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もう1つの戦場

【リベイラ辺境伯騎士団魔法部隊隊長セリア視点】


 私はリベイラ辺境伯領でも田舎の村の出です。農業以外は何もないけれど……魔の森が近いため、それなりに魔物被害があるような地域でした。

 子供の頃、幼馴染と遊んでいると魔の森から出てきた魔物に殺されそうになり、助けてもらったのが今の騎士団長ガイウス様でした。


 それから私と幼馴染は成人するとすぐにリベイラ領の領都へ上京し……騎士団へ入ることができたのです。

 私は幼馴染と違って運動が得意じゃなかったのですが……その……幼馴染と一緒にいられたらと……。

 当然、騎士団への憧れもありますけれど……幼馴染のバルドを放っておけなくて……。


「セリア、俺はいつかガイウス団長みたいな強さを手に入れて、俺たちを助けてくれたみたいにリベイラ領の領民を助けるヒーローになるんだ!」


 キラキラした目で夢を語るバルド……う、うぅぅ〜。そんな顔をされるのは卑怯だよ〜。

 そんなバルドが、いつしかリベイラ辺境伯様の長男様の話をしてくることが増えました。

 その頃からバルドの実力がグ~ンと伸びたように感じます。

 それから一層訓練を頑張るバルドを応援していましたが……でも、少しは構ってほしいかも。


「やぁ、キミがセリアだね。バルドから話を聞いているよ……『見える化』発動。うん、セリアはあまり近接武器での戦闘には向いてないね。だから『魔法』を使ってみない?」


 突然話しかけてきたのは、バルドがよく話をしてくれる辺境伯様のご長男様……アラン様でした。まだお若いのにイケメンになる予感がする、どこか大人びた不思議な雰囲気の男の子。


 魔法? 私が?

 この世界において、魔法の適性を持つ人間はほんの一握りです。田舎の村娘だった私にそんな才能があるなんて思いもしなかったけれど、アラン様は優しく微笑みながら、私の手に一本の奇妙な杖を握らせてくれました。何だろう……不思議な力を感じる。


「キミにはね、すごい才能が眠っているよ。はい、これを持って目を瞑って、ありのままを感じてみて……『育てる』発動!」


 運動音痴でバルドの足を引っ張ってばかりいた私が、その日を境に『魔法の天才』と呼ばれるようになり、気づけばリベイラ騎士団の魔法部隊長にまで大抜擢されていました。すべてアラン様のおかげです。魔法を使えるようにしてもらい、魔法部隊の隊長にまで……バルドではないけれど、アラン様には本当に感謝しています。


 ……まあ、当のバルドは頑張りが報われて歩兵隊長になって、毎日「若様のために……ガイウス団長のために……」と筋肉を震わせているので、私の心配はただの杞憂だったわけですが……大丈夫よね?


 ◆◆◆◆


「隊長? 隊長……来ましたよ、ズルガト伯爵軍の物資を運ぶ輜重隊しちょうたいです」


 いけない、いけない。今は任務中だった。

 魔力を使うのには2通りある。身体に纏わせて身体能力を強化させる方法と、もう一つは……。


「いいわね。リベイラ領へ荷物を持って行かせるわけにはいかないから、すべて燃やし尽くすのよ。一斉にいくわよ……『ファイアボール』、いっけ~!」


「「「ファイアボール!!」」」


 輜重隊が運んでいる荷車すべてが炎に包まれる。まさかズルガト伯爵の軍隊も、これほど多くの魔法使いがいるとは思っていなかったでしょうね。


「目標、クリア! 速やかに離脱しますよ。身体強化発動……!」


 魔法部隊は超常現象を起こす魔法と、身体に纏わせる身体強化の両方を使いこなす。

 アラン様が言うには……ヒット&アウェイ、というらしいのです。

 私たち魔法部隊の任務は、ズルガト伯爵軍の物資を枯渇させることです。


 アラン様とセバスチャン様がこの状況を作るために敵の情報操作をして、領都を挟撃されるタイミングを偽情報でズラしたらしいです。こんなに上手くできるなんて……やはり凄い人たちですね。

 ミランド伯爵が攻めてきた時も、要塞の反対側を騒がしくして挟撃と見せかけ、敵を誘導したそうです。


 アレックス辺境伯様は武勇に優れ、奥方様のアメリア様は内政面、ご長女のシエラお嬢様は回復魔法……どのお方も素晴らしいですが、私はアラン様が一番凄いと思います。人材の発掘や物の発明……ご本人は『皆が凄いから自分が影が薄い』と嘆いていましたが……リベイラ辺境伯領の住人はみな『リベイラの神童』と噂しているのですよ。


「さぁ、私たちの故郷を守るための戦いですよ! 女である私たちが戦場で戦えるようになったのも、アラン様のおかげなのよ……ご期待に応えるように頑張りましょう!」


 放出系の魔法はやはり女性が得意なので、魔法部隊は全員が女性なの……これは男女差だから仕方がないけれど、こんなこともできるのよ……。


「兵隊様、助けてください! 盗賊に追われて足を挫いてしまいました……ほら、ここです……『チラリ』」


 輜重隊の兵隊が足に見惚れている隙に……


「ファイアボール……!」


 焼き払い、離脱する。男性には効果テキメン。


「アラン様、任務完了です。バルドも上手くやっているかしら……まさか『結婚してくれ』なんて言われるなんて……ただの筋肉バカじゃなくて良かったわ」


 そういえば、アラン様が何か……「2人の愛情を『育てる』からね」って言っていたけれど……まさかね?

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