悪業探偵石川六衛門(その3)
〜隠し目付本部
「石川六衛門マークしましょう」と黒いスーツの男が言った
「あの噂の探偵か?」
「いえ、違います!彼は単なる詐欺師ですよ」
男の名は若嶋津
警視庁特別捜査班のエースだ
彼は六衛門の正体に気づいていた
〜ミッドナイトエンジェル探偵事務所
六衛門の携帯に非通知の着信があったのは翌日のこと
「もしもし……」
「石川六衛門さんですか?私は新国立博物館の学芸員です 大切な話をしたいのですが……」女性の声だった
六衛門は直感的に危険を感じたが、「ぜひお聞かせください」と答えた
「実は……」彼女はためらいがちに続けた
「国宝の平安時代の巻物が何者かに盗まれる可能性があります…警察に相談する前に貴方の意見が聞きたいのです」
六衛門は眉をひそめた
彼の頭には警告灯が点滅していた
罠かもしれない
しかし……
「わかりました 明日伺いましょう」
電話を切ると六衛門は深く考え込んだ
義賊として生きる以上、時にはリスクを冒さねばならない
「行ってやろうじゃないか」六衛門は拳を握りしめた
窓の外では雨が降り始めていた
暗雲の中に輝く月明かりが、まるで彼の運命を照らしているかのようだった
〜ホテルのラウンジ
翌朝、六衛門は指定された待ち合わせ場所である高級ホテルのラウンジに向かった
ドアを開けると同時に緊張が走る
店内に漂う洗練された空気
しかし六衛門の目は既に動いていた
カフェテリアの奥に座る黒服の男性
そしてその向かいに座る細身の婦人
写真で見たことがある新国立博物館の館長夫人だ
「失礼します」六衛門は柔らかな笑みを浮かべながら歩み寄った
「石川六衛門です どうぞご安心を」
婦人は不安げに目を伏せていた
横にいた黒服の男が立ち上がり、「こちらが依頼主の伊集院夫人です」と紹介した
「では……」六衛門が話し始めると同時に黒服が遮った
「実は今日来ていただいた理由は別にある」
懐から小さな録音機を取り出し、ボタンを押す
「警視庁の若嶋津です あなたこそが最近流行りの怪盗ではないですか?」
六衛門は微笑みを崩さず、「いやいや、突然何を仰るのか分からない」と手を振った
「私があなたの言う怪盗だとしたら、こんなホテルのラウンジではなく、夜中に忍び込むべきでしょうね」
若嶋津は冷ややかに笑った
「ではこれから3日間、あなたの行動を観察させていただきましょう!何もなければ我々は去ります…ただ……」
彼の目が鋭く光った
「もし怪しい動きがあれば即座に逮捕します」
人の神様☆年貢の納め時☆
六衛門の背中に冷たいものが走った
これは完全に嵌められた
だが同時にチャンスでもある
逆にアリバイを作って、疑いを無くすシナリオを考えよう
「いいでしょう」と六衛門は答えた「ただし条件があります もし私の潔白が証明された場合……」
若嶋津は眉を上げた
「なんでしょうか?」
「新国立博物館の裏庭に、保護猫施設を設置してください」六衛門は真剣な表情で言った
若嶋津は笑いそうになったが堪えた「館長に検討して貰いましょう」
猫の神様☆ガンバレー☆
こうして予期せぬゲームが始まることになった
六衛門はこの3日間で自分の無実?を証明しなければならない
それとも——
「さて、どうしたものかな」
六衛門は胸の内でつぶやいた
人は試されるとき、本当の姿を見せる
六衛門は窓の外を眺めながら微笑んだ
街路樹の枝には小さな猫が眠っていた
まさにこれこそ彼の守るべき正義なのだから…




