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領地の税金

 リベイラ辺境伯領も、僕が転生したばかりの頃とは見違えて、豊かな生活を送れるようになった領民が増えてきた。

 それと同時に、貧民や流民なども受け入れている。

 だがそれにより、既存の領民と新たな領民との間で格差も広がりつつあった。


「お父様、お母様、セバスチャン、ちょっといいかな? リベイラ辺境伯領の税金についてちょっと聞きたいんだけど……」


「お、どうしたんだ? 税金は……なぁ、アメリア」


「もう、あなたは……。アランちゃん、税金なんて知ってどうするのかしら?」


 税金は必要だけど、取りすぎても逆にマイナスになるからね……。上手くコントロールしないと、領民との溝にもなりかねない。


「うん、リベイラ領は今変わりつつあるけど、税金の徴収の仕方によって『アクセル』になるのか『ブレーキ』になるのかが変わるからね……」


「あ、あくせる? ぶれーき? 何それ……」


 お父様が聞き慣れない言葉に、頭の上に大量の疑問符を浮かべている。

 一方で、セバスチャンとお母様は、僕の言葉の裏にある「本質」を察したのか、ゴクリと息を呑んだ。


「若様、それはどういう意味でございますか?」


 セバスチャンが、いつになく真真人まじめな目で書類から顔を上げる。


「今のリベイラ領は、僕が作った品種改良の作物で豊作だよね……それに魔の森の腐葉土効果も凄くて、高値で取引されている。元々の領民は数年前と比べるとびっくりするほど稼げているよね。これが領地発展の『アクセル』……要するに加速装置だね。でも、新しく入ってきた貧民や難民の人たちは、まだ自分の土地もないし、お腹いっぱい食べることすらできていない。そんな彼らからも一律で同じ割合の税金を取ったらどうなると思う?」


 僕は、セバスチャンが広げた領内の地図を指さした。

 そこには広大な土地があり、今までは人類の未踏の地でもあった魔の森が広がっている。そう、世界でもリベイラ領だけが、魔の森が拡大し続ける問題をクリア……いや、開拓するまでに至っているのだ。


「まずは何段階かに分けようよ。元々の領民はリベイラ辺境伯が所有する土地で耕作している。土地の広さや、その収穫量に応じて税金を納めているよね?」


「…………?」


 おい、お父様? あなたは領主でしょう……。


「ええ、そうね……。リベイラ領では厳しい時に領民に助けてもらっていたから、今は『四公六民』ね。それと人頭税よ」


 そう、地税で四割の収穫物を領主に納めた上で、人頭税まで払っているんだ。これでも周りの領主の中では税金は低い方だ。それにお金や作物だけでなく、労役や兵役なんかもある。労働力として働き、兵士として戦う。

 う〜ん、かなりの負担だと思う。


「そこで人頭税は廃止して、『三公七民』にしない? その代わりに商業税を領民にも適用したらどうかな?」


 恐らくアルハダイル王国内では、ダントツで税金が安くなるだろうね。でも、生活に余裕が出れば商売をする者も増えて、領内の経済が活発になる。


「領内の広場を開放して『自由市』を開催しようよ。そうすればみんな自分が作った野菜や工芸品を自由に売れるし、買い物も楽しくなる。お財布に余裕ができれば、きっと笑顔も増えて領内がもっと活気に溢れるはずだよ」


 僕としては、前世のフリーマーケットや商店街のノリで、みんなが豊かに暮らせる「スローライフのコミュニティ」を作りたいだけのごく平和な提案だった。商業税の導入も、物の売り買いで税金を取る『消費税』をパクっただけだ……。


 しかし。

 その言葉を聞いたセバスチャンの手から、パサリ……と書類とペンが落ちた。


「じ、自由市……ですか? それに商業税を領民に……!?」


 セバスチャンの顔からすーっと血の気が引いていく。いや、引いているのではない。あまりの衝撃に、脳の処理速度が限界を迎えているのだ。「領民は田畑を耕し、その収穫物を税とする」……その固定観念に縛られていたからだ。


(な……何ということだ……! 人頭税という最大の重荷を外して民の購買力を爆発させ、その金を領内で循環させるための『自由市』……! しかも、我が領には他国が喉から手が出るほど欲しがる『魔の森の資源』と『品種改良した作物』がある……そんな場所で取引を自由化すれば、周辺の領地はおろか、隣国のサラダン王国からすら商人と富が津波のようにこのリベイラ領に流れ込んでくる……!)


「うん、できれば関所なんかも廃止したいけど……まだその段階じゃないね。アルハダイル王国も敵か味方か分からないし、隣国との関係もあるしね……しばらくは必要だね」


 僕はアゴに手を当てて考える。商業が活発になれば色々できるようになるしね。なにより天候や気温などに左右される農作物頼りにならなくても良くなる。

 それに……お母様やシエラ、ミーナやリーナに楽しんでショッピングしてもらいたい。

 商業だけでなく、生産関係の産業も伸びるだろうな。


 労役についても、貧民や流民に担ってもらえるようにすれば、それが税の代わりにもなるかも……。兵役は、しばらくは我慢してもらうしかない。職業軍人をたくさん雇えるだけのお金はまだ無いからね……。

 これで元々の領民に対しての税金関係はクリアだろう。


 次は、新領民に対しての税金関係を見ていこう……と言っても、土地も金もないから貧民や流民なわけだからね……。さて、どうしたものかな……。

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