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平和が1番だよ

「お、若様。今日もお元気ですな……両手に花で羨ましいですぞ!」


「ありがとう……皆が頑張っているから、つい出歩きたくなっちゃうんだよ。それに今日は彼女たちのエスコートだからね」


「ウフフッ、お兄様~」「若様、リーナにもエスコート?」


 僕たちはリベイラ領領都の自由市場へ来ていた。ここは誰でも商売が行える区域で、王都とリベイラ領を結ぶ街道がキロイフ子爵領を通って開通したため、王都からの商人たちでごった返している。

 そこに商売で出た利益への課税を行っているため、リベイラ領の税収はとんでもないことになっていた。


 王都の商人は、今までのズルガト伯爵領を通らず、キロイフ子爵領経由でやって来る。ルーカス叔父様が僕の言った通りに宿泊施設などを建てて好評な上、通行料を取らない。対してズルガト伯爵領は多額の通行料を取られるため、敬遠されたのだ。

 慌ててズルガト伯爵も無税にしたが、一度失った信用を取り戻すことはできなくなっていた。


 やはり食料の代金も払えなくなり……担保に出した土地で手を打つことになりそうだね。バカだよね~。


「若様~、お嬢様~! 食べていってくださいよ!」「いや、若様、ウチへどうぞ~!」「可愛いお嬢様、こっち向いて~!」


 うんうん、今日も盛況のようだね。領民も収入が上がり、購買意欲も凄まじい。その噂を聞いてリベイラ領へ引っ越して来る人も多い。また、魔の森の開拓も進み……入植地になっている。それもあり、王都で入植者の募集や貧民たちの勧誘を行い、リベイラ領は人が集まる都市へと変わっていた。


 リベイラ領が発展すると、連鎖してキロイフ領も発展する相乗効果があった。キロイフ領はリベイラ領との中継点と考えられていたが……良質な鉱物資源を抱える鉱山があり、働き口を探す王都方面の者たちが押し寄せることになる。

 ルーカス叔父様は今、めちゃくちゃ忙しく働いているらしいよ。


 さらに鉱物資源は重いため運搬に苦労していたが、そこに登場したのが、リベイラ領で採れた『魔の森の木材』を使った馬車や荷車だった。通常では耐えられない重量でも壊れることなく運べるので、割高けれど飛ぶように売れるようになった。


 魔の森の木材は魔力がないと加工もできないので、リベイラ領の職人でなければ扱えない。

 王都などから魔の森の木材を使った加工品を注文するために、行列ができるほどになっていた。

 人が集まるからこそ、市場もさらに活発になる。


 魔の森の木材だけでなく、キロイフ領で採れた『魔鉄』の加工もリベイラ領が独占している。

 王国の中央貴族たちの認識も、次第に、リベイラ辺境伯領を田舎の少勢力とする視方から無視することのできない勢力とする視方へと変貌を遂げつつある。


 まだまだ改良しなければいけない所や、改善しなければいけない所などもあるけれど……とりあえずは満足できるかな。ここからさらに、みんなが楽しくて笑いが絶えないリベイラ辺境伯領にしていきたいな……。


 そしてこれからのリベイラ領の特性としては、やはり『魔の森』だろうね。だから魔の森を活かしていけば、この地域特有のものができるはずだ。

 いくつか考えていることがあるし、実行して、失敗してもチャレンジし続けていこう。

 それが僕自身の『育てる』になるはずだしね。


「もう、お兄様! もう少しシエラを見てくださいませ!」


「そうですよ、若様! リーナとシエラちゃんがいるのに、ぼーっとするのは失礼でしゅ!」


 あっ、噛んだね。これからのことなどを考えていたら、エスコート中のお嬢様方に怒られてしまった。

 転生して7年。あの食べるものさえ無かった貧乏領地が、人・物・金が集まる地になっているんだもんなぁ。


「そうだね。こんなに素敵なレディーたちをエスコートできる喜びを噛み締めていただけなんだよ。さあ、お姫様たち。お好きな場所へ私がお連れいたしましょう」


 シエラとリーナの前で跪き、手を差し出す。

 シエラとリーナは顔を見合わせた後に目をパチクリさせて、最高の笑顔を向けてくれた。


「ウフフッ、よろしくお願いします!」


「若様、カッコいい~!」


 二人とも僕の手を取り、歩き出す。


「おお、『リベイラの聖なる薬箱』の小聖女様だ!」


「本当だぁ、お付きの幼獣ちゃんも一緒だぞ」


 新しくミランド領から移り住んだ領民だろうね。シエラとリーナ、それとお母様は、元ミランド領の領民に大人気なんだ。広場での活躍があったからだろうね。


 ちなみに『リベイラの聖なる薬箱』というのは、お母様とシエラのことだ。広場で一生懸命に怪我人を治療する姿から、いつしかそう呼ばれるようになった。

 シエラのことは『小聖女』と呼んでいる。


 ただ……お母様を『大聖女』と呼んではいけないのが、リベイラ領の暗黙のルールなんだ。

 呼んでしまった人は……いや、やめておこう。

 命だけは無事なんだから。お母様は普通に『聖女』と呼ぶようにと……女心はいまだによく分からない。


『幼獣』とはリーナのことなんだ。シエラとセットで領民に親しまれている。まあ、このまま育つとシエラのお付きのメイドになるのだろうから……。

 いつも明るいリーナにピッタリなあだ名だね。


「本日はここまででございます、お嬢様方。また是非……ご一緒させていただければ、私もうれしく思います」


「「はい!」」


 どうやら本日の任務は滞りなく終了したようだね。

 この任務を失敗すると、今日から1週間は口をきいてくれないからね……ハァ、疲れたよ。

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