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変わり行くリベイラ領

「早く木材を運んできな! 全くグズグズするんじゃないよ……そんな事じゃ今日は飯抜きだよ!」


 あっちこっちからこのような会話? いや、罵声が聞こえて男衆は涙目になりながら本気でダッシュしている。あ〜、やっぱりこうなったかぁ〜。

 でも男衆の犠牲のおかげで、リベイラ領での高炉は完成して鉄はもちろん『魔鉄』も加工が始まった。


 この魔鉄は全てが武具として生まれ変わる予定だ。

 そう、魔鉄は魔の森の木材と同様で鉄に魔力を多く含む。その魔鉄を武具にする事により、剣なら切れ味抜群で折れず曲がらずの理想的な武器になる。

 防具ならば貫く事が困難な防具へと早変わりする。


 うん、リベイラ騎士団の団員がバケモノ級になってるのに……鬼に金棒を渡してしまったかも。

 でも、リベイラ騎士団はまだキロイフ領にいるからね。

 とりあえずの用意だけしておかないとね。


「若様、これがいま叩き上がった『魔鉄の騎士剣』の試作品だぞ……ウチのカカアたちの怒号を遮断するために耳栓をして叩いたおかげで、かつてないほど集中して素晴らしい名剣が仕上がりましたぜ」


 鍛冶師の親方が、涙目でもあり清々しくもある顔をして一本の美しい銀色に輝く長剣を差し出してきた。

 受け取ってみると、見た目の重厚さに反して……吸い付くように手に馴染む。試しにスキル『見える化』を発動してみると、僕の小さな手から漏れ出た微弱な魔力が、剣身へとスムーズに、それこそ一本の淀みのない芯のように流れていくのが見えた。


「……うん、完璧だね。普通の鉄剣なら魔力を流しすぎると爆発するかボロボロに自壊するけど、この魔鉄剣は魔力を吸えば吸うほど威力を増してるように感じるよ」


 切れ味抜群で折れず曲がらず。防具にすればあらゆる物理・魔法攻撃を弾く鎧。

 これらを僕の『育てる』で鍛えた騎士団が装備するんだね……これ、やり過ぎたよね? でも作っちゃったからね……


「セバスチャン。ガイウスおじさんたちがキロイフ領から戻ってきたら、サプライズでこの魔鉄装備を全員分プレゼントしようと思うんだ。みんな喜んでくれるかな?」


「もちろんでございます。若様も少々きな臭い話を聞いていたから魔鉄を急がせたのではないですか?」


 セバスチャンが僕の心を見透かしたかのような指摘をしてきた。そうなんだよね……隣国サラダン王国のミランド家が怪しいんだよね……サラダン王国自体は動いてなさそう。ミランド家単体かな……


「そうだね……恐らくはリベイラ領の発展ぶりに焦って攻めてくる、あわよくば魔の森の伐採方法と鉄の入手あたりが目的かな?」


「そうでございますね……最近はサラダン王国からの難民も受け入れてますからね。それにサラダン王国側には要塞が立ち塞がってますから……なんとかしたいのでしょう」


 リベイラ領の発展が呼び込んだのだろうね。でもだからといって発展を止める事は出来ないしやらない。

 ふむ、この状況を利用して……さらにリベイラ領を発展させるかな。


「セバスチャン。街道の状況を教えて……特にサラダン王国とは逆側……ズルガト伯爵領へ続く街道だよ」


 恐らくはサラダン王国のミランド家とズルガト伯爵は裏で繋がってる。リベイラ領はこのままいくと挟み撃ちに遭う可能性が高い。

 そうなれば屈強な騎士団がいるとはいえ……勝てても犠牲が多くなる。


 どちらか一方ならば楽だろう。ならば援軍に来られないようにしてやればいい。ミランド家とズルガト伯爵はお互いに領地は接していない。

 間には必ずリベイラ領を……いや、要塞化したウチの中を通らないと連絡すら出来ないのだ。


「はい。食料をサラダン王国へと運ぶ商人が多く、帰りには鉄を運んでいるようです。上手く偽装しているようですが……」


 完全に舐められてるね……ウチの中を通りお互いに物資のやり取りをするとはね。

 さて……仕掛けていきますかね。


「セバスチャン。ズルガト伯爵領へ魔の森の木材とキロイフ産果物を流してくれ。もちろん、ある程度で少量に絞ってね」


「フフフッ、そういう事でございますか……アラン坊ちゃまは軍師の才まであるとは……」


 そうなんだよね。物流を止めるのでも良いんだけど……逆に利用して高値で物を売りつけて、食料や鉄を買うお金を『リベイラ領がもらっちゃうぞ作戦』だよ。

 その間で情報だけは遮断するんだけど……その情報は本当に合ってるのかな? ウチの中を通るのにね……


 これでお互いの足並みが揃えられるのかな……

 それに仕掛けはこれだけではないんだよ。

 この要塞自体が罠になる。防衛特化の要塞ってだけで僕が作るワケないよ。

 この要塞と魔の森を使って見事に敵の撃破をしてあげて……うししっ。


「それではアラン坊ちゃま。リベイラ騎士団の帰還の指示を出しておきます。また、旦那様と奥様には今のお話を通してよろしいでしょうか?」


「うん、どっちもヨロシクね。でも、戦争なんてヤダよね。疲れるし痛いし……何より楽しくないもん。僕は楽しく過ごしたいだけなのにね……」


 要塞兼自宅から外を見る。サラダン王国側は大きな広場になっていて、右からも左からも矢や魔法の十字砲火が出来るようになっている。ここにしばらくしたら隣国兵士が殺到すると思うと……

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