騎士団特訓と建築準備
騎士団にとっての誉れとは何だろうか……。
恐らく、人々を守り、その行為を称賛される、そんな感じなんだと思う。
まさに今の状況は、騎士団にとって名誉なことなんだろうな。
その証拠に、騎士団員はみんなヤル気になっているしね。
「おりゃー! 魔物め、住人には手を出させん!」
「「「おお! 騎士団がいれば安心だ!」」」
ならば、魔力操作を一緒に覚えさせて、さらに力をつけてもらおう。人間は修羅場からの脱出や境遇の変化などで成長するものだからね。この魔物討伐はまさにうってつけだろう。それにまだ人数も少ないから、『見える化』で一人一人を見て、適性などを観察できたらいいな。
騎士団にはリベイラ領のヒーローになってもらおうか。
それにはやはり魔力だろう。まずは騎士団長のガイウスおじさんに魔力の有用性を理解してもらい、ガイウスおじさんから広めてもらうのがいい。騎士団長としての格も上がるし、騎士団員の忠誠心も厚くなるはずだしね……。
僕は、隣で大剣を振るっているガイウスおじさんに声を掛けた。
「ねえ、ガイウスおじさん。騎士団も僕と同じことができたらいいと思わない? さっきガイウスおじさんが言っていた『僕のヒミツ』、ガイウスおじさんになら教えてあげるよ。できるようになれば……ほら」
僕はそう言うと、魔の森の木を両断しただけでなく……細切れにした。
ガイウスおじさんを見ると、あんぐりと口を開けたままだ。
「どうかな? ガイウスおじさんなら使いこなせると思うよ。他の騎士団員が使えるようになったら、立場がないでしょ?」
「わ、若様……。本当に俺に……いや、私にできますか?」
フフフ、ここでプライドが邪魔をするような男だったらこの話はしないよ。自分自身のちっぽけなプライドより、強くなるためのプライドを持っている男だからね。流石だよ。
「もちろん。口調は今までと一緒でいいよ。まずはね……ガイウスおじさんが言っていた魔力がキモなんだ。ガイウスおじさんも、魔力を無意識に使っているんだよ」
子供に教えられても素直に受け取り、自分の力に変えていく姿には恐れ入るよ。
それでも魔力は一朝一夕で増えるものでもないからね。僕の『育てる』で一気にやると、恐らくは内部が破裂する。こわ〜。徐々に魔力の器を大きくしないと……。でも、ここで『見える化』を使えば、その限界が数値で見えるからね。フフン。
「……うん、今日はここまで。これから毎日来てくれるんでしょ? なら、これからも続けていくからね」
継続は力なり。慌ててもダメだからね……。
それから数日、同じことを繰り返し、僕たちは魔の森から木材の切り出しを、住人たちは木材の運搬を担っている。
まだ住宅建築には手をつけていない。というか……僕以外に木材の加工ができないからね。こればかりは仕方ない。まあ、木材はすぐには使えないよ。乾かすために放置しないといけないからね。
そのために木材置き場を作る。
屋根を作り、直射日光や雨から木材を守る。地面から離し、雨などの水が入るのを防ぐ。風通しを良くするために、単純に重ねるのではなく間に細い棒を挟む。
だけどこれだけだと時間がかかるから、やはりここは魔法の出番だね。
『ヒートブリーズ』と名付けた温かい風を、火魔法と風魔法の合成で作って使ってみた。
これが難しい。微妙な魔力操作を要求される。
ふむ、魔導士部隊ができたら特訓でやらせてみるのもいいかな。
僕は日が落ちてからここで魔法を使い、帰宅する――そんな日々を一ヶ月ほど続けた。
そして……。
「オリャャーーー!!」
ものすごい雄叫びと共に、ズドーンと魔の森の木が地面とサヨナラをした。
そう、声の主は僕ではない。ついにガイウスおじさんが成功したんだ。
「わ、若様……! や、やリました! 俺にもできた! 凄いな、まるで切った手応えがない……!」
「フフフ、流石は軍人さんだね。完璧だったよ。魔力の流れも、流し方も、魔力を集めるのも……だけど、まだ入り口だよ」
「入り口……ですと? これは、ある意味極めた技だと思うのですが……」
「甘いよ。今は手のひらに魔力を集めるだけだけど……これを例えば腕に集中したら? 足なら? それもさらに越えて、全身に魔力を纏ったら? この木と同じ状態になると思わない?」
ガイウスおじさんは僕の言葉を受け取り、下を向いて震え出した。
恐らくは、この魔力特性の凄さに気がつき、まだ道半ばなのだと悟ったのだろう。
「……凄い。まだ終わりではなかった。なるほど、入り口とは。若様、お願いです! 騎士団員にも広めさせてもらえませんか? もちろん、今後も魔の森の伐採は騎士団がお手伝いさせていただきます。いえ、伐採をお任せいただきたい!」
アハハ、狙い通りだね。そうだね、どうせならメリットを提示して、向こうからお願いしてもらわないとね。
「うむ。ガイウス騎士団長。父アレックスに代わり、息子アランが命ずる。リベイラ騎士団に魔の森伐採の任を授ける。宜しく頼むぞ」
これを見ていた騎士団員もガイウスおじさんの周りに集まり、僕を中心に膝をついて忠誠を尽くす。
「ハッ! リベイラ騎士団一同、魔の森伐採の任、確かに承りました!」
「うん、みんな宜しくね。団長自ら教えてあげてね。僕も手伝うからね」
僕は5歳児らしくニカッと笑い、その場を立ち去る。
当然――『育てる』を使ってからね。




