リベイラ領の住宅事情
う〜ん、迷うね。魔の森の木材の目処が立ったわけだけど……そうするとやりたいことばかり浮かんでくる。
そうそう、魔の森の木材は、伐採しても魔力が減らないことが『見える化』で分かったんだ。要するに、硬度を保った状態で木材にできる。これは大きな発見だよ。
だからこそ、この木材が活躍できる場所はたくさんある。
リベイラ領の領都を囲う防壁にしたいし、この強度なら武器にも使える。住民の住宅なんかも……。
でも考えてみると、すぐに必要なのは住宅だと思う。
みんなが住んでいる所は掘っ立て小屋だし、雨風にさらされて暮らすのはキツイからね。
今までのリベイラ領の生活で我慢してくれていた住人に報いたい。それだけでなく、住人の住宅を優先させることでリベイラ領の忠誠心を『育てる』ことができる。それに伴って、木材を運んだり加工したりするための人材確保にもなるし、彼らがそのまま木工職人になれるかも……。
そうなれば、お父様に相談して決めてもらおう。優秀な領主のお父様なら分かってくれるはずだ。
「コンコン」
僕はお父様の執務室の扉をノックする。
執事さんが顔を出し、僕を見るとニッコリと笑って中に入れてくれた。よしよし、順調に『育てる』ができているね。
「旦那様、若様がいらっしゃいました」
「お父様、魔の森の――」
急に賢者モードになる我が父アレックス。一瞬の変化にちょっと笑ってしまう。
でも、言わないことには始まらない。
「失礼しました。お父様、魔の森の木を伐採することに成功しました……」
お父様は賢者モードのまま、コクリと頷いている。ウシシ、ならば。
「その木を使って、まずは領民の住宅をすべて建て替えましょう……いいですね?」
お父様は相変わらず「ウンウン」と頷いている。よし、作戦成功だ。
「おお、流石はお父様。まさに名君としての判断です。これまでの領民の生活を考えてくれる領主もお父様くらいですよ。ねぇ、執事さん」
そう、この場には僕とお父様だけでなく、執事さんも待機しているのだ。そして執事さんは当然、領民でもある。
ウシシ、思った通り、執事さんは片膝を突いてお父様に――。
「アレックス様……さらなる忠誠を!」
ほらね。すかさず『育てる』を使ってダメ押しだよ。執事さんみたいな優秀な人材は逃せないからね。
「……へっ? あ、おう。今まで必死についてきてくれた領民に報いるのは当然だからな……」
フフフ、言質は取った。これで魔の森の木材を使っていろいろとできるぞ。一度、住宅を建築してみたかったんだ。これは僕の願望と領民の民意が合致したね。
「お父様もこう言っています。執事さん、馬などの家畜や、力自慢の男の人を集めてください」
「……若様、ありがとうございます。仰せの通りに」
執事さんは素早く立ち上がると、すぐに領民を集めに向かってくれた。あ〜あ、執事さんの忠誠心も天元突破だね。僕もお父様に「失礼しました」と頭を下げて執務室を後にした。
◇
おお〜、見渡す限りの人、人、人だな。誰も彼も「お父様に感謝してます」って顔をしてる。良きかな良きかな。例え小さな「ありがとう」でも、僕にはそれを『育てる』ことができるのだから。
「みんな、集まってくれてありがとう。これから向かうのは魔の森だよ。そこの木を木材にして、みんなの家を建てるからね……協力してね!」
「おお、話は本当でしたかい! 任せてくだせえ、若様!」
ウンウン、良いね。労働力ゲット〜だぜ〜、なんつって。
それに多分、そろそろ……来た。
「我らが魔物からお守りします。若様は存分に作業を……」
騎士団長ガイウス自らが来てくれた。アハハ、これはいいぞ。多分、お父様が手配してくれたんだな。でもね、これを利用しない手はないよね。
「おお、みんな! 安心して欲しい。我が父アレックス辺境伯自ら、精強な騎士団と最強の騎士団長ガイウスを遣わせてくれたんだ!」
「「「おおおお! リベイラ領万歳! 辺境伯様万歳! リベイラ騎士団万歳! ガイウス騎士団長万歳!」」」
フフフ、ものすごいシナジーでお父様だけでなく、騎士団長や騎士団の好感度も『育てる』んだよ。そして住人を守る使命を帯びた騎士団もかなり燃えているね。当然、こっちも『育てる』を発動だ。
順調、順調。僕は斧を片手に、スパスパと魔の森を木材へと変えていく。
始めはその様子に全員が唖然としていたが、すぐに「まぁ、若様だからな」と納得された。……何故だ? 僕はそんなに非常識なんだろうか?
魔の森を木材に変えられるのは僕しかいないしね。将来的にはリベイラ騎士団に魔術師部隊とか作りたいな。その魔術師の訓練にももってこいかも。『見える化』が無くても、魔術師なら感じることはできるようだし。それも徐々にやっていかないと……。でも、魔法を使うには才能も必要だしね。
僕が木を切る隣で、騎士団長ガイウスも愛用の大剣を振るって確かめている。
「ガキィーン!」といい音が出たね。……あっ、手が痛かったんだ。
「なるほど、若様のそれがヒミツなんですな。恐らくは魔力。斧に少し感じますな〜。だけど……確かに難しい技術です。私も魔力操作は得意ではありませんからな……。でも、それだけではない。違いますかな?」
おお、流石は戦いのプロだね。ガイウスおじさんなら、武器に魔力を纏わせるのもすぐかもしれないな――。




