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アランの起こした奇跡

【キロイフ子爵家当主ルーカス視点】


 何から話したら良いのか……私は夢でも見ているのだろうか? いや、夢でもこんな事態は見見たことがない。

 フフフッ、人生とは誠に分からんものだな。


 だって、このキロイフ領はベリエラ山脈に続く盆地に領都がある寂れた土地だった。

 ベリエラ山脈には魔物も出るので、鉱山があると噂されても開発が出来ない。そして盆地の中で細々と農業をするしかなかったのだ。


 唯一、王都方面へと続く道も山道で細く、時々崩れるためを通る人も少ない。八方塞がりの土地で先祖代々苦労の連続だった……はずだ。

 そう、はずなんだよぉぉぉぉーー!


 だってこの領都はしっかりと区画整理され、道幅も広いしデコボコもない道が門まで続いている。さらに領都全体……いや、盆地全体が城壁に囲まれているし。


「何あれ……魔物なんか侵入できるはずない」


 高々と伸びる城壁を見上げていると……キロイフ騎士団の団員が駆け寄ってきた。


「領主様、リベイラ領の領民の協力もあり、キロイフ・リベイラ間の道路が完了して全員で王都方面の工事を開始しました!」


 ああ、ついにリベイラ領までの工事が終わったんだな。これで物資の移動も人の移動も楽になる。王都まで繋がると……どうなる?


「お兄様、ようやく工事が終わったようですね。おめでとうございます」


 妹のアメリアだ。今はリベイラ辺境伯に嫁いで正妻におさまっている。そう、今のこの事態はアメリアが連れて来た一人の少年……私の甥でもあるアランのおかげでもある。

 さらに騎士団の団員がやって来た。


「……報告します! 鉄の量産が進んでおります。そろそろ倉庫が一杯になりそうなので、倉庫の増設をお願いいたします。また『魔鉄』を限定的にインゴットにしてまして……こちらはどのようにしたら……」


「あらあら、お兄様。凄いわね。当然、リベイラ辺境伯に売って欲しいわ。『魔鉄』もね……アランちゃんのおかげだというのを忘れないで頂戴な」


 たはは、妹には勝てないな。


「ああ、もちろんだよ。アメリア、リベイラ辺境伯家からは食料を頼むよ……持ちつ持たれつってね」


 アメリアはニッコリと笑った。

 それにしても、倉庫が一杯になるほどの鉄、そして希少金属である『魔鉄』のインゴットだと?

 目の前にあると言われていた鉱山がこうして手に入る日が来ようとは……


 私が内心で冷や汗を流しながら、鉄の売買契約と臨時の倉庫増設の書類にサインをしようとした、その時だった。


「おじ様ー。あっ、お母様も……ただいま戻りましたー!」


 ちょうど噂の本人が帰って来たようだ。服に泥をつけながらご機嫌で部屋に入って来た。その姿は間違いなく年頃の男の子に見えるんだけどね……


「若様、少しお待ち下さいと言いましたよね。そのお召し物で人前に……」


 フフフッ、気持ちばかり焦っているところなんかも……メイドのミーナからコッテリと怒られている。手を引かれながら着替えるようだ。


「あっ、ちょっと待って。ルーカス叔父様。みんなを集めておいて下さい。ビックリしますよ。シエラやリーナもね」


 アランは『うししっ』と笑いながら部屋から出て行った。その様子に私は予感めいたものを感じていた。

『また、アランがやらかした』のではないか……と。


 ◆◆◆◆


 アランから言われたように領都にいた人を集めた。

 妹アメリア、姪シエラ、メイドのミーナ、その娘リーナ、執事セバスチャン、騎士団団長ガイウス……そして私。

 そこにアランが着替えて現れた。


「お待たせしました。早速ですが……フフン、ベリエラ山脈に果樹園を作りました。そこにはグレプやマロロンやピッチがなる木を植えてます」


 ん? 果樹園? 作った?


「お兄様……アランちゃんだから……」


 うん、そうだよね。アランだからね。道路工事や鉄なんかで見てるしね……果樹園くらいなら作るよね……


「はい。それで収穫をすませてきました。かなり美味しくなってるので、みなさんで試食しましょう」


 …………? 収穫した? いや、植えたばかりと……


「ルーカス叔父様、お兄様は凄いのです!」「リーナもそう思うのです。若様ステキ……」


 幼女コンビは全肯定だな。そんな事を思っていたら、アランは持ち帰った果実をテーブルに置く。部屋の中に甘く芳醇な香りが満ちて……女性達の目の色が……


「アランちゃん? 食べてもいいのよね? お母様は甘い物は大好きなのよ……」


「お兄様……」「若様……」「申し訳ありません、メイド失格ですが……」


 ヤバい。目が……マジだ。

 アランはその中でも涼しい顔をして……


「セバスチャン、みんなに切り分けてあげてね」


 なんか余裕だな……セバスチャンも気を利かせて、女性達から順番に切り分けた皿を前に置く。

 アランが一言どうぞと言うと……まるで獣のような……いや、やめておこう。


「シエラ、リーナ、美味しいかい? 僕の分もどうぞ」


 なんとレディーファーストを……凄いな。


「奥様、どうぞ」


 セバスチャンもか……

 なら私もと思ってメイドのミーナにと思ったら……


「あら、あなたは妻の私に『どうぞ』と言えないのかしら? 若様を見習ったらどうでしょうか?」


 なんと騎士団団長ガイウスが怒られている。そうだった、ミーナとガイウスの2人は夫婦なんだ。ガイウスは既に食べ終わり……

 結局は私がミーナにあげた。ミーナにはお礼を言われた後に、ガイウスはまた睨まれていた。


「若様ありがとう。パパはカッコ悪いのです」


 娘のリーナに……引かれていた。

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