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不死身探偵フェニックス  作者: 猫月猫日猫曜日


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透明人間刑事 数寄屋橋透9

〜喫茶[メープル]


スルーーーー


怪訝な表情の鳥子の母

「おかしいわね…自動ドアが開いたのに誰もいない…」

少し焦る鳥子

(国家機密を母に知られる訳にはいかない)

「センサーの前を鳩が通り過ぎたのよ」

鳥子の母

「なあんだ!」


休日、数寄屋橋透は喫茶[メープル]にいた

透明人間である透は、パニックを恐れて、国家機密を守る為にも飲食店に入った事が無かった


そこで、青空鳥子は[メープル]の奥にある[ブルーバード探偵事務所]なら衝立があるので、数寄屋橋透を招待したのだった


透

「喫茶店初めて入った」

鳥子

「透明人間も苦労するわね」

透

「特捜部のインスタントコーヒーと全然違う!」

鳥子

「うふふっ、ところで、数寄屋橋さんはどんな顔をしているの?」

透

「さあ?鏡に映らないから自分でも分からないんだ…もしかすると、叔父さんの若い頃に少しは似ているかもしれない」

鳥子

「今度、魚拓とってみない?」

透

「魚じゃ無いよ!でも、少し興味あるな」


鳥子、ニヤニヤしながら

「女風呂を覗いたりするの?」

透、少し怒る

「俺は刑事だよ!そんな事しないよ!」

鳥子

「うふふっ」


その時、衝立の向う側から男の声がした

「ブルーバード探偵事務所に依頼があるんですが…」


透は隅に移動して気配を消した


鳥子

「どうぞ、こちらへ!どの様な御依頼ですか?」


席に座った男が話始める

「私は小栗埋蔵と言います 幕末に徳川埋蔵金を隠したと言われる小栗上野介の子孫で、代々埋蔵の名を拝命しています 埋蔵金を探す宿命であった父が、先月他界しましたので、私が後を継ぎました

しかしながら、何世代も探せなかった埋蔵金を見つけるのは不可能だと思っています そこで、探偵依頼に来た訳です」


鳥子

「何か手掛かりはあるんですか?」


小栗

「埋蔵場所は分かりませんが、地図は徳川家ゆかりの神社に隠されていると推定されています」


鳥子

「徳川家ゆかりの神社は多いですよね」


小栗

「日光東照宮が有力です カゴメの唄が暗号と言われています

[夜明けの晩]とは日の出前

[鶴と亀]彫像が多く有ります

[滑った]月光又は日光による影

[後ろの正面]?

これらが、現在分かっている手掛かりになります」



「カゴメの唄……」鳥子が小さく呟く

「江戸時代の童歌ですよね」


小栗は頷いた

「はい、一般的には五・七・五・七・七の音で始まりますが、我が一族に伝わるのは少し違います」


彼はポケットから古いメモを取り出した

墨で書かれた文字が微かに読み取れる


カゴメカゴメ

籠の中の鳥は

いついつ出やる

夜明けの晩に

鶴と亀が滑った

後ろの正面だあれ?


「普通なら『後ろの正面だあれ?』という部分は子供たちが遊びに使う問いかけですが……」


「それが鍵かもしれませんね」

鳥子は真剣な表情でメモを眺める

「ところで小栗さん、この件は警察には相談されていないのですか?」


小栗は苦笑した

「実は数年前に警察に届け出たのですが……」

彼は言葉を選ぶように一度口を閉ざした

「埋蔵金の話になると途端に態度が変わって、警察は民事不介入だと……」


突然、小栗の背後から透明な気配が動いた

数寄屋橋透が身を乗り出しているのを感じ取ったのか、小栗氏が振り返った


「今……何か……」


「あ、すみません!空調を弱くしますね」

鳥子が慌ててリモコンを操作する


〜日光東照宮

「すごい人混みだ」

鳥子は参拝客の多さに驚いていた


小栗

「これでは調査が進みませんね」


「大丈夫ですよ」鳥子が微笑む

「私たちは表立って動かないので」


三人は境内に入っていった

まずは本殿を目指す

鳥子は頭上の空を見上げながら歩く

「四十雀に見てもらうわね」


「お願いします」

小栗が頭を下げた

「我が家の悲願なのです」


その時だった

透のイヤホンが反応した

『気をつけろ』

若嶋津だった

特捜からの密かな警告

『徳川埋蔵金を探る輩が他にもいる!過激派組織「月影の会」が昨夜神社に侵入を試みたらしい』


「どうしたの?」

微かな音に気付いた鳥子が独り言の様に尋ねる

透がわずかに首を振ったが、見える訳もない


透は無言で鳥子と小栗の会話を聞き続けた

この二人を守らなければならない


「まずは有名な『眠り猫』を見てみましょう」

小栗が提案する


階段を登り切り、『三猿』のある場所を通り抜け、奥宮の入口にある坂下門に到着した

そこには確かに『眠り猫』が存在し、、眠っているのか、様子を伺っているのか分からない

その瞳には何か細工があるようにも見える


その時、上空から四十雀が舞戻り鳥語で話す

(変わった所は無いけど、本殿が籠の形をしている)


「やはりここか……」

鳥子は小栗の耳元で囁いた

「暗号の起点は本殿内部かもしれません」


「どうして分かるのです?」

小栗が驚いた様子で尋ねる


「この配置……」

鳥子は案内図を指す

「東照宮全体が碁盤の目のように設計されている…そして本殿はまさに中心点に当たる」


鳥子が目を輝かせた

「カゴメの唄!籠の中とは、本殿の中」


小栗

「本殿は徳川家ゆかりの者しか入れませんが、小栗家は許可されています」


日が沈み始めた頃、三人は本殿内の祈祷所へと導かれた

普段は一般公開されていない場所だが、小栗氏が用意していた許可証によって入ることができた


「ここで父は最後に祈りを捧げていました」

小栗氏は感慨深げに言った

「『答えは影の中にある』と言い残して……」


祈祷所の壁には徳川家康の生涯を描いた絵馬が掛けられていた

鳥子はそれらを詳細に観察する


その時、祈祷所の扉が勢いよく開いた


「邪魔しないでくれ!」

黒装束の男達が三人に近づいてきた

「埋蔵金は我々『月影の会』が手に入れる!」


透は瞬時に透明な身体で前に出た

黒装束の人物の動きを封じる


すると、闇の中から若嶋津の部隊が現れ、黒装束の男達を確保した

「この方は正当な権利をお持ちだ」

「非合法な介入は認められない」

乱入者達は連行されていった


祈祷所の静けさが戻ってくる


ホッとした透が壁を見上げると、欄間に透かし彫りがあり、鶴と亀が彫られていた

外に周り、欄間に懐中電灯をあてると、鶴と亀の影が滑る様に伸びていく

祈祷所の中で影はスルスルと伸びていき、やがて大黒柱に届く

鳥子が大黒柱を探ると正面部分が飾り板になっていて、手前に引くと取り外す事が出来た

飾り板の裏側には地図が彫られていた


〜バス

帰りのバスの中で、小栗は満足げな表情を浮かべていた


「ありがとうございました」

彼は深々と頭を下げる

「地図の解読はこれからですが……」


「それが本当の埋蔵金でしょうか」鳥子が尋ねる

「徳川家の財宝とは……」


「おそらく形骸です」

小栗は遠くを見つめた

「私の先祖たちは、本当に財宝を求めていたのではありません」


彼は鞄から古文書を取り出した

「これは父の研究ノート〜徳川家が密かに保護してきた文化財の一覧です!幕末の混乱期に全国から集められた美術品や書物……」


「それこそが真の『埋蔵金』」

鳥子は理解した

「日本文化の財産……」


透は静かに微笑んだ

「だからこそ守らなければならない」


小栗は辺りをキョロキョロ見回す

「今日は時々、男の声が聞こえて来る…」


鳥子はニッコリ笑みを浮かべて、

「幻聴ですよ!さもなくば、ご先祖様では…」


夜空に星が瞬き始めていた

新しい宝探しの旅が幕を開けたばかりだった

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