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魔力の性質とは

 魔の森木材……魔の森に生えている木を切り出して加工したものだ。その木材は切り出されても魔力を失わず、魔力操作ができない人や物にとっては鋼鉄のように硬い。


 そう、魔力があることにより硬度が上がる。魔鉄においても話を聞くと同様らしい。人間が魔力を纏うと超人的な能力を発揮して力が強くなったり走るのが速くなったりする。


 あるいは、魔力を燃料にして様々な超常現象を起こす。何もないところから火や水や風や土などを発生させる。

 前世の地球にはなかったスペシャルなモノである。

 その不思議パワーを明確に説明できる人はいないらしい。


 そこで僕は「魔力とは何か」という仮説を立ててみた。

 魔力には、いくつかの現象を起こさせる要因がある。


 ①何かしらの力をブーストさせる性質

 ②何かしらの現象を誘発する性質

 ③何かしらを変更させる性質


 この3つが混ざり合うことで、魔法やスキルという形で発現しているんじゃないかな。

 だとしたら、今僕の目の前で騎士たちがやっている「炭焼き魔法特訓」は、まさにこの性質の合わせ技ということになる。


「火魔法」で燃やすのは②の誘発。

「風魔法」で酸素をゼロにする空間を作るのは③の変更。

 そして、これらを維持するために魔力を込めるのが①のブーストだ。


「……うん? 待てよ?」


 僕はふと思いついてしまった。アラン君はやっぱり天才なのです。

 もし、魔の森木材自体が『魔力を纏うことで鋼鉄のように硬くなる(①ブースト)』性質を持っているなら、それを完全に炭化させて不純物を飛ばし、魔力で炭化したものをギギュッと濃縮(③変更)したら……一体どうなるんだろう?


「若様。風魔法の維持、これで合っていますか?」


「くそっ、火力が強すぎると木材の魔力と反発して爆発しそうだ。なんて精密な魔力制御だ……」


 顔を真っ赤にして必死に魔力をコントロールしている十数人のエリート魔法騎士たち。試行錯誤しながら何度も失敗して、チャレンジを繰り返す彼らの魔力は、僕の『見える化』を通して見ると……見る見るうちに洗練され、コントロールの精度が跳ね上がっている。うん、これは良い特訓を見つけたかも。


 やがて、密閉された土の窯から、パチパチという澄んだ音が響いた。中からキィィィンと金属のような高い振動音が聞こえてきた。


「よし、みんな魔力を止めていいよ。窯を開けてみよう」


「ハァ、ハァ……終わった……。魔力が空っぽだ……」


「俺たちは一体、何の特訓をしていたんだ?」


 泥のようにへたり込む騎士たちを尻目に、僕は土の窯をパカッと開けてみた。

 中から現れたのは、漆黒に輝き、まるで最高級の黒真珠か黒曜石のようにギラギラと青白い魔力の光を放つ、美しい木炭だった。


『見える化』発動。


『魔導備長炭:魔の森木材を高密度圧縮炭化させた最高級魔法燃料。通常の木炭の約20倍の熱量を放出可能。消滅するまで燃え続ける』


「うわぁ、なんかとんでもないオカルト超エネルギー燃料ができちゃったね」


「な、何ですかこれは? 木炭だと思ったら、これは宝石みたいじゃないですか……」


 復活した騎士たちが、そのキラキラと輝く漆黒の炭を見てガタガタと震え出した。


「フフフッ、これを使って耐火レンガを作成して炉にすれば、鉄鉱石から鉄を取り出すことができるはずだよ。超高純度の鉄インゴットが大量生産できると思うよ。ただ、これだけではダメ。この木炭を燃料にしてさらに火魔法を使うと……」


 赤い炎だったものがだんだんと変化し、青い炎になる。

 そう、火魔法を木炭の魔力でブーストしたのだ。超高温術だ。


「「「俺たちの血と汗の特訓(炭焼き)が、世界の工業の歴史を書き換えたァァァーーー!?」」」


 僕の立てた魔力の仮説と、騎士たちの決死の魔力制御が生み出した『魔導備長炭』。

 よしよし。騎士団の魔法使い達にはこの『魔導備長炭』の生産をしてもらい……


 僕はせっせと魔導備長炭で焼くために、土魔法でドンドンと固めた塊を焼いていく。耐火レンガだ。

 その耐火レンガにも魔力を纏わせるように魔力で包み込みながら焼いて、魔力を定着させていく。こうすることにより耐火レンガの耐久性も上がるはずだ。


 そうして高炉を組み上げていく。かなりのバカでかい高炉が完成して、鍛冶親方をビックリさせた。この世界で最大規模の高炉が誕生してしまった。

 そこに魔導備長炭で高温を可能にしたのだ。

 試しに鉄鉱石から鉄を取り出してみる。


「おお、若様。こんなに素晴らしい鉄は見たことがない。これがこれから大量に……ワシはリベイラ領の領民で良かったぞい」


「そうなんだね。親方……でもまだ終わりじゃないよ。次はこれさ。『魔鉄』だよ。こっちの方が本命だからね」


 僕が『育てる』で作った魔鉄を高炉で熱した。そんなに時間もかからずに純粋な魔鉄へと変貌した。

 やっぱりな……これは魔導備長炭に含まれる魔力が作用して魔鉄の魔力を中和するから、不純物もすぐに燃え尽きるんだ。あくまで予想だけどね。


「おいおい……魔鉄は何度も何度も熱しないと魔鉄が取り出せないのに……若様すげーな」


 そうなんだよね。魔鉄の魔力が邪魔をするから熱が届かないのが原因だろうね。魔導備長炭は燃え尽きるから、中和した魔力がその後は元に戻るって仮説だけどね……

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