透明人間刑事 数寄屋橋透13
〜山荘
「鏡ニ?」
透は呆然と立ち尽くした
禁紋の石碑が徐々に光を増していく中、才蔵の言葉が頭に響く
「奴らの血筋は特殊だ!数寄島では双子が生まれることが稀にあり、彼らは互いの意識を共有できる」
鏡ニと呼ばれた男が突然意識を取り戻し、狂ったように笑い出した
「無駄だ!兄はすでに次元の門を開いた!数寄島は再び地上に現れる!」
石碑から漏れる光が強くなり、山荘全体が揺れ始めた
霧の中から不自然な青い光が見え隠れする
「まずい!」才蔵が叫ぶ
「儀式は始まっている!このままでは……」
透は咄嗟に動いた
禁紋の石碑に触れようと試みるも、追いついて来た土影が操る土人形が彼を阻む
土人形の腕が透の透明な体を捉えた
透は身動き出来なくなった
そのとき、
鏡ニの目の前に木の葉が舞い落ちる
一枚、二枚、三枚、やがて、幻覚の中で森中の木の葉が降り注ぎ、鏡ニの身体全体を埋め尽くす
身体はフワリと宙に浮いた様に軽くなり、反対に瞼はズシリと重くなる
「眠れ、ゆっくりと眠るのだ!眠る前に鏡介の居場所を語るのだ」
声の主は数寄島才蔵だった
「西の洞窟……」
鏡ニは崩れ落ちる
「心術を使えるのは、お主らだけではないぞ!」
手練れの才蔵の心術であった
一方、土影の首にも透の護衛ミツバチドローンの麻酔針が刺さり眠りに堕ちる
すると、土人形達は地面の一部へと帰っていく
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〜西の洞窟
山荘の背後に広がる崖の下
霧に包まれた岩肌にぽっかりと穴が開いていた
「ここだ」
才蔵が息を切らせながら指差す
「数寄島の伝承によれば……鏡介は"境界の門"を開こうとしている」
洞窟内は意外にも整備されていた
壁には古代の数寄島の紋様が刻まれており、床には複雑な陣が描かれている その中心に佇む人影があった
「来たか……」低い声が響く
「完全なる透明人間……そして数寄島の裏切り者よ」
数寄島鏡介がゆっくりと振り返る
その顔は鏡ニと瓜二つだが、目つきが全く異なる 知性と狂気が同居するような独特の眼差しだった
「鏡介……」
才蔵が警戒しながら進み出る
「なぜ今になって数寄島を呼び戻そうとする?」
「衰退だ」鏡介は冷たく言った
「我々の血筋は希薄になり、能力は衰えていく…透明な一族としての誇りを忘れた愚か者どもが増えた」
透は鏡介に近づきながら静かに言う「でも……それだからこそ現代に適応できたんじゃないですか?」
「適応?」鏡介が嗤う
「それは堕落だ!お前たちのような半端者を作るための屈辱的な妥協だ!」
突然、陣が青白く光り始め、鏡介の胸に禁紋が現れた
「止めろ!危険だ」透が叫ぶ
「お前は知らないだろうが……」
鏡介の目が危険な光を帯びる
「数寄島が崩壊した理由を」
「え?」
「我々の一族を恐れた者たちが……封印を解いて禁忌の術を使ったからだ!透明な一族が強すぎる力を得ないようにするために……」
洞窟全体が震動し始めた
天井から砂塵が降りてくる
「さあ……門が開く」
鏡介が両手を広げる
「我々は帰還する!真の透明な世界へ」
禁紋が最大限に輝き、洞窟全体が異空間との接続を始めていることが感じられた 空気が重くなり、皮膚が痺れるような感覚が走る
「透……」才蔵が震える声で言った
「数寄紋を……使ってくれ」
透は首から下げていた小さな袋から『数寄紋』を取り出した
不思議な文様の刻まれたそれは、禁紋の光を受けて淡く発光し始める
「これを……どうすればいいんですか?」
「鏡介の禁紋に……直接触れさせるんだ」
透は躊躇なく動き出した 鏡介との距離を縮めるために…だが鏡介は既に気づいており、虚空から現れた鎖のような光の帯が透の四肢を拘束した
「無駄だ……お前の力は偉大だが……所詮は個人の力だ」
光の鎖が締め付けを強め、透は息が詰まるような苦痛を感じた
だがその瞬間—
「これでもくらいなさい!」
洞窟入口から放たれた小さな物体が鏡介の腕に命中する それは……ミツバチだった ナイスのドローンだ
一瞬の隙を作り出したその直後に、才蔵が反応する
彼は突然鏡介の背後に現れ、数寄紋を鏡介の背中に押し当てた
「これは……!」鏡介の驚愕の声が響く
禁紋の光が不安定になり始める
同時に光の鎖の拘束が弱まった
「今だ!透!」
才蔵の叫びとともに透が動く
拘束を振りほどき、透は鏡介に向かって一直線に飛び込む
そして両手で数寄紋を握りしめ、全力で鏡介の胸部の禁紋に押し付けた
瞬間、鏡介の体が電気に打たれたように震え、そして……
「思い出す……」
鏡介の声が変わった
「私は……忘れてしまっていた……」
禁紋の光が急速に収束し始める
洞窟内の異様な空間歪みが解消されていく




