第47話 狙われたハル
クロハとテルハが、ビャクトリースや巨大タウロスと対峙する前、まだ大群のモンスターと戦っている頃。
ハルとイリンもモンスターの大群と戦っていた。
「我が身に潜む運命られし能よ。我が呼び声に応え、その能を解放せよ! 炎!」
「神聖魔法・エリアバインド!」
ハルが魔法でモンスター達を拘束し、そのモンスター達をイリンが技能で一掃する。
そのやり方を始めてからすでに数時間が経過していた。
「はぁはぁ……くっ……!?」
「ハイル!? 我が身に潜む運命られし能よ。我が呼び声に応え、その能を解放せよ! 治癒!」
「はぁはぁ……ふぅ〜……。イリン、ありがとう」
「いえ。こちらこそごめんなさい……魔法を使わせないって言っておきながら、結局頼ってしまって……」
「気にするな。俺は最初から使うつもりだったし、この状況なら、使わざるを得ないだろ」
「は、はい……」
そう。当初、ハルは剣のみで戦うはずだった。
魔法を使ってしまうと、頭が痛み、最悪の場合気を失ってしまうから。
そして、払う代償の正体が分からないから。
だから、魔法を使わずに戦うはずだったのだが、モンスターの数が多すぎた為、剣だけじゃ到底敵わず、致し方なく魔法を駆使する事にした。
イリンもハルに魔法を使ってもらわないと勝てないと察しており、何も言えなかった。
しかし、ハルが魔法を使って頭が痛みだしたら、すぐさま治癒の技能を使ってフォローをする。
それを徹底していた。
なので、ハルは数時間魔法を使っても、倒れたりする事はなかった。
まぁ、代償の方はフォローしきれていないだろうが……。
「モンスターの数は間違いなく減ってる。このまま続ければ、必ず終わる」
「はい! できるだけフォローしますので、辛くなったら無理はしないでくださいね!」
「うん。分かった。じゃあ、行くぞ!」
「はい!」
二人は魔法と技能を駆使し、モンスターの大群を倒しきった。
「はぁはぁ……」
「だ、大丈夫ですか、ハイル……」
「あ、あぁ……なんとか……。イリンのおかげで頭が痛まないからだいぶ楽だよ……」
「そ、それならいいんですが……念のため、もっと治癒をかけておきますね」
「ありがとう。でも、そんな使ったらイリンの能量がなくなっちゃうんじゃ……」
「大丈夫です! 私、人より能量多いんですから! あれ? 忘れちゃいました?」
「え? ………………あ、あぁ、そう言えばそうだったっけ」
「はい。なので、ハイルは何も気にせず治療を受けてください」
「うん。……………………」
ハルは岩壁に背を預けながら、イリンから治癒を受け続ける。
そんなイリンの姿を見て、ハルは──、
(どうしてこの子は、ここまで俺に対して熱心なんだ……?)
と、思っていた。
この二人が休んでいる間に、クロハとテルハの前に巨大なタウロスが現れていた。
☆ ♡ ☆
「相変わらず、ダンジョンって広いですね……」
「そうだね。だからこそ、ダンジョンはなんの対策もなしに入っちゃいけない」
「はい。昔、教えてくれましたね」
「そう……だったっけ?」
「そうですよ。リアン、ミュリン、私の三人でダンジョンに潜っていた時、ハイルが教えてくれたんです。新人が、なんの対策もなしにダンジョンに潜っちゃ駄目だって」
「そう、だったか……」
「ハイル?」
「ん?」
「どうしました? 何かありましたか?」
「いや、なんでもない。大丈夫」
「そうですか……?」
「うん」
(おかしい……イリンが言う事、全く思い出せない)
二人は、上の階層へと上る階段を探していた。
しかし、ダンジョンは広いため、中々見つからなかい。
そして、そんな二人の元に──、
「ここにいたのか」
「「っ!?」」
黒いベビードールを着た女性が現れた。
「い、一体どこから……!?」
「全く気配を感じなかった……!」
二人の背後に突如現れた女性。
二人は警戒体勢を瞬時に取り、いつでも戦える状態になった。
「お前は一体何者だ!」
ハルが尋ねる。
「私は綰鏡神・スザリーク。ハル、お前をいただきにきた」
黒いベビードールの女性──綰鏡神・スザリークがそう言い放った。




