第48話 綰鏡神・スザリーク
「お前は一体何者だ!」
ハルが尋ねる。
「私は綰鏡神・スザリーク。ハル、お前をいただきにきた」
黒いベビードールの女性──綰鏡神・スザリークがそう言い放った。
「俺を……?」
「ハル君を狙ってるって、どういう事ですか!」
「あぁ〜正確には、ハルじゃなくてハイルなんだよな」
「「っ!?」」
スザリークはハルの正体を知っている。
その事実に驚いた二人は、さらに警戒を強める。
「そんな警戒すんなよ。別にお前達と戦うつもりはないんだ」
「「……?」」
スザリークのその言葉に、二人は疑問符を浮かべる。
ハルを狙っているくせに戦うつもりがないとは、一体どういう事なのか。
これは罠。そう思うのが自然だが、ハルはなぜかそう思えなかった。
しかし──、
「ふざけないでください! 突然現れてハイルを狙っていると言っておいて、戦うつもりがないなんてそんな嘘、誰が騙されると思いますか!」
と、イリンが杖を構えながら叫ぶ。
「いや……本当なんだが……」
それを受け、スザリークは頬を掻きながら困った表情を浮かべる。
「ハイル、油断なく行きましょう……」
「え? あ、う、うん」
イリンは杖を。ハルは剣を構える。
「はぁ〜……戦う気はないって言ってんのに」
スザリークは呆れたように髪をワシャワシャを掻いたあと、面倒くさそうな目で二人を見つめ──、
「「なっ!?」」
指パッチンをして、二人の剣と杖を使えなくしてしまった。
スザリークが指パッチンをした瞬間、イリンの杖がグニャンと曲がり、ハルの剣とくっつき一つの輪っかとなって使い物にならなくなってしまった。
「こ、これじゃあ技能が使えない……」
イリンは技能使いの為、杖がなければ力を行使できなかった。
ハルは剣がなくとも魔法を使えば戦えるが、イリンの治癒によるフォローがなくなれば、いつ倒れてしまうか分からないので、使うのが躊躇われる。
「私は話がしたいんだ。そんな物騒なもんはいらない。な? 話をしようぜ」
「くっ……」
ハルとイリンはゆっくりと後退していく。
スザリークがゆっくりと歩きながら、二人に近づいていってるからだ。
「ハイル、ずっとお前を探していたんだ。ずっと、ずっと」
「俺を……?」
スザリークは進みながら、ハルとイリンは後退しながら会話をする。
「そもそも、なぜあなたはハイルを狙っているんですか……!」
「ハイルは私達の家族だ。いなくなった家族を探すのは当然だろ?」
「「家族……?」」
イリンはふと、今までハイルから家族に関する話を聞いたことがなかった事を思い出す。
「俺に家族はいない……俺に、俺に、家族は……」
(そもそも俺は、これまでどうやって生きてきたんだ……?)
「いるんだよ。私達と言う家族が。ほら、一緒に帰ろう。弟も待ってる」
「「……………」」
二人は考えながら後退を続ける。
スザリークが何を言っているのか。それはよく分からない。
しかし、一つだけ分かっているのは、スザリークは敵だと言う事。
この状況を打破するにはどうすればいいのか。
剣も杖もなく、どう戦うのか。
魔法を使えばいけるのか。
色々と考えながら後退していると、イリンがとあるものを踏んでしまう。
「「っ!?」」
「しまった!?」
イリンが踏んだもの。
それは転移技能陣だった。
「どこに行くかは分からないけど、これはチャンスだ」
「うん! とにかく、ここから離脱しよう!」
「待てっ!」
急いで二人に駆け寄るスザリークだったが、時すでに遅し。
二人は転移技能陣によって、転移してしまった。
「くっ……! 失敗した……! 有無を言わさず二人を包んでおくんだった……!」
スザリークは心底悔しそうな顔を浮かべながら、叫んだ。
「仕方ない。計画変更だ」
スザリークはそう呟いたあと、スザリークのいる場所が歪み、輪っかの形をした空間が出現し、それが消えるのと同時に、スザリークは姿を消した。
転移技能陣を踏んだ二人は、どこに転移してしまったのだろうか。
ちなみに、スザリークが二人の前に現れたのと同じタイミングでクロハとテルハの元にビャクトリースが出現。
ハルとイリンが転移してしまったのと同時に、クロハとテルハの二人は眩い閃光に包まれた。




