第27話 イリンの覚悟
クロハに、昼間何があったのかを告げた三人。
その報告を受けてクロハは、大激怒していた。
「最っ低……!!! 人間とは思えない……!!!」
「わ、わふ……?」
頭上で憤るクロハを察したのか、眠っていたミルルはゆっくりと目を開き、起き上がった。
「く、クロハさん……? だ、大丈夫わふか……?」
「ごめんね、起こしちゃって……」
「それは、大丈夫ワンけど……何があったワン……?」
「皆さんが家を出てきた理由を聞いて、怒りが抑えられないんだ……!」
「わふ……」
クロハが怒っている顔が、犬人族として本能的に危険と感じたようで、ミルルは触れないようにしようと口を閉じた。
(今は、これ以上心を抉る報告はしない方がいい、ですね……)
そんなクロハを見てイリンは、一人で何か言おうとしていたものを呑み込んでいた。
その日は、クロハが嫌なことは寝て忘れようと提案をし、全員就寝する事となった。
クロハはよほど腹を立てていたらしく、眠りに就くのが一番遅かった。
☆ ♡ ☆
翌日。
「あ、クロハさん。おはようございます」
「お、おはようございます……」
「どうされたんですか?」
「いや……昨日はリアンさん達の方が辛いのに、私がイライラし過ぎて逆に気を使わせてしまって、申し訳なかったなと……」
「そんな。むしろ嬉しかったですよ」
「え……?」
「私達の為にあんなに怒ってくれるなんて、私達の事、大事に思ってくれているんだなって言う、クロハさんの優しさが伝わってきて、とても嬉しかったです」
「リアンさん……」
「それに、こんなに無防備に眠るミュリン、久しぶりに見ましたから」
クロハが目を覚ますと、キッチンにリアンが立っており、料理を作っていた。
そして、リビングの床には布団からはみ出しお腹を出して無防備に眠るミュリンと、そんなミュリンに場所を占領されて、端で窮屈そうに眠るイリンの姿が。
ミルルはベッドで気持ちよさそうに、寝息を立て穏やかに眠っている。
リアンが言う、無防備で眠るミュリン。
それは、ハイルがいた頃であってもガイルが仲間に加わってからは、あの活動拠点にしていた家で一度も気を抜いて眠った事がミュリンはなかったからだ。
ミュリンだけでない。リアンもイリンも、ガイルが仲間になってからは一度も気を抜いた事がない。
いつ何時襲われるか分からないからだ。
「次の活動拠点が見つかるまで、この家で良ければいつでもいてくださいね」
「い、いいんですか……?」
「もちろんです♪ 助け合いは当たり前ですし、それに……私、皆さんとお話するの大好きなのでっ♪」
「クロハさん……ありがとうございます……! この家にお邪魔させていただいている間、私達にできる事はなんでもしますから、なんでも言ってくださいね!」
「はい♪」
リアンは料理に戻り、クロハは朝風呂へと向かった。
この後、イリン、ミュリン、ミルルの順で起床し、朝ご飯を食べ、ギルドへと向かった。
☆ ♡ ☆
「あ、皆さん!」
「イシュちゃん、どうしたの?」
ギルドへやって来たクロハ、ミルル、リアン、イリン、ミュリンの五人。
そんな五人を見つけたイシュは、慌てて五人に駆け寄って来る。
「今、ガイルさんがいらしてて、リアンさん達がどこにいるのかを執拗に尋ねて来るんです……知らないと言っても、ふざけるなの一点張りで……」
「なるほど……ご迷惑をかけてごめんなさい」
「リアンさん……い、いえ、それは全然大丈夫なのですが……一体何があったんですか……?」
リアンがイシュに説明をしようとした時──、
「テメェら!」
『っ!?』
受付の方にいたガイルが、入口付近に立っているリアン達に気が付き、怒号を上げながらゆっくりと近づいてきた。
「おい、テメェら、どういうつもりだ! あぁ!!! 勝手にいなくなりやがってよぉ!!!」
ガイルがリアンの胸ぐらを掴む。
「従うとは言いましたが、家を出ないとは言っていません」
「屁理屈こねてんじゃねぇ!!! テメェらは俺に逆らえねぇんだ! って事はあの家から出る事も許されねぇんだよ!!!」
「それはあなたが、多種多様の集まりのリーダーだから、ですよね?」
「あぁ? ったり前だろ!」
「でしたら、私達があなたに従う義理はありません」
「あぁ? テメェ何言ってんだ!!! テメェらはどう頑張っても、リーダーである俺には──」
ガイルの言葉を遮り──、
「私達は、本日付で多種多様の集まりを抜けさせていただくので」
「………………は?」
リアンが覚悟を宿した瞳でガイルを睨み上げ、そう告げた。
その言葉に、ガイルだけでなく、その場にいた他の冒険者や受付嬢達も驚いている。
「ぱ、パーティーを抜ける……?」
「はい」
「そ、そんな勝手が許されると思ってんのか……!?」
「えぇ。思っています。と言うか、許されますから」
「あ……?」
「知らないんですか? パーティーの加入はリーダーが決めた者のみしか許されませんが、脱退については、本人の意思が尊重されると」
「なっ……!?」
「その様子……知らなかったようですね。そんな事も知らないでリーダーを語るなんて、ふざけないでください。ハイルはしっかりと把握してましたよ。だから、 “二人の脱退” も受け入れたんです」
「くっ……!」
「なので、私達三人は今日を持って、多種多様の集まりを脱退させていただきます!」
「こんの……!」
ガイルが胸ぐらを掴む手に力を込める。
周りが焦るが──、
「この手を離してくれませんか? 私達のリーダーでもなんでもない他人に、こんな事をされる筋合いはないのですけれど。服が伸びるのでさっさと離してください。それとも、暴行罪で警護院に突き出しましょうか?」
「くっ……!」
ガイルが辺りを見回す。
と、周りにいる冒険者達が、ガイルの事を蔑むような目で見ていた。
その視線に耐えられなかったガイルは、リアンから手を離す。
しかし、ガイルの怒りは収まってはおらず──、
「テメェ……調子に乗んのもいい加減にしろよ……! 俺は英雄だぞ……? 最強なんだぞ……? それに、俺はハイルに襲われた被害者だぞ!!! そんな俺にお前らはこんな仕打ちをするのか!!! ふざけんなよ……! ふざけんなよ!!!」
「いい加減にするのはあなたの方です!!!」
ガイルの言葉に被せるように、イリンが大声を上げる。
「あ……? んだよ、イリン……! テメェ、また俺に逆らうってのかよ!!!」
「えぇ。逆らいます。いつまでも、被害者ぶってるあなたに従う理由などありませんから!!!」
「っ!?」
『!?』
イリンのその言葉に、ガイルは慌てたような表情を浮かべ、それ以外の者達はどういう事なのか理解ができないと言った表情を浮かべた。
そんな中、イリンは言葉を続ける。
「ガイルさん……いえ、ガイル! あなたがした事。その真実を、今ここで! 全て話させていただきます!」
確固たる覚悟をその目に宿し、イリンはこれまで秘密にしていた事の全てを話し始めた。
☆ ♡ ☆
「い、イリン……お、お前何言ってんだ……? 俺が被害者ぶってる……? 真実……? い、一体なんの話をしてるんだ……?」
「ガイル、あなたはダンジョンでハイルに襲われ、殺されかけたと言いましたね?」
「あ、あぁそうだ! 俺はあの日、突然ハイルから呼び出されて、殺されかけたんだ! 俺の活躍が妬ましいからってな!」
ガイルのその言葉を聞き、周りにいた冒険者や受付嬢達がざわめき出す。
行方不明になったとは聞いていたが、ハイルがガイルを襲っていたと言うのは知らなかった。初耳だった。
しかし、それを聞いた冒険者達は──、
「あのハイルさんがそんな事するか?」
「例え自分より活躍していたとしても、ハイルさんならその活躍を喜びそうな気がするけど……?」
「ハイルさんが人を襲うなんて、そんな事ありえないだろ」
「誰よりも仲間を大切にするハイルさんが?」
「ありえないだろ」「ありえない」「そんな訳ない」
など、ハイルを責める言葉は一切出ず、むしろありえないと断言するような言葉しか出てこなかった。
そして、そんな事を言うガイルの発言が疑われ始めた。
「今、皆さんがおっしゃったように、ハイルは誰よりも仲間を思い、過保護なくらいに大切にし、何か成長をすれば自分の事のように喜んでくれる。そんな人です。そんな彼が、仲間であるガイルを襲うなんてありえない」
「じゃ、じゃあ俺のあの傷はどう説明するんだ! S級モンスターに襲われる前に、俺はハイルに怪我をさせられたんだぞ!」
「それは初耳ね」「だな」
「あっ!?」
「墓穴を掘りましたね。あなたはあの日、ハイルに殺されないように逃げ回ったと言った。そこでS級モンスターに出会い、戦った。そのモンスターとの戦いで怪我を負った。ハイルから攻撃を受け怪我をしたとは一度も、一言も言わなかった!」
「うっ……だ、だったらあの時の俺の怪我はどう説明するんだ! 俺は重傷を負ってたんだぞ!」
「えぇ。それこそ、私が最初にあなたに疑問を抱いた点なんです」
「え……?」
イリンがガイルの前に立つ。
「あの日、私はあなたの怪我を治しました。ですが、あなたが負っていた怪我、見た目の割に全然苦労しなかったんです」
「は、はぁ……?」
「本来、あれほどの重傷を負っていれば治癒するのに一時間程度かかるんです。ですが、あなたの傷は一瞬で完治した。しかも、私の能量を一切消費させずに」
「そ、それは……! お前の力が強いからだろ!」
「いいえ。どんなに治癒に長けた技能使いであっても、あれほどの重傷を治すにはそれなりに能量を消費するんです。でも、あの時はそれがなかった」
イリンの言葉を聞き、ミュリンが背後から言葉を足す。
「そういや、お前、自分の見た目を変化させる力持ってたよな? 部分的な変化も確かできたはずだ。その力を使えば、自分の傷を偽装する事なんて簡単なんじゃねぇのか?」
「なっ……!?」
そう。ガイルには特殊な力があった。
この世界に生まれし者に平等に与えられる【技能】と呼ばれる力。
それは、様々な種類の力があり、【技能】と呼ばれるようになり数百年が経った今でも全ての種類を把握できていない。
しかし、時折、そんな【技能】とは違う別の力を保持する者がいる。
それがガイルだ。
ガイルは【宇宙の技能】と呼ばれる力を持っており、重力を自在に操れる。
ミュリンを床に押し付けたのはこの力だ。
そして、その力とは別の力。
それは『自身の肉体を望んだ通りの物に変化させる』と言うもの。
その力は未だ謎な部分が多いが、動物になったり、身を隠す際に壁や草木に同化したり。様々な使い方がある。
なので、その力を使えば自身の体に怪我を負った “風” な施しもできたりする。
完璧な偽装ではあるが、まさか治癒をする者にそれを見抜かれるとは思っていなかったのだろう。
今回の件は、ガイルにとって大きな誤算だった。
さらに、それだけではなく──、
「すぅ〜……ふぅ〜……もう私は、あなたを恐れません」
「あ……?」
そう宣言したイリンは、力強くガイルを睨みつけ言う。
「あなたは、ハイルをパーティーから追放する為にダンジョンに呼び出し、っ……ハイルを……ハイルを……ハイルを刺し殺した!!!」
『っ!?』
イリンのその発言に、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。
☆ ♡ ☆
「ハイルを刺し殺した!!!」
『っ!?』
イリンの発言に、その場にいた全員が目を見開き驚愕した。
「い、イリン!? それ、本当か!?」
「イリン、じょ、冗談ですよね……!?」
後ろにいたミュリン、リアンが明らかに動揺し出す。
さらに、クロハも──、
「は、ハイルさんがこ、殺された……? し、しかも同じパーティーメンバーに……?」
信じられないと言った表情を浮かべ、動揺していた。
ミルルはそんなクロハの手を優しく握りしめる。
「い、イリン! な、何を言ってるんだ! お、俺を陥れたいからとは言え、そ、そんな冗談──」
「冗談なんかじゃありません!!!」
「っ!?」
「私、聞いたんです」
「な、何を……」
「あなたが、謎の人と話をしているのを」
「なっ!?」
イリンの言う謎の人。
それはデルビーズの事。
ガイルが傷だらけで帰ってきた日、ガイルの部屋にやって来たフードを被った男だ。
イリンはドアの外でたまたま、二人の会話を聞いてしまっていた。
「そこであなたは、ハイルが自分を殺そうとしたなんて嘘。本当は自分がハイルを刺し殺したと言った。さらに!」
まだあるのかと、その場にいる者達は固唾をのむ。
「S級モンスターが出現したと言うのも、ハイルを陥れるための嘘だった!」
『っ!?』
S級モンスター出現の報告が嘘。
それが本当であれば、ギルドを、国を無駄に動かした事になる。
それは、下手をすれば極刑になりかねない重罪。
「ガイルさん、それは本当ですか?」
「っ……」
イシュが、これまで見たこともないような真剣な表情で、これまで聞いたこともないような低い声でガイルに尋ねる。
「そ、それは……」
「ガイルさん、しっかりと答えてください」
「お、お前……!?」
イシュの隣に並び立ち、声を発したのはデルズだった。
「で、デルズ……! なんでテメェがここに……!」
「家を尋ねたら誰もおらず、鍵が落ちていたので何かあったのだろうと思い、ここに来たんです。さぁ、私は答えました。ガイルさん、次はあなたが答えてください」
「デルズ……テメェ……!」
「ガイルさん! お答えなさい!!!」
「っ……!?」
イシュがガイルに向かって怒鳴る。
その怒鳴りを受けて、ガイルは一歩後ずさる。
その後退りを見て、周りの冒険者達も怒号を上げ始める。
「何やってんだよ!」「さっさと答えろよ!」
「お前がハイルさんを殺したんじゃねぇのか!」
「信じられない!」「ハイルさんに何したの!」
冒険者達の怒号を受け、ガイルは歯を食いしばる。
「………よ」
『?』
「そうだよ……イリンの言う通りだよ! ハイルに襲われたのもS級モンスターも真っ赤な嘘! S級モンスターなんぞ出てないし、俺がハイルを殺した! あいつが邪魔だったからな!!!」
ガイルはついに自供をした。
ハイルを殺した事、S級モンスターの出現が嘘だった事。
その全てを自供した。
真実を告げろと言ったものの、本当だとは信じたくなかった皆。
その自供に、その場の全員が顔を伏せた。
「そうですか。では、捕らえなさい!」
『はっ!』
デルズがそう言うと、どこからともなく騎士服を着た者達が現れ、ガイルを取り囲む。
「なっ!? 騎士団、だと!? デルズ、テメェ! 裏切りやがったな!?」
「裏切る? あなたは何をおっしゃっているのですか? 私は王に仕える者。罪を犯した不届き者を捕らえるのが仕事です」
「テメェ……!」
騎士に囲まれ、ガイルは右往左往し始める。
右を見ても、左を見ても、前を見ても後ろを見ても騎士団がいる。
取り囲まれ、逃げ場はない。
「こんな所で……こんな所で終わってたまるかよっ!!!」
『っ!?』
ガイルがそう叫んだ瞬間、その場の全員が床に押し付けられる。
「俺の宇宙の技能は最強だ! テメェらでは突破できねぇよ!」
ガイルは窓を粉砕し、縁に足をかけながらギルド内の者達に吐き捨てる。
そして──、
「テメェらは必ず、ぶっ殺してやる!!!」
そう吐き捨て、窓から外に出て走り去って行ってしまった。
ガイルがいなくなったことで重力が解除され、全員、身動きが取れるようになった。
「逃がしはしません。騎士団は四班に分かれ、徹底的に捜索しなさい。確実に捕らえ、罪を償わせるのです!」
『はっ!』
デルズがすぐさま指揮を取り、騎士団達をガイルの捜索に向かわせた。
一人残ったデルズに、イリンがゆっくり近づいてくる。
「デルズさん」
「ん? どうされましたか? イリンさん」
「私を、捕らえてください」
「え……?」
「い、イリン!?」「お前、何言って!?」
「い、イリンちゃん!?」「イリンさん!?」
突然のイリンの申し出に、デルズだけでなく、リアン、ミュリン、クロハ、イシュ達が驚きの声を上げる。
「私は、ガイルが嘘をついていると知っていながら黙っていました。これは、共犯罪になります。私が黙っていたらから、国やギルドを動かし、混乱させてしまった。これは重罪です。だから、私の事も捕らえてください」
イリンは元気なく、デルズにそう頼み込む。
その場にいた全員、どうにか逮捕されずに済まないか。情状酌量の余地はないのか。それを考えていた。
しかし、相手は王に仕える者。
そんな事はないだろう。罪人は捕らえる。それが王直属の秘書官と言うもの。
なので、皆は唇を噛み締めながら諦めていた。
そんな中、デルズが口を開く。
「そう言えば、ガイルさんはイリンさん達に対して脅迫まがいな事をしていると耳にしました。自分の立場を利用した強要、脅迫、催促。そんな環境下にいれば、逆らえないと感じ、何かを知っていても報告なんてできませんよね」
「え……」
「イリンさん。私はほんの少しでしかないですが、ガイルさんのあなた達に対する酷い対応や扱いを見てきました。だから、罪を抱えるのは一人だけでいい。あなたまで、罪を背負う必要はありません。イリンさんはこれまで通り、仲間の皆さんと一緒にハイルさんの捜索をお願いします」
デルズはイリンの頭を撫でながら、優しくそう告げる。
「はい……! はい……! ありがとうございます……! ありがとうございます……!」
「「イリン!」」
デルズのその言葉を受け、イリンは泣きじゃくりながらお礼を告げる。
そんなイリンに、リアンとミュリンが駆け寄り、左右から抱きしめる。
「イシュさん」
「はい?」
「多種多様の集まりの活動権限を、全てイリンさん、またはリアンさんかミュリンさんに譲渡していただけませんか?」
「そ、それは構いませんが……でもどうして……?」
「国や政治とは面倒くさいもので、犯罪者のガイルにパーティーの権限があると、そのパーティーは活動ができなくなったり、最悪の場合、パーティーメンバー全員が逮捕されてしまう恐れがあるんです」
「な、なるほど……! 分かりました。早急に権限を移します!」
「お願いします。皆様、これより、ガイルは重罪を犯した犯罪者、そして極悪指名手配犯となりました! ガイルの姿を目撃、または何か情報を掴みましたら、すぐさまご報告をお願いします! 情報をくれた方には情報内容は問わず、一万円を贈呈致します!」
デルズのその言葉に、冒険者達が沸き立つ。
「おいおいマジかよ!」「情報内容は関係なしに一万!」
「最高過ぎじゃん!」「ぜってぇ見つけ出してやる!」
この国の冒険者達に、ずる賢かったり卑怯な奴はおらず、虚偽の報告を行おうと考える者は一人もいなかった。
「それでは、私は一度王城に戻ります」
「はい。手続きなどは任せてください」
「はい。あ、そうだ。リアンさん」
「はい?」
イシュと会話を終えたデルズは、扉に向かったが何かを思い出したようで、踵を返しリアンの方にやって来た。
「これ」
「これ……家の鍵……」
「あの家は、ハイルさんが頑張って買った物。ガイルの物ではありません。ハイルさんがいつ帰ってきてもいいように、あの家を守ってあげてください」
「はい……! ありがとうございます……!」
「家には常時、護衛の騎士団を配備します。なので、安心して毎日を過ごしてください」
そう言って、デルズは扉に向かった。
「「「ありがとうございます……!」」」
そんなデルズの背中に、リアン、イリン、ミュリンの三人は大きな声でお礼を告げ、頭を下げた。
それがしっかりと届いたかは分からないが、デルズは王城へと向かった。
「イシュちゃん……手続きの事だけど……」
「それに関しては何も気にしないでください! 私が全て完璧にやらせていただきます! なので、皆さんは何も気にせず、お家でゆっくりしてください!」
「イシュちゃん……ありがとう……!」
「私はいつでも、このギルドでお待ちしていますからね♪」
「うん。また来るね」
「はい♪」
イシュは色々な手続きを行う為、受付の方へと戻っていった。
冒険者達も、それぞれ散らばっていった。
こういう時は余計な事は言わず、そっとしておくのが一番だと分かっているからだ。
「クロハさん」
「はい?」
「今日は……ウチでお泊り会をしませんか?」
「い、いいの……?」
「はい♪ 片付けをしなければならないとは思うのですが……クロハさんさえよければ……」
「ミルルちゃん、いい?」
「クロハさんが、大丈夫なら」
「うん。じゃあ、お邪魔させてもらおうかな♪ あ、もちろん、お片付けも手伝いますからね♪」
「い、いえそれは……!」
「いいんです! ね? ミルルちゃん♪」
「わふ〜♪ ミルル、お片付け大好きわふ〜♪」
「では、お言葉に甘えちゃいましょうか。ね、二人共」
「うん……!」「あぁ……!」
イリンとミュリンは、涙を浮かべながら頷いた。
リアンの目にも涙が浮かんでいたが、クロハもミルルも、それに触れたりはしなかった。
この後、五人は多種多様の集まりの活動拠点の家へと向かった。
いかがだったでしょうか……?
毎回と言っていいほど文字数が多くなってしまうのですが、今回はいつもより多くなってしまいました……。
大変申し訳ございません……!
読みづらく感じてしまうかもしれないのですが、少しでも楽しんでいただけておりましたら幸いです……!
イリンが真実を打ち明け、これまで被害者ぶって往々に過ごしてきたガイルが、今度は指名手配犯となりました。
これからどう物語が進んでいくのか、ガイルはどうなって、リアン達やクロハ達はどうなっていくのか。
未だ目覚めないハルはいつ目覚めるのか。
そして、まだ登場していない三人目のヒロインはいつ登場するのか。
ここから加速していく【エスパ】の物語を、これからも沢山楽しんでいっていただけますと嬉しいです……!
連続投稿なので、すぐに続きをお読みいただけます♪




