透明人間刑事 数寄屋橋透10
数寄屋橋透刑事が非番の日、徳川埋蔵金事件で一緒だった青空鳥子から電話があった
鳥子
「埋蔵金発掘に立ち会った所、中身は金では無く、美術品や古文書だった 古文書を読ませて貰うと、江戸初期の所領覚書の中に透明な一族の記述を見つけたわ!
[透明な忍者の一族、加藤清正、真田昌幸、浅野幸長暗殺の功により、所領永代安堵 数寄島]」
透
「数寄島か!先祖は忍者だったのか!今日こそは、叔父さんに話してもらうよ」
〜数寄屋
その夜、閉店後の小料理屋[数寄屋]には、透と叔父の姿があった
透
「数寄島が透明人間村である事が判ったよ!叔父さんは何も話してくれないが、両親は数寄島にいるのかい?それに叔父さんは何で透明じゃないんだ?ずっと気になっていたんだ!お願いだ!知っている事を話しておくれ」
叔父さん
「いつか、こんな日が来ると思っていた…」
叔父は杯を置き、ゆっくりと口を開いた
「俺の名は数寄屋橋才蔵…正確には数寄屋橋才蔵ではなく、数寄島才蔵であり、数寄島七人衆の一人だ」
透は息を詰めた
「数寄島……」
「そうだ!かつて加藤清正や真田昌幸や浅野幸長を暗殺して、戦乱の世に終止符を打つ序章となった『透明な一族』の末裔だ」
叔父は腰のあたりから一枚の紙を取り出した
古びた和紙に不思議な紋様が描かれている
「これは『数寄紋』」
透が手を伸ばすと、紙はスッと透き通った
「触れるだけで透明になる……」
「数寄島の人々には生まれつきの能力があった…だが誰もが完全に透明になれることはなかった…多くは半透明か部分的に透ける程度だった」
叔父は袖をめくると、右腕の肘から上がほんのりと透明になっていた
「俺の場合、この腕だけが透ける…他の部分は普通の人間と同じだ」
「数寄島は江戸時代から隔絶された場所だった…文明から離れた生活を送ってきた…地質は透明な岩盤の上にあり、米や野菜等の作物は透明だった…代々、透明な作物を食べ続けた島人も透明化が進んでいった訳さ」
「両親はそこにいるのか?」
叔父の表情が曇った
「彼らは死んだ…二十年前の大災害で」
「大災害?」
「数寄島の透明な岩盤が、突然崩壊した!原因は不明だ」
透は言葉を失った
自分の両親の死因について何も知らされずに育ったことを思い出した
「透、お前は特別だった」
叔父は声を低くした
「生まれながらに完全な透明人間だった…そんな例は数十年に一人しかいない」
「数十年に一人…それなら、自分以外にも完全透明人間が数人は存在する計算だ」
「そうだな…以前に噂では存在を聞いた事がある」
「だから俺は引き取られたのか」
「いや……」叔父は首を振った
「先ず、数寄島七人衆の話をしなければならない…その一人に数寄島鏡介と言う心術(催眠術)使いの忍者がいた…向上心の強い男で…いや、強過ぎたのだ!ある日、鏡の中の自分に向かって、最強の忍者になる様に強力な心術を発動してしまったのだよ!人格を失った鏡介は島の仲間に次々と心術を使って、配下にしてしまったのだよ!更には、外国のスパイ組織と報酬目的の取引を始めようとした…そこで、お主の父親の登場だ!七人衆の一人である数寄島開は祈祷師で、本土の神社で仕事をしていて、心術をかけられていなかった
そして、幼かった透を弟で小料理屋を営んでいたワシに預けて数寄島に潜入した!兄は忍術[術式解除]を『数寄紋』和紙に施した…『数寄紋』に触れると、鏡介の心術を解除することが出来たのだ…その後、兄が数寄島に潜入して3日後だった…数寄島の透明な岩盤が崩れ始めた…ワシは救助に向かったが、既に島影は跡形も無くなり遅かったのだ…これからはワシの想像なのだが、数寄島七人衆の一人に数寄島土影がおり、土影が土遁の奥義を使ったとみている」
「なんで本当のことを隠していたんだ!」
「お前の安全のためだ」
叔父は厳しい目で甥を見た
「透明人間の力を欲しがる者は多い!特に最近は……」
窓の外から微かな物音がした
「伏せろ!」
叔父の叫びと共に、ガラスが砕け散る音が響いた
「透明人間殺しの始まりだ」
叔父は低い声で言った
「昔から続いている……透明な力を持つ者同士の争いが」
暗闇から複数の影が忍び寄る
全てが透明ではないが、半透明の体を持つ刺客たちだった
「透、『数寄紋』を使ってみろ!もしも、鏡介が生きていて刺客を送り込んだなら解除出来るはずだ」
そう言って叔父は木刀を構えた
「親の代わりにお前を守る理由が分かったか?」
「俺は刑事だ!大切な人を守る義務がある!」
二人の数寄島一族が並び立つ
外では嵐のような風が吹き荒れていた
「さあ……」叔父は刀を握り直す
「この血塗られた因縁に終止符を打とう」
夜明けまでの長い戦いが始まった




