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悪魔の計画②

 案の定、夜になって暁子の携帯電話がオンになり、直ぐに電源が切られた。WiFiの接続設定をオフに切り替えたのだ。一瞬なら大丈夫だと高を括ったようだ。それでも位置を特定するには十分な時間だった。

 暁子の携帯電話は黒田家で信号を発信していた。案の定、進藤が暁子との関係を隠す為にプライベート用の携帯電話を持ち去っていたのだ。


――やったぞ!これで家宅捜索の令状を取ることができる。


 二人は小躍りして喜んだ。

 翌朝、捜査令状を持って乗り込んで来た竹村と吉田を迎えた進藤は、自分が騙されたことを悟った様子だった。

「刑事さん、随分じゃないですか!」

 進藤の小言は無視した。

 竹村は真っ直ぐ庭に向かった。都内の一等地とあって、庭はそう広くは無い。芝が敷き詰められており、手入れが行き届いていたが、よく見ると芝生の一部に張り替えた跡が見られた。庭の隅の植木の根元には、最近、土が盛られた跡があった。

 庭に何かを埋めて平らに均し、芝生を敷き詰めたのだ。庭に何かを埋めた分、土が余った。余った土を目立たないように、植木の根元に運んだのだ。

「ここだ! この地面の下に、何かある」

 竹村が鑑識官に指示を飛ばす。吉田は、暁子の携帯電話を探す為に、屋敷の中に入って行った。

「何故、庭を掘り起こしたりするのです!?」と進藤から抗議があったが、竹村は、「庭に被害者の携帯電話が埋まっている可能性があるからです」と退けた。

 吉田には、「例え、直ぐに経緯電話が見つかっても、庭の掘り起し作業が終わるまで、黙っていろ」と伝えてあった。今頃、吉田は屋敷中、血眼になって携帯電話を探しているはずだが、例え見つけても黙っているだろう。

「困ります。芝を張り替えたばかりなのに――!」

 警察官から遠ざけられても、進藤は抗議を止めなかった。

 携帯電話は既に処分してしまったのかもしれない。屋敷内の捜索に興味を示さないのは、見つからないことに自信を持っているからだ。だが、竹村の真の狙いは携帯電話では無かった。

 庭に拘る進藤の姿は、庭に何かが埋まっていると竹村に確信させた。


――竹村さん!出ました。


 結果は待つほども無かった。庭を掘り起こし始めて三十分後、鑑識官の一人が叫んだ。地中から寝袋が出て来たのだ。慎重に土を取り除きながら、寝袋を掘り出した。

「開きます」

 鑑識官が寝袋のファスナーに手を掛けた。竹村がちらと進藤の顔を盗み見る。進藤は既に諦めの表情を浮かべていた。

 じりじりと音を立てて、土が詰まって開き難くなったファスナーが開けられて行く。

「遺体ですね。死後、かなり経過しているようです」

 寝袋の中から、白骨化した遺体が発見された。

 進藤はその場で緊急逮捕された。

 取り調べで、進藤は、「遅かれ早かれこういう日が来ると思っていました。肩の荷が降りた気がします」と竹村に言い、全てを自供した。

 事故で精神的に参っていた真由をサポートする為に、進藤は毎日のように黒田家を訪れた。黒田商会は東京アーバン銀行の得意先で、進藤が担当する会社のひとつだった。真由の代理として、賠償金の入金や保険金の請求手続きを行った。無論、全ての金を東京アーバン銀行の口座に入金して貰うためだ。

 両親の事故により真由が相続する資産についても詳しくなった。現預金だけでも相当な金額になることが分かった。

 毎日のように黒田家に足を運んでいる内に、真由との間で気持ちが通じ合うようになったと進藤は感じていた。正直、美人とは言い難い真由は、進藤のタイプでは無かったが、彼女が手にする金は魅力的だった。


――一生、遊んで暮らせる。


 進藤の心に魔が差した。

 ある日、何時も通り黒田家に足を運んだ進藤は、隣に座って書類に目を通していた真由の横顔を盗み見た。真由の肩が微かに進藤に触れた。進藤の心に灯が点った。進藤は真由を思い切って抱き寄せた。

 抵抗されるとは夢にも思っていなかった。


――誰があんたなんか!?


 真由は思いのほかに激しい抵抗を試みると、進藤を睨みつけてそう言い放った。進藤は真由のことを、金があるだけの女だ。自分のような人間は勿体ないと思っていたが、真由にしてみれば、進藤は金に群がって来たハイエナに過ぎなかった。

 進藤に恋愛感情など抱いていなかった。


――誰があんたなんか? それはこっちの台詞だ!


 思わぬ抵抗を受けて進藤は頭に血が上った。真由の軽蔑の瞳に、進藤は我を忘れた。

 気がついたら進藤は真由の細い首を両手で力任せに締め上げていた。

「しまった――!」と思った時には、後の祭りだった。

 進藤はふらふらと立ち上がると、ソファーに横たわる真由を見下ろした。見開いた真由の眼には精気が無かった。

 やがて落ち着きを取り戻した進藤は悪魔の計画を思いつく。

 進藤は実印の在り処を知っていた。世間知らずの真由が、進藤の前で居間の棚の中にある金庫を開けて、実印を取り出すのを見ていたからだ。進藤は金庫の暗証番号まで覚えていた。戸籍謄本や住民票は手続きで必要だったので、事前に真由に取得してもらっていた。

 進藤は区役所から婚姻届をもらって来ると、結婚相手として真由の名を記入した。そして、真由の実印を持ち出して勝手に押印すると、区役所に提出したのだ。

 こうして戸籍上、進藤と真由は夫婦となった。

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