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女性の社会進出

 リベイラ領へ帰って来てからは状況の変化が凄いんだ。キロイフ領からは上質な鉄がじゃんじゃんと運ばれてくる。その中には『魔鉄』も含まれている。

 そして、果樹園から採れた果物もだ。現在は領主館だけでなく領民にも行き渡り、女性達の争奪戦が勃発している。甘い物を前にした女性は……おー、こわ〜。


 リベイラ領の領民も品種改良の作物のおかげで収入も安定した。それと税金の減税で購買意欲も上向きで、キロイフ産果物は領民の楽しみになっていた。


 色めき立ったのは女性だけではなかった。鍛冶師などの職人軍団も目をキラキラさせた。

 こっちはキモいな。オッサンが寄ってたかって……

 鉄のインゴットを中心にオッサンの群れ。汗臭そうです。例えるなら真夏の満員電車でオッサンに囲まれた感じ? 題名をつけるなら『オヤジの夏』だな。


 そして問題もある。そう、鉄はなんとかなるけど『魔鉄』を加工する設備がない。キロイフ領で作った高炉をリベイラ領にも作らないといけなくなったが、耐火レンガの作成や魔導備長炭の精製などはリベイラ騎士団がいないと……現在はキロイフ領へ出張中だ。騎士団団長のガイウスおじさんも……


 う〜ん、困ったな〜。何処かに良い人材はいないかな……出来たら魔法が得意で……


「ウォーターカッター……」


 力があって、魔力を纏える……


「斧に魔力を纏わせて、木を切るのです」


 ん? おじさん達にチヤホヤされながら囲まれて、魔の森の木材を加工する幼女コンビが……魔力が使えるよね。

 僕以外だと魔力の扱いが一番上手いのはこの幼女コンビだ。魔力を纏った身体強化ならリーナが得意。魔力を放出するならシエラが得意。


 ピッタリだな。それでも5歳児に手伝わせても良いものか……。

 前世の基準なら一発で児童労働基準法に引っかかるだけじゃなくて、児童虐待で即アウト案件だ。しかし、この世界は異世界。生き残るためには能力のある者が働く、それが鉄則……魔物などの脅威もある世界だしね。


「シエラお嬢様。そっちの角材をあと3ミリほどウォーターカッターでスパーンとおねげえできやすかい」


「ええ、お安い御用ですわ。えいっ!」


「リーナちゃん、この硬い魔の森の原木……斧で真っ二つにしてくんねえか」


「はい。リーナにお任せなのです。ふんぬっ!」


 オッサンたちに囲まれ、チヤホヤされながら楽しそうに魔法を連発している幼女コンビ。オッサンたちの汗臭い熱気も、彼女たちの放つ無垢な幼女オーラによって綺麗に浄化されている気がする。素晴らしい空気清浄機能だな。


 魔法の訓練にもなるし……ちょっとお願いしてみようかな……


 ◆◆◆◆


 …………と思っていた時期がありました。今、僕の目の前では、


「右手で風魔法、左手で火魔法……出来た。これで炭焼き窯の酸素? とかいうのを風魔法で抜いて、火魔法で魔の森の木材を焼いていきます」


 なんと少し説明しただけで我が妹のシエラは完璧に魔力コントロールして魔導備長炭を量産してるだけでなく、魔導備長炭の作り方をおじさん達にレクチャーしている。


「アハハ、シエラちゃん。木材置いておくね」


 …………ドシーン。

 場が静まりかえる。加工された木材の山をシエラの近くに置くリーナ。木材の山をだ。

 自分の身長を遥かに越える量を持ち運ぶ幼女に、みんなの時間が止まった。

 ん? そうだ……


「シエラ、リーナ。魔導備長炭を作るのは女性の仕事にしないかい……女性の方が魔力の扱いが上達しやすいのは騎士団の訓練で分かってるし、力仕事は男性で……身体強化は男性の方が得意……リーナは特別だけど……」


 そう、女性の雇用促進になる。子供がいても交代で稼げるようになるしね。

 魔力が枯渇したら子守りを交代とかルールを決めれば上手くいくんじゃないかな……魔導備長炭だけでなく耐火レンガなども……うん、そうしよう。


 前世のブラック企業での過酷な残業生活を思い出し、僕は「異世界では絶対に持続可能なホワイトな職場環境を作るんだ」と心に強く誓った。


「……素晴らしい着眼点ですな、アラン坊ちゃま。まさにリベイラ領の未来を照らす、革新的な雇用計画でございます」


 背後からスッと、一切の気配を消したセバスチャンが影のように現れた。いつの間にそこにいたのか……相変わらずこの執事、隠密スキルでも持っているんじゃないかな。目にも止まらぬ速さでメモを取る。メモも仕事も早すぎる。


「セバスチャン、いつから聞いていたの? でも、これなら騎士団がキロイフ領に出張している間でも、領内の女性たちの協力があれば十分に魔導備長炭も耐火レンガも量産できるよね? もちろん対価は必ず払ってよ」


「ええ。それに現在、領内では『キロイフ産果物』を巡って……その女性たちの間で凄まじい争奪戦が勃発しております。彼女たちに『この仕事を頑張れば、優先的に美味しい果物が手に入る』という給与と同時に特典などを与えれば……間違いなく、リベイラ領の女性が殺到するでしょう……」


「お、おー……こわ。甘い物がかかると女性は凄いよね。でもね〜、懸念もあるんだよ」


「ほう、特に思い当たりませんが……マイナスになるような事は……」


「いや、あるよ。しかしリベイラ領の発展の為には心を鬼にして実行しなければならない。すまん、男衆達よ。セバスチャン……女性がお金を稼げるようになるとどうなる?」


「あっ……」


 セバスチャンは持っていたメモを落とすのだった……

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