表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

悪魔の計画①

 竹村は刑事生命を賭けた。

 黒田家の庭から、何も出なければ、責任を取って刑事を辞める覚悟だった。家宅捜索の決め手となったのは隣人の証言だった。

「二か月くらい前ですか。庭に大きなテントが建っていました。一週間位、テントが張ったままになっていたと思います。夜中にテントに灯りが点いているのを何度か見ました。テントの中で何をしているのだろうと、不審に思いました」

 隣の住人は、昨年、定年を迎えて、今は妻と二人暮らしだと言う。黒田家ほど、家は大きくないが、堂々たる一軒家を構えており、余裕のある生活のようだった。

 前回、進藤と会った時に、キャンプが趣味だと言っていた。テントを持っていたとしても不思議ではないが、庭にテントを張ると言うのはいささか妙だった。

「えっ! 真由ちゃん、結婚したのですか? ご両親が事故であんなことになって、一人ぼっちになってしまったので、心配していました。結婚したのなら安心ですが、一言、そう言ってくれれば良かったのに・・・水臭い。お祝いも言っていないし・・・」

 隣人は真由が結婚したことを知らされると恨み言を言った。特に親しかった訳では無いが、隣同士とあって会えば挨拶をする仲だったと言う。

 二か月前と言うと、進藤と真由が籍を入れた頃だ。新婚旅行の代わりに、庭にテントを張って、二人でキャンプ気分を楽しんでいたのかもしれなかった。だが、竹村は隣人の証言が気になった。

 進藤はキャンプが趣味のアウトドア派だが、真由はどちらかと言うとインドア派で、キャンプを楽しむような性格では無かったと言う。近所のホームセンターで、進藤が庭に敷く芝を購入していたことも分かった。

 又、鈴木に進藤の写真を見せて、暁子がレストランで会っていた男かどうか確認を取ったところ、「間違いない! こいつだよ、刑事さん。こいつと暁子が会っていた」と答えた。

 そして、吉田が飛び切りの情報を仕入れて来た。

 真由の出国履歴を調べようと出入局管理局に問い合わせたところ、真由の出国記録が見当たらなかったのだ。


――進藤真由はアメリカに行っていない!?


 一体、どういうことなのか。旅行に行っていないとすると、真由は自宅にいるはずだ。自宅にいないとなると行方不明だと言うことになる。そうなると、庭に張ってあったテントが気になって来る。

 係長に、黒田家の家宅捜索が出来ないか相談してみたが、「おいおい。例え進藤真由が行方不明だとしても、増田暁子の殺人事件とは何の関係もないぞ。親族から失踪届が出ている訳ではないし、家宅捜索なんて無理だ」と言下に却下されてしまった。確かに今のところ、増田暁子の事件との関連性を指し示すものは何も見当たらなかった。捜索令状が降りる可能性など無いと言えるだろう。

 だが、竹村は真由の行方が気になって仕方が無かった。進藤に直接、尋ねても、どうせ、「そんな馬鹿な!アメリカに居るはずです。もう一度、ちゃんと調べてみて下さい」と白を切られるに決まっている。

「自宅に真由さんがいるかどうか確かめる方法はないか」と文字通り、竹村は地団太を踏んだ。

「先輩。ドスドス、やっていると床が抜けちゃいますよ。まるで、動物園のゴリラですね」

「ゴリラって霊長類最強なのだぞ」

「はいはい。誰も先輩には勝てません」

「お前も何か考えろ」

 と、二人で知恵を絞った。すると、

「ひひひひひ」と竹村が突然、卑下た笑い方をした。

「何ですか? その陰険な笑い方」

「ひとつ、思いついた」

「悪い顔、してますね~」

 二人は銀行に進藤を尋ねた。

 真由の出国記録が見当たらないと言う話をすると、進藤は、「変ですね?」と首を傾げて、真由が出国した日と搭乗予定だった便名を教えてくれた。

「あの日、僕は仕事があったので、家内を空港まで送って行くことができませんでした。でも、アメリカに行ったことは間違いありません。結婚したばかりで、パスポートの切り替えを行っていませんでした。旧姓の黒田で出国しているのだと思います。もう一度、調べてもらえませんか?」

 進藤の答えは予想通りだった。そこで竹村は話を変え、暁子の部屋からプライベートで使っていた携帯電話が無くなっていることを伝えた。そして、「恐らく、増田さんとの関係を知られたくなかった犯人が持ち去ったのでしょう。増田さんの携帯電話を所持している人間が犯人だと言えます。増田さんはスマートホンを使っていたようで、電源が切れていても、WiFiの設定がオンになっていれば、遠隔操作で携帯電話の電源を入れることができるみたいです。電源がオンになれば、スマートホンの位置を特定することができます。その為のソフトを科捜研で組んでもらっているところです。間もなく出来上がると思います」と進藤に伝えた。

 遠隔操作で携帯電話の電源をオンに出来るかどうか、竹村は知らなかった。携帯電話は年々、進化しているから、ありそうな話に聞こえたはずだ。

 スマートホンの電源が入りさえすれば、携帯電話の位置を特定することが出来る。進藤が犯人だと仮定して、WiFiの設定を変更しようとスマートホンの電源を入れてしまうと、直ぐに位置を特定できる。科捜研に暁子の携帯電話番号を伝え、信号を監視してもらった。

 これが、二人が知恵を絞った罠だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ