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僕、誕生

 今、目の前には二つのお山がある。

 そのお山は、全人類の男があの手この手で登頂を目指していくものだ。

 前世で枯れてると言われた……だけど挑戦は自由だろう?

 道半ばで倒れる者もいるだろう。でも、挑み続ける。男はみな、勇者なんだよ。

 ──とか、初っ端から熱くなってしまった……。


 そのお山は小ぶりだが、確かな感触と柔らかさなど、男にとって無くてはならないシロモノだ。

 そして、これからも永遠に追い求めて行く事になるであろう聖地である。


 そう、俺は小さな赤子になり、その光景を見ている。

【異世界転生】というやつか。何度も好きで読んでいた小説や漫画の主人公達と同じ異世界に、俺も来たようだ。


「ばぶぅ」


 うん、声は出るが喋れない。

 手足も動かせはするが、プニプニで力が入らない。


「あうー」


 少し動くだけですぐに疲れるし、自由になるのは視界だけかな。


 周りを見ると、俺を抱いている母親らしき美人さんと目が合った。

 年の頃は20歳にはなっていないかな?

 金髪の碧眼、モデルさんのようなスラッとした体型。お胸は……止めておこう。


「はい、はい」


 母親らしき美人さんに、サービスとばかりに手を伸ばして可愛いアピールをしてみた。


「あらあら、どうしたのかしら。ママですよ、アランちゃん」


 俺の伸ばした手を指でツンツンする姿は母性溢れる女性のようで、密かに安心した。

 どうやら異世界モノに多い不遇スタートは免れたようだな。

 そして、俺の名前は『アラン』というらしい。


 ママさんに抱っこをされながら周りを確認してみる。

 屋敷という感じの造りっぽいな。

 恐らくは元の地球でいうと、中世のヨーロッパあたりの文明かな。

 ドアの傍に、頭に獣の耳を付けた女性が、メイド服を着て待機している様子が見えた。


 獣人だぁ! メイドさんだぁ! と心の中で叫んだが、


「ばぶぶぅ」


 としか言えなかった。それに気づいた我がママさんが、


「あら、ママよりミーナの方が良いのかしら? ミーナ、こっちにいらして」


 ママさんは優しく微笑んだ後に、獣人メイドさんを呼んでくれた。

 なんの耳だろうか?

 少し垂れているな、犬かな?


「あーあー」


 と手を伸ばして耳に触れてみる。


「坊ちゃま、私の耳がお好きなのですか? でもあまり人が居るところでは触ってはいけませんよ。獣人族にとって耳は大事なんですから」


 うん、耳はほんのり温かくスベスベだった。

 ミーナありがとう、という気持ちを込めて指を握ってみた。


「坊ちゃまは女性の扱い方がお上手ですね」


 にっこりと笑ってくれた。

 ミーナは恐らく年の頃は25歳くらいかな。赤茶色の髪でセミロングくらいにしている。

 スタイルは良く、ママさんよりはご立派だ。

 そしてやはり美人さんで優しい。

 うん、異世界がすでに大好きになりました。


 そこにドカドカと足音がして、ドアを開けて一人の男が入ってきた。


「アメリア、体調はどうだ? 大丈夫か!?」


 イケメンだな。

 黒髪に赤い目をした、マッチョではないがスラッとした中に確かに筋肉が詰まっているだろう体つきの男だ。

 多分、俺の父親かな?

 ママさんはアメリアって言うのか。名前までなんか美人さんだな。

 このイケメンとアメリア母様との子供である俺は、かなり将来を期待出来るのでは……?


「ええ、大丈夫ですよ、あなた。心配してくれて嬉しいわ」


 そう言うと、二人は目の前でいきなりチュッチュし始めた。

 子供の目だからかな? あまり見せつけられてもイラつかないな。

 父上、母上。俺は妹が欲しいです。

 是非、可愛い息子の為にご検討下さい。


「おー、アランも元気そうだな。流石は俺の息子だ、どれどれ」


 アメリア母様から俺を受け取ると、抱いて高い高いをする。

 異世界でも高い高いをするんだな、と思いながら喜んであげた。

 全く、手のかかる父上だ。


「じゃあアメリア、無理はしないようにな。ミーナ、頼んだぞ。アラン、パパは仕事に戻りまちゅ〜」


 うん、赤ちゃんプレイはアメリア母様と夜にしてくれ。

 元おじさんの俺にはかなりキツいぞ。


 大分、状況が分かってきたな。

 まずはイケメン父上とアメリア母様の子供で間違いなさそう。

 そして屋敷っぽい建物と、綺麗なメイドさん。

 それに、俺の視界の隅にあるこの『スキル』という文字は……。

 恐らく、転生した主人公達が持つチートというモノではなかろうか?


「ばぁぶぅ」


 一応、ヤッター!と叫んだつもりだが、やっぱり赤ちゃんだったな。

 どれどれスキルは……《育てる》と。

 うん? 何を育てるのだ?

 説明書プリーズ。


 ……分からん。

 まずは『育てる』と聞いて思いつくのは植物かな。あとは動物とか?

 でも今は部屋の中だし、そんなものは無いよなー。


「アランちゃん、ご飯にしましょうね」


 アメリア母様が少し寂しいお胸を近づけてきて、俺は本能のままに吸い付く……。

 うーん、もう少しサイズがあればなぁと思いながら呑んでいると、ふと思いついた。


 人には《育てる》を使えないのかな?

 もしアメリア母様の○○が育てば俺は嬉しいし、イケメン父上が1番喜びそうだ。

 んじゃー、一丁やってみますか。


【アメリア母様のお胸様に《育てる》】


 その瞬間、頭の中の感覚がガラリと変わり──突然、視界がブラックアウトした。


 こうして、俺は『僕』になり、異世界転生初日はお胸様から始まりお胸様で終わった。

「枯れている」と言われたおじさんにとっては、夢にも思わなかった異世界転生の幕開けだった。


(あれ? スローライフは出来るのかな……)

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