!」


ダリオの顔に焦りが広がる。


その間にも、アークリッチは“感情のない動作”で闇炎を放ち続ける。


まるで、


「次の瞬間には皆殺しにできるが、あえて時間をかけている」


と言わんばかりの圧倒的な余裕。


フィリスの炎の壁が削れる音がする。

マリナの光の盾にひびが入る。


絶望が、じわりじわりと三人を呑み込んでいく。


(このままじゃ……死ぬ……)


誰もが、その未来を確信した。


ーーーーーーー


「しっかりして!聞こえてる!? 丈太郎くん!!」


フィリスの声が――届いている。

でも、身体が動かない。

声も出ない。


アークリッチを見た瞬間、全身の血が氷に変わった。

脳天を氷柱で突き刺されたような痛み。

呼吸すらできない。

“ただ見るだけで殺される” そんな本能の悲鳴。


(怖い……怖い……!)


次の瞬間、温もりが肩を包む。


フィリスが抱きしめてくれている。


その腕は、

体温は、

すごく安心するのに……

それでも……身体が一ミリも動かない。


(助けたいのに……それなのに……俺は……!)


フィリスとマリナの魔法障壁が軋む音が聞こえる。

ダリオの雷槍も、フィリスの炎も、マリナの光も効かない。


(フィリスさん達が……死ぬ……)


恐怖が牙をむく。

胸が潰れそうだ。

足がすくむ。

心臓が跳ねて、呼吸が詰まる。


怖い。怖い。怖い。


――でも。


フィリスの背中が、

今にも消えてしまいそうに見えた。


その瞬間、胸の奥で“別の恐怖”が弾ける。


(フィリスさんを……失うほうが……何倍も……怖い!!)


その一念が、全身の凍り付いた血を一気に溶かしていく。


(守らなきゃ……! 俺が……守るんだ……!)


丈太郎の瞳に――光が戻った。


ーーーーーー


「押しきられる……!」


フィリスは、魔力障壁のひび割れを肌で感じていた。

もう持たない。もう防げない。


「ごめん……丈太郎くん……」


バキィィンッ!!


魔力の壁が粉々に砕け散る。


闇炎が、黒い津波のように迫る――。


フィリスは目を閉じた。


次の瞬間。


ドッ!!


人影がフィリスたちの前へ滑り込んだ。

その背中に闇炎が直撃する――が。


闇炎は触れた瞬間、霧のように掻き消えた。


「な……に……?」


アークリッチの声が震える。


「丈太郎くん!!」


フィリスの悲鳴に近い叫びが響いた。


マリナもダリオも目を見開く。


闇炎を背に浴びながらも、丈太郎は微動だにしない。

ただ静かに――フィリスを見て、にこりと笑った。


「すいません。……お待たせしました」


「も、もう……遅いわよ……!」


フィリスは涙を溢れさせながら笑う。


丈太郎は小さく息を吸い、前を向く。


「みなさん、少し休んでてください」


カッと目に光が宿る。


「ちょっと、あいつをぶん殴ってきます」


そう言うと、アークリッチの方に向き直り闇炎に包まれながらも一歩、また一歩と歩きだした。

アークリッチへ――まっすぐに。


広間に、重い足音が響いた。


丈太郎は闇炎をものともせず、

むしろ 暖炉の火に当たりながら歩いているだけ のような足取りで進んでいく。


黒炎が肩に触れ、腕に触れ、

爆ぜては霧散する――まるで最初から存在しなかったかのように。


やがて、アークリッチの眼前で足を止めた。


闇炎が、ピタリと止む。


(……貴様……何物……だ……?)


アークリッチの声には、この不死の怪物には似つかわしくない“揺れ”があった。


丈太郎は何も言わない。


ただ、軽く息を吸い――


ドゴォッ!!


頭蓋だった部分は、闇の霧となって四散した。


(同じ……理を阻む者……?いや……それ以上か……)


土煙のような闇が蠢き、

吹き飛んだ顔面は瞬く間に再構築される。


丈太郎は無表情のまま殴りかかる。


右。左。腹。顎。頭。胸。


殴るたびにアークリッチの身体が歪む。

闇が飛び散り、霧散し、崩壊する。


が、それもすぐに戻る。


丈太郎はその再生をじっと見届けてから――

まるで天気を評するかのように呟いた。


「すごいな……ほんとに無敵じゃん」


そこには恐怖も焦りもない。

ただ“事実の確認”としての言葉。


アークリッチは初めて、不滅の存在であるはずの自分が “追い詰められている” と理解した。


(ならば……傀儡にしてやる…)


アークリッチが腕を広げ、黒いイバラの呪縛を放つ。


シュバァッ!


丈太郎の全身に絡みつこうとした瞬間――


バチィンッ!!


爆ぜるような音とともに、イバラは粉々に砕け散った。


(……ぐぬぬ……これも通じぬか……)


アークリッチの声には、わずかだが“焦り”が混じる。


丈太郎は一歩下がり、仲間のもとへ戻った。


「フィリスさん!あいつ、弱点とかないんですか?」


「瘴気核……ってのが弱点らしいんだけど……どこにあるかが問題なのよね」


フィリスは眉を寄せる。


「アークリッチを覆ってる瘴気を一度剥がすことができれば……核の位置がわかるかもしれないわ」


マリナが言った。


丈太郎は頷く。


「なるほど……でもどうやって――」


フィリスが何かに気づいたように顔を上げる。


「私のΩ(オメガ)なら……一発で剥がせるかも」


「えっ、あの時の……!」


丈太郎は能力検証で吹き飛ばされた“あの技”を思い出し、青ざめる。


「確かに、あれなら間違いなく……」


「なら、さっさとぶっ放そうぜ」


ダリオが槍を構えながら笑う。


「ちょっと溜めが必要なのよ。守りは任せたわね!」


フィリスがイグニシアを胸の前に掲げると、周囲の空気が震えるほど魔力が集中し始めた。


(無駄なことを……我は不滅……)


アークリッチが闇の魔球を無数に生み出し、雨のように放つ。


「くっ、数が多い……!」


丈太郎が前に出ようとしたその時――


「任せろ!」


ダリオが飛び出す。雷光が槍にまとわりつく。


「サウザンド・グレイブ!」


瞬間、千の槍閃が奔り、迫りくる闇球を片端から砕き散らす。


「すげ……!」


丈太郎は本気で感心する。


「準備完了!!いくわよ!!」


フィリスの剣が青白い星光のように輝きはじめた。


「マリナ、お願い!」


マリナは息を整え、錫杖を高く掲げる。


「ホーリーエンチャント!」


聖光がイグニシアに流れ込み、白炎の輝きが剣身を包む。


フィリスは吠えるように叫ぶ。


「はァァァッ!!――インフェルノ・スラァァッシュΩ!!」


広間が、昼間の太陽のような閃光に呑み込まれた。


アークリッチの身体を覆う闇が、一瞬で吹き飛び散る。


(ぐ、ぬ……ぬううう……!)


爆風が止むと、闇が剝がれた中央に――

禍々しく光る“闇色の結晶”が露出していた。


「見えた!!」


丈太郎は迷わず駆け出す。


しかし――フィリスのΩが消えた途端、再び闇が渦を巻き始める。


(無駄だ…)


アークリッチの声が響く。


丈太郎はその渦の中心に手を突っ込んだ。


「掴んだッ!!」


その瞬間――


ズキュウウウン!!


広間全体が悲鳴をあげるような轟音が響く。


核は、急速にその存在を保てなくなり――


バキィィンッ……!!


丈太郎の手の中で、瘴気核が脆くも砕け散り霧散する。


(ギァアアアアア!!)


アークリッチの断末魔が空気を震わせた。


瘴気が四散し、黒い霧が弾け飛ぶ。


やがて闇は消え去り、静寂だけが残った。


「や、やった……!」


フィリスはへたり込み、肩で息をした。


「やった! やりましたよ、フィリスさん!」


丈太郎は歓喜に満ちた顔で、へたり込むフィリスのもとへ駆け寄る。


「よく……やったわ、丈太郎くん……」


フィリスは息を切らしながらも、指先でグッと“グッジョブ”のサインを作った。


少し離れた場所では、ダリオとマリナが互いを抱きしめていた。


「私たち……生きてる……!」


「ああ……マリナ……」


涙と安堵の入り混じった声が響く。


その時だった。


――冷たい“声”が、広間に這い寄る。


(おのれ……理を阻むものよ……貴様だけでも――奈落へ堕ちよ……)


ゾワッ。


丈太郎の足元に、黒い闇が突然渦を巻いた。


(……ヤバい!!)


丈太郎は咄嗟にフィリスを突き飛ばした。


「え――?」


次の瞬間。


闇は丈太郎を丸ごと呑み込み、そのまま静かに消えた。


波紋ひとつ残さず。


広間は、完全な静寂に包まれた。


闇も、瘴気も、アークリッチの気配も、跡形もなく消え失せ――


ただひとつ、丈太郎の姿だけがそこにはなかった。


誰も声を上げられない。誰も動けない。


ただ、乾いた声だけが広間に落ちる。


「……丈太郎……くん?」


呆然としたフィリスの声が広く、空虚な広間にいつまでも反響していた。


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