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キロイフ子爵領へ

 ガタッゴトッ、ガタッゴトッ。


 馬車の車輪が回るたびに、振動がとにかく凄い。これがこの世界の普通なんだろうけど、前世で自動車を知っている僕としてはかなりキツい。道の整備が進めばマシになるとは思うけど……馬車自体の改善も必要だね。


 なぜ僕が今、馬車に揺られているのかというと、領民や難民の税金などの話から、公共工事として道路を整備することを提案したら……お母様の故郷であるキロイフ子爵領へ向かうことになったからだ。そして馬車で向かっているわけなのだが……両脇には幼女たちがぴったりと張り付いている。


「さすがはお兄様ですわ! 本当にシエラはお兄様の妹で幸せです」


「リーナも! リーナも……!」


 なぜか妹たちも同行することに……。


「リーナ、あまり若様を困らせてはダメですよ? 適度にお預けするのが男性を落とすコツなんですからね」


 リーナの母親でメイドのミーナが声をかける。おいおい、自分の娘に何を教えているんだ……。


「ウフフッ、アランちゃんはモテモテね。お母様はヤキモチを妬いちゃうわ」


 母親のアメリアが微笑んでいる。

 この馬車には、お母様・ミーナ・シエラ・リーナ・僕の5人が乗っている。

 セバスチャンとお父様はお留守番なんだけど……。


 実は、出発前はシエラとリーナが「僕とお母様だけでキロイフ子爵領へ行くこと」に大反対していたのだ。騎士団長のガイウスおじさんと一緒になって……。


「もう、お父様ったら! そんな意地悪をするなら、シエラはお父様とお口をきいてあげませんわ!」


「リーナも……お父様、イヤよ!」


 愛娘2人の容赦ない攻撃に、辺境伯家最大戦力の2人は……その場に膝をつき、マジ泣きしていた。

 なんだか可哀想だったな。最後には魂が抜けたかのように、真っ白に燃え尽きていたっけ。


 そんな僕たちの馬車を守る騎士団は、それぞれが精鋭を名乗るにふさわしい逞しい人たちだ。当然、全員が魔力操作による『身体強化』をやってのける。騎士であり、数人は優れた魔導士でもあるのだ。

 この布陣なら、盗賊団はもちろん魔物からの襲撃も平気だろうね。……現に今も、ゴブリンの群れが馬車を襲ってきたんだけど。


「「ファイアボール!」」


 2つの火の玉が飛んでいく。たぶん、時速150kmくらい出ているかもしれない……。そしてその影から、2つの人影が飛び出した。

 短剣を二刀流で構えた2人は……すれ違いざまにゴブリンを斬り刻む。


「シエラ、もう少し早く踏み出さないと避けられてしまいますよ」


「はい、お母様!」


 アンタかい! シエラが『魔導爆裂娘』になっていくのは、お母様が直々に教えていたからだったのか……。となると、


「リーナ、鋭く刺すのです。そうすれば血があまり出ませんからね。服を汚さずにそのまま若様にお仕えできますよ」


「うん、頑張る!」


 やっぱり! リーナを『脳筋解決策娘』に育て上げていたのは、有能メイドのミーナだったのか……。ていうかそれ、ガチの暗殺剣術だよね!?


 お母様もミーナも、僕が最初から『育てる』でブーストしていたから戦闘力が凄まじいことになっているんだよね。

 それと……お胸様も。お母様はAAからDカップへレベルアップ。ミーナもCからEカップへレベルアップしていた。

 もう、お父様とガイウスの喜びようといったら……。

 新しい自宅を建てる時、防音対策をしっかりとしておいて本当によかったよ。


 そんなわけで、騎士団もこの最強女子4人の活躍のせいでやることがないし……僕もね。

 この4人は、一体どこに向かおうとしているんだろうか……。


 ◇


 そして、やってきましたキロイフ子爵領へ。

 うん、見事なまでに山だね。周りを見渡しても山ばかりだ。ベリエラ山脈と呼ばれるこの山脈は、キロイフ子爵領はもちろん、魔の森の中までずっと続いている山脈で、当然のように危険な魔物も出没する。

 キロイフの領都は少し盆地になっているから、かろうじて耕作はしているけれど……基本的な食料は輸入に頼っている状態だ。


 もちろん、リベイラ辺境伯領は『品種改良』のおかげで最近は超豊作だから、格安で卸しているよ。

 だから持ちつ持たれつの関係だし、何よりお母様の実家だからね。それに、このベリエラ山脈。

 魔の森と同様に魔物が彷徨いているせいで、これまでろくに調査がされていない。フフフッ、お宝の匂いがプンプンするよ〜!


 僕たちは魔力を扱えるようになったしね。優秀な騎士団もいるし、ぜひ調査したいんだよね。金属の鉱石でも出てきたら大ラッキーだし。キロイフ子爵にとっても最高のお土産になるし、リベイラ辺境伯家にとっても絶大なプラスになる。


 さらに道路が開通すれば物資を運搬するのも楽になるし……馬車を改造して快適にすれば、輸送業界にも革命が起きるだろう。魔の森を開拓していけばいずれベリエラ山脈に行き着くだろうけど……それがいつになるかは分からないからね。

 なら、今のうちにキロイフ子爵に任せた方が楽だし、お互いのためになる。


 そんなことを思い浮かべながら、キロイフ子爵領の領都へと到着した。

 街には活気があり、キロイフ子爵が良い領主であることがよく分かる。ただ、やはり生活自体は苦しいのか、僕が転生したばかりの時のリベイラ領と同じような空気感を感じるね。

 だけど……僕たちが来たからには、このキロイフ子爵領も『育てる』で大改革しちゃうけどね!


 だって、僕の理想のスローライフには、キロイフ子爵領の発展が欠かせないんだから。金属の採掘やその加工なんかは、キロイフ子爵領に丸投げする気満々だ。


『部下に任せられる仕事は任せないと、下が育たない』


 前世で上司によく言われてきたことだしね。キロイフ子爵はリベイラ辺境伯の部下にあたるわけだし。あのベリエラ山脈を調査して鉱脈を探しに行きたいけれど……まずは子爵に会って挨拶をしないとね。昔会った時の記憶から変わっていなければ、間違いなくリベイラ辺境伯家の強い味方になってくれるはずだ。


 僕の様々な野望と企みを乗せて、馬車はゆっくりと領主邸へと進んでいく。

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